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造園家・小杉左岐さん(72歳)の朝めし自慢「60代に入ってから塩分と油分を控えた献立です」

取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

現場を退いた60歳から、血圧と腎臓に配慮した食生活を実践。醤油を一切使わない朝食が、世界を駆け巡る行動力の源だ。

【小杉左岐さんの定番・朝めし自慢】

小杉左岐さんの定番・朝めし自慢

前列中央から時計回りに、トースト、プロセスチーズ、ほうれん草のお浸し、果物(バナナ・オレンジ・林檎 )、野菜サラダ(レタス・胡瓜・トマト)、野菜ジュース(市販)、コーヒー、蜂蜜、酢。トーストは電子レンジで焦げ目をつけずに温める(約80秒)と、焼きたてのようなしっとり感が味わえる。ほうれん草のお浸しには酢を、野菜サラダには酢と蜂蜜をかけて食す。食後のコーヒーはブラックが決まりだ。

朝食は7時~7時半頃。「現場に出ていた頃はご飯に味噌汁の和風の献立でしたが、60 代になって塩分を控えられる洋風の朝食に。それも野菜と果物が中心です」と、小杉左岐さん。

朝食は7時~7時半頃。「現場に出ていた頃はご飯に味噌汁の和風の献立でしたが、60 代になって塩分を控えられる洋風の朝食に。それも野菜と果物が中心です」と、小杉左岐さん。

北はロシア、南はイランと国境を接するアゼルバイジャン共和国。10年ほど前、この国に日本庭園が誕生した。手がけたのは日本の造園会社、『小杉造園』である。社長の小杉左岐さんが語る。

「海外を目指したのは、日本での日本庭園の激減です。これでは腕のいい職人は育たない。私はかねがね職人の社会的地位をもっと上げたいと思っていたし、優れた職人も育てたい。そこで出した結論が、世界への進出だったのです」

これを契機に海外からの依頼が増え、バーレーン、韓国、ジョージア、キューバなど世界10か国に日本庭園を設計・施工。全てに通じるのが、現地の文化や事情に合わせた“責任ある庭づくり”だ。

小杉造園の海外進出第1号の日本庭園は、アゼルバイジャン共和国にある。平成21年、都市公園の中の約2650平方メートルという敷地に築山回遊式の枯山水の日本庭園を作り上げた。流れる水を砂で表現、苔代わりの芝で同国の国旗の三日月と八稜星を描いた。

小杉造園の海外進出第1号の日本庭園は、アゼルバイジャン共和国にある。平成21年、都市公園の中の約2650平方メートルという敷地に築山回遊式の枯山水の日本庭園を作り上げた。流れる水を砂で表現、苔代わりの芝で同国の国旗の三日月と八稜星を描いた。

土壌調査に始まり、日本庭園に合う現地の木々を見極める。もちろん施工にも現地の力を借りる。

「日本から職人を数名派遣しますが、作業は現地で雇った人々を指導しながら進める。最終的な目的は、日本庭園づくりを通した現地の雇用創出。だから、施工後の管理の仕方も教えます」

昭和21年、江戸時代から農業を営んでいた小杉家に生まれる。大正時代に造園業にも進出した“植木屋の3代目”として家業を継承。昭和期から近隣の政財界人の自宅の庭などを手がけてきたが、次第に都内の日本庭園は消えていった。今は、集合住宅敷地内の植栽や管理が主な事業だ。

「カストロ前議長のご子息のアントニオ・カストロさんと知り合った縁で、前議長の自宅に小さな日本庭園を作らせてもらいました」と、平成28年に亡くなったフィデル・カストロさんと一緒に。実に質素な住まいだったという。

「カストロ前議長のご子息のアントニオ・カストロさんと知り合った縁で、前議長の自宅に小さな日本庭園を作らせてもらいました」と、平成28年に亡くなったフィデル・カストロさんと一緒に。実に質素な住まいだったという。

鮨も酢で食す

60歳で現場を離れたが、一年の3分の1は海外出張。現地の大学の造園学科創設やその教科書作り、また講習などで年間2000人の外国人に会う。造園の仕事をしながらの国際親善である。

そんな小杉さんだが、現場を離れたのを機に食生活が一変した。

「血圧が高いのと少し腎臓が弱いので、醤油や塩は一切使いません。その代わりに多用するのが、酢。サラダも酢とほんの少しの蜂蜜で。私は鮨も酢でいただきますし、肉や油分も控えていますね」

それは徹底していて、夫人によればサラダに入れる胡瓜も、“塩もみ”することを禁じられているという。かくして、朝食の献立は野菜と果物が中心である。

小杉さんの食生活に欠かせない酢。友人が送ってくれる「特選 飯山産 幻のお米 コシヒカリ純米酢」は、透き通るように澄んだ酸味とほのかな甘み、米由来の旨味が楽しめる(日本橋髙島屋 ビネガー専門店 オークスハート 電話:03・3211・4111)。

