65歳を機に、炭水化物を摂るのは昼食のみと決断。朝はヨーグルトとコーヒーに、胃腸を目覚めさせる果物の3点セットだ。
【山下幸雄さんの定番・朝めし自慢】
マンガを読む習慣のなかった小学生時代。そんな少年が中学生になって、突然マンガを描き始める。
「クラスメートが小説を書いたのを見て、マンガで対抗しようと思ったのが最初です。ちなみに、その頃から今に至るまで、新しい表現方法という意味で、カタカナ表記の“マンガ”を使っています」
本格的に描くようになったのは、手塚治虫の『マンガのかきかた』を読んでからだ。初めてマンガを投稿したのは、「鉄腕アトムクラブ」という虫プロのファンクラブ機関誌。それが選外佳作で掲載され、マンガ熱に拍車がかかる。マンガ好きな友達もでき、『つれづれ草』なる同人誌も発行する。
初めて出版社にマンガを持ち込んだのは、高校2年の時。そのままプロになることを信じて疑わず、アシスタントを経て、イタイイタイ病を取り上げた『悪魔の水』でデビュー。20歳だった。以降もストーリーマンガ家として『いのちの契約書』などを発表。
「その後、『負けずの大五』の連載が始まったのとほぼ同時に、手塚(治虫)さんの『ブラック・ジャック』も始まった。同じ雑誌に2本の医療マンガが載っている。しかも、相手はあの手塚さんです」
ブラック・ジャックに負け、自由なマンガ空間を求めて、自分で雑誌を作ることを思い立つ。それが『ふしぎな仲間たち』だ。だが、資金がもたず2年ほどで休刊。その後、デサイナーに転進。さらに編集プロダクションを設立し、もうマンガを描くことはなかった。
胃腸を目覚めさせる朝の果物
60歳目前で再びマンガを描き始め、65歳で食生活を見直した。
「人間ドックの数値が良くなかったから。もう少し頑張りたいと、3食とも自分で作るようになった。諸悪の根源は肥満だから、朝と夜は炭水化物をご法度。従って、朝はヨーグルトとコーヒー、それに季節の果物を欠かしません。コーヒーはミルクを半分入れたカフェオレで、400cc飲みます」
“朝の果物は金”といわれる。胃腸や体を目覚めさせ、脳のエネルギー源となるブドウ糖を始め、果糖も多く含まれているからだ。
夜は主菜にスープ、生野菜の献立。現在身長167cm、体重85kg。70kg台に落とすのが目標だ。
30年の空白を経て、再びマンガと向き合い始めた
若き日に発刊した『つれづれ草』から40年の時を経て、再出発したのがシニアのためのマンガ同人誌『新つれづれ草』である。
「まさか再びマンガを描くとは思いませんでしたが、今はコミックスタジオというソフトを使えば、パソコンで描けることがわかった。人生の終わりが見えてきた時に、もう一度描いてもいいかなと」
それに賛同してくれた人が集まっているのが、『新つれづれ草』。発表する場があることが、上達にもつながる。シニア世代の会員10名ほどが鎬(しのぎ)を削っているという。
「“やましたゆきお”の名で、これが最後と思って描き、編集作業をしています。年齢や体力と折り合いをつけながら、続けられたらいいですね」
力尽きるまでマンガと向き合えれば、それで本望だという。
『新つれづれ草』既刊号は下記のメールアドレス(※)で購入できる。
※ sinturezure@gmail.com
※この記事は『サライ』本誌2023年9月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆 )