取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆
早朝のラジオ番組を担って20年。この間、一日も休まなかったその秘訣は、夫人が作る栄養バランスに配慮したブランチだ。
【生島ヒロシさんの定番・朝めし自慢】
午前5時、ラジオ(TBS系列)から軽快な声が聞こえる。『生島ヒロシのおはよう定食・一直線』である。その時々のニュースやスポーツはもちろん、「健康広場」や「おはよう体操」など、シニアライフを充実させる内容が特徴だ。
「僕が48歳の時に始まり、今年で21年目。当初からリスナーは僕と同年代を設定し、それぞれに年齢を重ねてきた。今は健康が主なテーマのひとつになっています」
それまではテレビで活躍していたが、テレビよりラジオのほうが自然体の自分が出せる。声だけで表情まで伝えられるのも面白い。
昭和25年、宮城県気仙沼市に生まれた。高校卒業後、法政大学に入学するが、学生紛争で挫折し、渡米を決意。高校時代から続けていた空手が縁だった。その空手とアルバイトで食いつなぎながら、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校ジャーナリズム科を卒業。4年間のアメリカ武者修行で、人前で話すのが苦手だった赤面症の青年は、いつしかアナウンサーを目指すようになっていた。
帰国後、TBSに入社。冠番組を持つ人気者になるが、平成元年に独立。「生島企画室」を設立し、以来、経営者という顔も併せ持つ。
食事の30分前に冷水を飲む
午前4時前に起床。すぐ白湯を飲んでラジオ局に入り、6時30分に生放送が終了すると帰宅。仮眠をとり、1食目は午前11時頃だ。
食事には幾つかの決まりがある。
「食事の30分前にはコップ2杯の水を飲む。ゆっくりとよく噛んで、野菜やスープから始めてご飯やパンなどの炭水化物は最後に。就寝3時間前からは何も食べない、などです」
いずれも先の「健康広場」で専門医から学んだことである。
ブランチを作るのは、料理上手な優子夫人。優子さんは実母の介護体験から一念発起し、上智大学の介護福祉士科夜間部で3年学んだ経験がある。
「栄養学から実践まで幅広く勉強しました。それらを生かしつつ添加物のない食材で品目を多く、目にも楽しくを心がけています」
たとえば、鉄分不足を補うために湯は鉄瓶で沸かし、粥は鉄玉を入れて炊くのが生島流。また、砂糖の代わりに「ラカンカ糖」を使用。これは天然甘味成分が原料で、砂糖と同じ甘さでカロリーはゼロだ。それもこれも、すべては夫の健康を願ってのことである。
50歳を過ぎてから、防災士など数々の資格を取得
生島さんの仕事はアナウンサーから派生して、司会、講演、本の執筆と幅広い。講演のテーマは“心と体と財布の健康”と多岐にわたる。というのも、50歳を過ぎてからファイナンシャルプランナー、ヘルスケアアドバイザー、福祉住環境コーディネーター、防災士などの資格を取得したからだ。
「資格を取るきっかけは、帯津良一先生(帯津三敬病院名誉院長)の“60代、70代、80代それぞれに面白さがある。何歳になってもチャレンジし続けること”という言葉でした。帯津先生は僕より15ほども年上だけど、僕のお手本です」
防災士の資格は平成16年、新潟県中越地震で浦佐駅と越後湯沢駅間で6時間も新幹線の中に閉じ込められた経験から取得したという。
資格を得るための勉強は、基礎から学べるのがいい。基礎を理解していると、経済の話ひとつとっても、身近な話題としてリスナーに分かりやすく伝えることができる。そうしているうちに資格が増え、番組に今までとは異なった切り口を生み出せたという。
70代を目前に、また新たなチャレンジが始まっている。
取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆
※この記事は『サライ』本誌2019年6月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。