小杉さんの食生活に欠かせない酢。友人が送ってくれる「特選 飯山産 幻のお米 コシヒカリ純米酢」は、透き通るように澄んだ酸味とほのかな甘み、米由来の旨味が楽しめる(日本橋髙島屋 ビネガー専門店 オークスハート 電話:03・3211・4111)。

愛食の蜂蜜2種。キューバ産「有機百花蜂蜜」は、酸味を感じさせるさっぱりした甘さと、百花の香りとコクが特徴(山田養蜂場 電話:0120・383・830)。ブラジル産「コーヒーはちみつ」は、ほんのりとコーヒーの花の香りが漂い、コーヒーの砂糖代わりにもお薦めだ(藤井養蜂場 電話:0946・52・2151)。

愛食の蜂蜜2種。キューバ産「有機百花蜂蜜」は、酸味を感じさせるさっぱりした甘さと、百花の香りとコクが特徴(山田養蜂場 電話:0120・383・830)。ブラジル産「コーヒーはちみつ」は、ほんのりとコーヒーの花の香りが漂い、コーヒーの砂糖代わりにもお薦めだ(藤井養蜂場 電話:0946・52・2151)。

昼は社員を誘って外食。近所の蕎麦屋や定食屋、レストランなど5軒ぐらいを順番に回る。それもこれも近所の商店街を元気にするためだ。夜も外食となることが多いが、醤油を使わないのは周知のこと。気に留める人は誰ひとりいないという。

技能五輪で金メダル受賞、海外へ進出するきっかけを作る

海外に進出するために、まず目指したのが技能五輪への挑戦だった。これは正式には「国際技能競技大会」と呼ばれ、2年に一度開催。建築や美容、料理など多彩な種目がある。造園が正式種目となった平成7年に初参加したが、4位。小杉さんは同19年の日本大会に焦点を絞り、勝つための戦略を立てた。それが1億円投資し、同15年に完成した熱海研修所である。

熱海研修所では海外の造園家を対象に、実践的な日本庭園の作庭研修を実施。参加者の輪は世界中に広がり、作庭の他に書道や茶華道など日本文化に親しむ機会ともなっている。

熱海研修所では海外の造園家を対象に、実践的な日本庭園の作庭研修を実施。参加者の輪は世界中に広がり、作庭の他に書道や茶華道など日本文化に親しむ機会ともなっている。

「18歳の若い男女をペアとし、ここで3年間、専属のコーチを付けて徹底的に鍛えた。それ以外の仕事はさせませんでした」

造園の競技はヨーロッパからの参加企業が強かったが、目標の日本大会で見事に金メダルを獲得。初出場から12年が経っていた。

「金メダルを獲ったことで当社の技術力の高さが広まり、日本庭園も注目されるようになった。すると、今度は世界の人々が小杉造園を訪れてくれるようになりました。また、ヨーロッパの造園家たちも日本庭園を作るなら日本の小杉がいいと推薦してくれたのです」

平成19年、第39回「国際技能競技大会」の造園部門で、強豪のヨーロッパ勢をおさえて小杉造園の選手ふたりが頂点に立った。日本はもちろん、アジア地域初の快挙であった。

平成19年、第39回「国際技能競技大会」の造園部門で、強豪のヨーロッパ勢をおさえて小杉造園の選手ふたりが頂点に立った。日本はもちろん、アジア地域初の快挙であった。

日本庭園の海外輸出に成功。教育こそが社会の財産、という考えに揺るぎはない。

60歳で現場は退いたが、今も古い付き合いの家の庭の剪定はこなす。刈り込み鋏で西洋カナメモチ(レッドロビン)の生け垣を整える。「かつては家の主人と植木職人は生涯付き合ったものです」と小杉さん。20代の鍛錬で、今も足腰は強い。

60歳で現場は退いたが、今も古い付き合いの家の庭の剪定はこなす。刈り込み鋏で西洋カナメモチ(レッドロビン)の生け垣を整える。「かつては家の主人と植木職人は生涯付き合ったものです」と小杉さん。20代の鍛錬で、今も足腰は強い。

著書『JAPANESE GARDENS 日本庭園』は、箱根美術館や桂離宮に日本の美の源流を探る一冊で、日英対訳版。『庭づくり、庭の手入れの勘どころ』は植栽入門書。作業中の怪我の応急手当まで、植木屋3代の技能と知恵を満載(共に万来舎 電話:03・5212・4455)。

著書『JAPANESE GARDENS 日本庭園』は、箱根美術館や桂離宮に日本の美の源流を探る一冊で、日英対訳版。『庭づくり、庭の手入れの勘どころ』は植栽入門書。作業中の怪我の応急手当まで、植木屋3代の技能と知恵を満載(共に万来舎 電話:03・5212・4455)。

取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

※この記事は『サライ』本誌2019年2月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。

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