取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆
その8割はヨーグルトを欠かさない洋風、休日は日本の伝統的な和食。2種類の朝食がフラワーデザイナーの元気を支える。
【今野政代さんの定番・朝めし自慢】
“プリザーブドフラワー”をご存知だろうか。植物を一番美しい時に摘んで、オーガニック系の染料や保存液を吸わせ、乾燥させる。こうすることで生花と同じようなみずみずしい質感と柔らかさを保つ花のことだ。フランスで発祥し、2000年頃に日本に上陸。その第一人者が今野政代さんである。
「3年~5年もの長期間、水やりなどの管理不要で生花のような風合いを楽しめるので、贈り物や自宅のインテリアとして人気です」
と、ご自身が語る。
昭和26年、東京に生まれる。幼少の頃より生け花を嗜み、それを基礎にフラワーデザインを学ぶが、24歳で結婚。20~30代は専業主婦として出産や子育て、家事に専念した。この間、“ママ友”に請われてフラワーデザインを教えることはあっても、そこには仕事という考えはなかったという。
本格的に働き始めたのは、40歳の時。フラワーデザインの専門学校立ち上げに講師として関わった。そして、52歳で花を総合的に扱う会社『ベル・フルール』を設立。フラワーデザインの世界大会での3位入賞も、プリザーブドフラワーの入門書出版もこの頃のことだ。
以来、生花、アートフラワー、プリザーブドフラワーと多彩な花の世界で活躍。平成22年の南アフリカワールドカップ開催時には、元サッカー日本代表選手の中田英寿さんがプロデュースしたカフェの空間装飾も手掛けた。
一昨年、息子たちが会社を継いでくれたのを機に会長に。これからは新たに、花を通した女性活躍推進の仕事に力を注ぎたいという。
朝食で一日のリズムを整える
今野さんには“朝の儀式”がある。まず朝陽を浴び、コップ1杯の白湯を飲むことだ。
「温かい湯が空っぽの五臓六腑にしみわたり、胃腸が目覚める。こうして私の一日が始まるのです」
その儀式の後、朝食。昼と夜は不規則になることが多いので、朝で一日のリズムを整えるという。時間がなくても、黒ごまなどをトッピングしたヨーグルト、トマトジュースとブルーベリー黒酢は欠かさない。時間に追われない休日の朝は、和食と決めている。
朝食ひとつからも、“日々の暮らしを何より大事にしたい”という、今野さんの思いが伝わる。
フラワーデザインを通して、
日本の花文化を世界に発信する
今野さんがフラワースクールを始めたのは、起業より古い。
「30歳の頃、自宅のダイニングテーブルで教え始めたのが最初でした。それから30数年、今では多くの生徒が日本中で“花のプロ”として活躍しています」
ある人は講師となり、ある人は教室を開校、花店でデザイナーとして活躍する人も多い。楽しむ花から資格取得まで、きめ細やかな指導がこの教室の特徴だ。さらに、特筆すべきは資格取得の実績。資格にはフラワー装飾技能士の国家検定やフラワーデザイナー検定があるが、いずれも毎年全国トップの合格率を更新していることだ。
「生徒さんは20代~80代までと幅広く、年齢差があっても教室では同級生。教え教えられながら国家検定を目指す人たちもいますし、70代半ばで教室を開く人もいる。生徒さんから“人生で今が一番輝いている”といわれると嬉しい」
これも女性が活躍できる社会を応援することに繋がるだろう。生花やアートフラワー、またプリザーブドフラワーなどを通して、世界に日本の花文化を発信していくことが使命である。
取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆
※この記事は『サライ』本誌2019年3月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。