■21世紀のジャズを牽引
カサンドラは1980年代初期にジャスミンというジャズ・バンドで初録音を果たし、80年代の半ばには前述したステーヴ・コールマンらと行動をともにし、そして93年にジャズの名門レーベル、ブルーノートに移籍してからは、より幅広いファン層の支持を集めるようになり、来日のたびに高い評価を得ています。
アメリカでの評価もたいへん高く、世紀の変わり目2001年には、アメリカの『タイム』誌で「アメリカズ・ベスト・シンガー」に選ばれ、「偉大なジャズ・ヴォーカリストの伝統を引き継いでいる」と最大級の賛辞を受けました。これは彼女が21世紀のジャズ・ヴォーカリストを代表する存在であることを明示しているでしょう。
また、08年のアルバム『ラヴァリー~恋人のように』はグラミー賞最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞しており、現代ジャズ・ヴォーカリストの第一人者としてのステータスはゆるぎないものとなっているのです。
文/後藤雅洋(ごとう・まさひろ)
日本におけるジャズ評論の第一人者。1947年東京生まれ。慶應義塾大学在学中に東京・四谷にジャズ喫茶『い~ぐる』を開店。店主としてジャズの楽しみ方を広める一方、ジャズ評論家として講演や執筆と幅広く活躍。ジャズ・マニアのみならず多くの音楽ファンから圧倒的な支持を得ている。著者に『一生モノのジャズ名盤500』、『厳選500ジャズ喫茶の名盤』(ともに小学館)『ジャズ完全入門』(宝島社)ほか多数。
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