日本と中国の文化交流に携わって半世紀。腕回し体操の後、お腹を空かして食す2種のホットサンドの朝食が、元気の源だ。

【中野暁(なかの・さとし)さんの定番・朝めし自慢】

前列中央から時計回りに、卵とハムのホットサンド(食パン・ゆで卵・マヨネーズ・ハム・チーズ)、ジャムとチーズのホットサンド(デニッシュタイプの食パン・林檎ジャム・ベビーチーズ)、スープ(豆乳・有り合わせ野菜のジュース・粉ミルク)、野菜サラダ(胡瓜・セロリ・キャベツ・人参・トマト・イタリアンパセリ)、ヨーグルト(バナナ・シャインマスカット・カシス原液(ジャフマック/東京都新宿区市谷砂土原町1-2-29 電話:03-3235-5121)、大阿蘇万能茶、青汁。野菜サラダにはらっきょう酢と太白ごま油で作るドレッシングをかける。大阿蘇万能茶は大麦や唐黍、ドクダミなど16種の配合茶。
有り合わせ野菜のジュースは、白菜やキャベツ、小松菜などの残り野菜をミキサーにかけ、冷凍保存しておく。これを1人前ずつに割り、豆乳とともに温め、粉ミルクで味をつける。
サラダ用の野菜は胡瓜とセロリ、キャベツと人参をそれぞれ食べやすい大きさに切り、塩と塩麹で味つけして冷蔵保存。これで夫人が不在の時も、定番の野菜サラダが食せる。
毎朝、ホットサンドは自らが焼く。「孫たちとのキャンプのために購入したホットサンドメーカーが、朝食でも活躍。簡単にプレスサンドが作れます」と中野さん。
日の出とともに起床。40分ほどの腕回し体操の後、朝食は7時頃。「お腹をすかして食べる食事が一番美味しい」と中野暁さん。千穂夫人は共立女子大学や千葉商科大学などで中国語の非常勤講師を務めている。

ヨットで遣唐使の航跡を辿りたい──この思いがすべての始まりであった。日中国交正常化が実現した1972年のこと。当人、中野暁(さとし)さんが語る。

「私は千葉大学で美術教育を専攻しながらヨット部に所属し、卒業後、ヨットスクールの講師をしている時に立てた計画です。中国の領海に入る許可を得るために相談に伺ったのが、日本中国文化交流協会でした」

関東学生ヨット選手権大会で優勝し、ヨットに夢中に。大学卒業後の1971年、ヨットスクールで講師をしていた頃。神奈川県江の島沖で、船体の傾きを体重移動で正す中野さん(上)。

両国間に国交が回復したとはいえ、まだ個人がヨットで航海できるような状況ではないと、この冒険計画は断念。が、中国への思い断ち難く、翌年から同協会で働くことになるのである。

日本中国文化交流協会は1956年、仏文学者の中島健蔵や作家の井上靖、作曲家の團伊玖磨、演出家の千田是也ら錚々たる文化人が中心となり、両国間の友好と文化交流を促進するために創立された民間団体である。

「創立当初は80人だった会員は、国交正常化が実現した年には3000人に達し、協会の活動は活況を呈した。そんな中、’73年に国交正常化の慶祝行事として挙行された大相撲中国場所に同行したのが、私の初訪中となりました」

1973年4月、初の大相撲中国場所は日本相撲協会と日本中国文化交流協会が実施。北京空港に降り立つ力士たち。右上から武蔵川理事長、中野さん、横綱・琴桜、その左隣が大関・輪島。中野さんにとって初訪中であった。

以来半世紀、事務局長や常務理事を経て現職。文学や演劇、美術、書道、音楽、舞踊など第一線で活躍する文化人を団長に、中野さんの訪中は250余回に及ぶ。

日本中国文化交流協会現会長の黒井千次さん夫妻(前列中央)と副会長兼理事長の栗原小巻さん(前列右)、後列右からふたり目が中野さん。日本中国文化交流協会 電話:03-3212-1766

1食たりとも疎かにしない

この3年に亘るコロナ禍で、生活は一変した。

「代表団の相互往来はできず、今は自宅と事務局を往復する日々。それでも、規則正しい生活の中で楽しみも増えました」 

そのひとつが食事である。朝食は2種類のホットサンドが定番。ひとつはツナや前夜の残りのカツ、卵やハムといった惣菜風サンド、もうひとつはジャムが中心の甘めのサンドだ。これらを焼くのは中野さんの担当。ヨット部時代に食事当番を経験しているので、料理は苦にならないという。

昼食は外食。事務局のある東京・丸の内界隈には世界各国の料理店があり、その日の気分で選ぶ。夕食は和食が多く、肉か魚のたんぱく質に加えて野菜料理が2品。

「この年齢になれば、1食たりとも疎かにはしたくないですね」 

この思いは、生き方にも通じる。

コロナ禍で時間ができ、自己流でエレクトーンを始めた。得意曲は『アメイジンググレイス』や『愛の讃歌』などで、すべて暗譜している。通勤途中のJR両国駅で“駅ピアノ”を楽しむことも。

腕回し体操で健康を維持し、両国間の友情を次世代につなぐ

中野さんには10年間、毎日欠かさぬ健康法がある。腕回し体操だ。

「私が65歳になった2012年、東洋医学の先生から身体の要である肩と腰を柔らかくすれば免疫力が高まり血流も良くなると、この腕回し体操を教わったのです」

今では朝晩それぞれ2000回ほど回していて1日4000回、所要時間は各40分ほど。1畳分の空間があれば、いつでもどこでもできるのが利点だ。年5〜10回あった中国出張でも欠かしたことはない。お陰で10kgの減量に加えて風邪もひかず、寝違えもなく、鼾(いびき)も治まった。さらに肝臓の数値も安定しているという。

65歳の時から10年続けている腕回し体操。手首が耳の高さを越えるように回すのがコツだ。最初は腕が斜め45度くらいしか上がらず、左右を1回として30回もできなかったが、継続は力なり。3か月で500回できるようになったという。自宅近くの公園で。

’22年は日中国交正常化50周年。

「尖閣問題に続き、コロナ禍で今はオンラインによる交流しか叶わない。再開できたら“気を通い合わせて”の交流を展開し、両国の次世代の人たちの“雰囲気”を良くするのが私の役目です」

中国との文化交流には広い視野に立った相互理解と、遠くを見てゆっくりと構える姿勢が必要だ。常に風を読み、風を待たなければならないヨットマンとしての経験が生かされるに違いない。

※この記事は『サライ』本誌2023年1月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆 )

 

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