アメリカで出会った3Dピクチャーがライフワークに。日々の創造力の源は、甘酒や糠漬けなどの発酵食品が並ぶ朝食だ。

【開高悦子さんの定番・朝めし自慢】

前列中央から時計回りに、玄米ご飯(大豆・小豆・塩)、小鮎の甘露煮、切干し大根の煮物(人参・油揚げ)、糠漬け(人参・胡瓜・蕪・蕪の葉)、だし巻き卵(大葉・穂紫蘇・新生姜 の梅酢漬け)、納豆(砂糖・青葱)、ヨーグルト(プルーン・セミドライトマト)、甘酒、味噌汁(蜆・青葱)。納豆と糠漬けはふたり分。小鮎の甘露煮と切干し大根は到来物で、切干し大根は12時間ほど水に浸けて戻す。ご飯茶碗、汁椀、納豆とヨーグルトの器以外は友人の陶芸家・金谷悦子さんの作品。
夫妻揃って朝は早い。午前4時~5時に起床。それぞれ好きな時間を過ごし、朝食は7時頃。「朝の発酵食品のお陰で、ふたりとも便通で悩んだことはありません」と開高悦子さん。夫の榮さんは“銀しゃり”派で、開高家の朝の主食は、玄米ご飯と白米の2種類だ。

夫の赴任先、アメリカ・ミシガンで出会った不思議な絵が、その後の人生を変えた。それがオランダの画家、アントン・ペックの3Dピクチャーだった。開高悦子さんが、当時のことを語る。

「古ぼけた虫食いの額の中に立体的な絵が飾られていて、何故かその絵に釘付けになったのです」

32歳でアメリカ・ミシガン州グリーンビルに滞在した頃。すぐにデンマーク人のケイティー一家と親しくなり、クリスマスパーティやホームパーティを楽しんだ。前列右が4歳の資(たすく)ちゃんを抱くケイティー家の祖母、中央が1歳の千夏ちゃんを抱いた開高さん。

2年半後、移り住んだカリフォルニアでも不思議な三次元の絵と出会う。やはりアントン・ペックの3Dピクチャーだった。

「その時初めて、私もこの立体画を習いたいと強く思いました」

願えば、叶うもの。そのチャンスはすぐにやってきた。友人から3Dピクチャーの講習の誘いを受けたのだ。

3Dピクチャーとは文字通り、スリーディメンション・ピクチャーで、立体画のこと。その歴史は古く、17世紀のイギリスで流行し、それが移民とともにアメリカに渡り、20世紀になってアメリカ各地に駐在していた日本女性の手により改良、普及していったという。

開高さんも講習をきっかけに何かに駆り立てられるように作品を創りつづけ、よりオリジナリティを求めるようにもなっていた。

アメリカ滞在中はそれぞれの国の料理を持ち寄り、よくホームパーティを開いた。その時のレシピノートは今も大切な宝物。冷めても美味しいと皆に好評だった中華ちまきと、そのレシピが記されたぺージ。

昭和63年、帰国。時あたかもシャドーボックスや3Dピクチャー流行の兆しがあった頃である。

「シャドーボックスが単焦点なのに対し、私が作る3Dピクチャーは多焦点。絵の持つ遠近を考え、前だけでなく後ろにも膨らみを持たせ、臨場感のある立体画に構築するのが私の編み出した手法です」

紙の芸術、紙の彫刻ともいわれる3Dピクチャー。開高さんは対象物を写真撮影し、それを基に独自の手法で仕上げている。上は「蓮華とチョウトンボ」、下は知人の愛犬「ダニエル」。どこから見ても額の中に本物が閉じ込められているように見えるのが3Dピクチャーの魅力だ。

発酵食品の効用

開高家の6月の行事は悦子さんの梅干し作りと榮さんのらっきょう漬け。後者は広島に単身赴任していた頃からで、もう20年。鳥取から根付きらっきょうを取り寄せ、「らっきょう酢」(下画像参照)で漬ける。
「らっきょう酢」500mL 419円〜1.8L 984円。
ネット通販で購入可。
オタフクソース/広島市西区商工センター7丁目4-27
電話:0120・31・0529
朝の食卓に欠かせない甘酒は、電気圧力鍋で作る。鍋に「みやここうじ」300gを入れ、水600mLを加えて甘酒コースにセット。9時間10分後にはほんのり甘い甘酒に仕上がっている。

日本における3Dピクチャーのパイオニアは、9時~18時までアトリエにこもる。多忙な毎日だが、創作の源と健康の秘訣は、朝食の玄米ご飯と発酵食品である。

「玄米ご飯は玄米3合に大豆半合、小豆半合、塩少々を入れて炊きます。これを1食分ずつ冷凍。大豆にはたんぱく質、小豆には食物繊維が豊富で、私の健康主食です」

朝食に登場する発酵食品は、自家製の甘酒やヨーグルト、糠漬けなど。加えて、納豆には粘りを強くするために砂糖少々を入れ、夫君が80回かき混ぜるのが決まりだ。

発酵食品には腸内環境を整え、免疫力を高めるなどの効用があるという。

週4日、夏季は日が昇る前の午前4時から、冬季は日中1時間ほどのウォーキングを励行。かなりの速足で歩く。ウォーキングをしない日は、体操やエアロビクスで体を柔軟に鍛える。

原画作家と組むことで、3Dピクチャーの世界が広がる

蕨市立歴史民俗資料館が開催する「夏休みの子ども教室」で3Dピクチャーを教えている。3年〜6年生が対象で、今年で7年目になる。「3Dピクチャーとは何かを説明してから始めます。実際に作り始めると子どもたちの集中力がすごい」と開高さん(中央)。

3Dピクチャーは同じ原画を複数枚用意し、それをパーツごとに切り抜き、表情をつけて再構築し、平面の絵を立体(3D)にしていく工芸である。開高さんの場合、趣味の写真を生かし、その作品を原画とすることが多い。ただ、33年前に教室を開いてからは、イラストレーターや切り絵画家などに原画を依頼することもある。

「一流の原画作家と組むことで、生徒の創造力が広がるからです」

切り絵画家・高木亮さんとのコラボレーション作品「ねこふんじゃった」。ユーモラスな中にも、モノクロームで統一されたフランス額装で、格調高く仕上がっている。
「ねこふんじゃった」はキット販売している。詳細な作り方も付いているので、初心者も楽しめる。横100mm×縦148mm。背景3枚、近景1枚/1210円(税込み)。https://3d-picture.shop-pro.jp

作品には額装の技術も欠かせない。信頼している額装店がなくなったことから独学で勉強してきたが、2年前からフランス額装教室に通っている。

「フランス額装とは、作品と額縁の間(マット部分)をフランスの伝統的な技法で装飾することです」

あくまでも主役は作品だが、名脇役のマット部分を作家の手で作りあげることで、より高級感や手作り感を味わえるという。

きたる3月3日~5月12日まで「切り出されるいのち~きりえ&3Dピクチャー~高木亮 開高悦子 二人展」を開催予定。会場:蕨市立歴史民俗資料館(電話:048・432・2477)

※この記事は『サライ』本誌2024年1月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆 )

 

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