夫の大病をきっかけに減塩生活を実践。出汁のきいた料理と野菜たっぷりの食事が、創作人形作家の気力と健康を支える。

【寺園清子さんの定番・朝めし自慢】

プレートの手前中央から時計回りに、トースト1/2枚、ヨーグルト(キウイフルーツ・ブルーベリー・蜂蜜)、果物(オレンジ)、ベビーリーフの上にトマトのピクルス、生ハムとロースハムの上に半熟卵、ウィンナーソーセージ、野菜のピクルスと鶏むね肉の煮物(煮物の出汁は下画像参照)、プレートの左から時計回りに、柚子塩ドレッシング、野菜サラダ(レタス・千切り大根・紫玉葱・赤パプリカ・ブロッコリー・オクラ・胡瓜・ゆで卵)、スムージー(バナナ・豆乳・青汁)。ゆで卵は沸騰してから7分ゆでて半熟に仕上げる。スムージーは夫の晃二さんの担当だ。味に変化をつけるため、出汁のきいた昨晩の残りの煮物が、朝食にも必ず登場する。
出汁は2~3日分の約1Lをまとめて取る。材料は枕崎(鹿児島県)産の本枯節と、友人が送ってくれた日高昆布だ。この出汁で料理をするようになってから、外食の味がすべて濃く感じるという。
本枯節には上品な香りと凝縮された旨味がある
初めての人は削り器とのセットがお薦め。「枕崎産本枯節」2本と「削り器」で7852円(送料無料)。
枕崎市かつお公社/鹿児島県枕崎市立神本町347 電話:0120・343054 オンラインショップ:https://www.katuo-shop.jp
朝7時起床、朝食は7時半~8時頃。「夫が病気をしてから、朝食も野菜中心の献立になりました。昼は和洋を問わず麺類、夕食はご飯に味噌汁という典型的な和食ですが、いずれにも野菜料理は欠かしません」と寺園清子さん。夫の晃二さんと共に朝の食卓に着く。

その人形を観た時の衝撃は今も忘れない。人形一体一体が繊細でありながら、圧倒させられるほどの力強さを放っている──。それが、テレビのある番組で観た高橋節子さんの人形だった。

「結婚して専業主婦となった私は、何か新しいことを始めたいと思っていました。そこで迷うことなく高橋先生が主宰する『ラ・バンボーラ』の門を敲いたのです。1985年のことでした」

と、創作人形作家の寺園清子さんが当時を振り返る。

ラ・バンボーラとは、イタリア語で“人形”の意味。1980年に人形作家、高橋節子さんが生み出した創作粘土の会である。

同会で学ぶこと5年。免状授与式で講師の資格を得たものの、その後も一期生で師と慕う久保田百合子さんに師事。子育てがひと段落した40歳手前で本格的に人形創りを始め、請われて人形教室を開いたのは43歳の時である。

「ラ・バンボーラ」の免状授与式で、主宰の高橋節子さんから講師の資格免状を受け取る。1989年のことで、お腹には次女を宿していた。教室の門を敲いて5年後のことである。

創作人形作家の醍醐味は何か。

「私の作ったお人形を観た人が、感動してくれるのが一番嬉しい。お教室の人形展を開催した時のことです。入院中の夫君を見舞う途中、毎日通う老婦人がいらっしゃいました。『博龍』(下画像)に心の中で“こんにちは”というと“こんにちは”と返してくれるというのです。お人形に“心”を通わせてくださいました」

創作人形「博龍」。上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』をモチーフに寺園さんがイメージしたもので、主人公の博ちゃん(左)とその子分の龍ちゃん。残り一体を作り、「博龍天」で完成。人形の高さ約25cm。
人形の他、創作レリーフにも取り組んでいる。左は25年ほど前に訪れたフランスで出会った、18世紀の画家ブーシュの『春』という絵をモチーフに、独自の感覚で創作した『恋人たち』(20号)。絵に合わせて額も特注した。

寺園家の食事革命

順風満帆だった寺園家に激震が走った。健康優良児だった夫の晃二さんが今年1月、突然、大動脈乖離で倒れたのだ。一命はとりとめたものの、2か月の入院生活。これを機に、減塩生活を敢行。まず、料理はすべて出汁をきかせ、薄味に。これが減塩につながる。

「最初はもの足りないけれど、必ず慣れます。最近では外食の味が濃く感じるようになりました」

と、晃二さん。二番目は、ウィンナーなどの肉加工品は意外に塩分が多い。必ず茹でて塩抜きする。三番目は野菜たっぷりの食事だ。朝食にはふたりで丼いっぱいの野菜サラダを食すが、ドレッシングは直接かけずに別皿に入れ、つけて食べる。これも減塩対策のひとつだという。

以上3点が、病後の寺園家の食事革命である。

野菜を摂るために、定期的に作り置いているトマトのピクルスと野菜のピクルス。野菜は大根、人参、牛蒡、茗荷など残り野菜をピクルス液に漬けておき、そのまま酒肴や煮物にも利用。
サラダ用に常備している黒酢ドレッシングと黒酢ポン酢。左からオニオン、柚子塩のドレッシング、柚子、胡麻 、枕崎の鰹の黒酢ポン酢。
問い合わせ:福山黒酢の「桷志田」電話:0120・028・962

趣味で始めた人形創りが、今ではライフワークとなった

人形教室で生徒を指導する寺園さん(中央)。立川萬里子さん(左)も藤本さよ子さん(右)もこの教室に通って20余年というベテランだ。アトリエK 創作人形教室のメールアドレス:terasan-mama@yahoo.ne.jp(男性も大歓迎)

寺園さんの肩書、“人形作家”の前に“創作”とついているのは、創始者の高橋節子さんが絵を立体化する、独自の粘土人形を“創作”したからである。

「この材料となる粘土は、石を細かく粉状にしたものに接着剤など薬品を混ぜた石粉粘土です。基本は粘土の扱い方で、耳たぶほどの軟らかさにこねたら、伸ばし棒で伸ばして厚さは自由自在。粘土に触っていると無心になれます」

その後、造形・乾燥・研磨・着色・ニス塗りと工程は続き、一体作るのに最低3か月は要する。粘土人形の魅力は単に人形を作るだけでなく、着せる洋服や髪形などスタイリストやヘアメイクのセンスも問われることだ。

藤本さんは創作レリーフが中心。映画『ベニスに死す』のタジオ役、ビョルン・アンドレセンをイメージした『美少年』を制作。粘土の厚みを微妙に調整しながら、洋服の襞を作り、リアリティを出していく。
立川さんはアニメ映画の『三匹の子豚』を制作。骨格を作り、そこに肉付けして本体ができたら、洋服は人形用に開発された水彩絵の具で着色してもいいし、布を貼り付けてもいい。目と口を描いて完成間近だ。

「粘土に組み合わせる素材も多様で、洋服なら透明水彩絵の具で粘土に着色してもいいし、布で作ってもいい。また、布と粘土の併用もあります。決まり事に縛られるのではなく、各自が新技法を編み出せるのも魅力のひとつです」

寺園さんの手になる創作人形は「第49回 美術の祭典 東京展」(10月7日~14日 東京都美術館)に出品された。

※この記事は『サライ』本誌2023年11月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆 )

 

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