取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

人気落語家は超多忙。だが、趣味のひとつが料理。楽しみながら腕をふるう純和風の朝食が、昇太ワールドの笑いの源だ。

春風亭昇太さんの定番・朝めし自慢

【春風亭昇太さんの定番・朝めし自慢】前列中央左から時計回りに、ご飯、ホワイトツナ、納豆、自家製梅干し、焼き魚(鰆の味噌漬け)、生卵、塩昆布、味噌汁(豆腐・若布)。塩昆布は京都の懐石料理店『雲月』の「小松こんぶ」。そのままご飯にのせても旨いが、生卵や納豆に混ぜて醤油代わりにもする。

「朝5時起きのテレビロケがあったりして、生活は極めて不規則。家で食べるのは、週に2~3回ですね。朝食といっても午前10時~11時頃で、朝昼兼用になることが多い」と、春風亭昇太さん。

「朝5時起きのテレビロケがあったりして、生活は極めて不規則。家で食べるのは、週に2~3回ですね。朝食といっても午前10時~11時頃で、朝昼兼用になることが多い」と、春風亭昇太さん。

毎週日曜日夕方の人気テレビ番組『笑点』(日本テレビ系列)。2年前、その6代目司会者に抜擢されたのが、人気落語家の春風亭昇太さんである。

静岡県清水市(現・静岡市清水区)の生まれ。18歳まで落語とは無縁の世界にいた。だが、東海大学1年の時に、落語という禁断の果実を齧ってしまったという。

「何かサークルに入ろうと思って、ラテンアメリカ研究会の部室を訪ねたところ留守。その隣が落語研究部でね。“ここで待っていれば”と部室に招かれ、彼らの会話のおもしろさに落研の部室から出られなくなったばかりか、その世界からも出られなくなった」(笑)

たちまち頭角を現し、大学を中退。昭和57年、五代目春風亭柳昇に弟子入りした。

「僕は静岡生まれなので江戸の言葉はしゃべれないし、似合わない。と思っていたところ、高座の柳昇師匠は落語口調じゃなかったので、この人だと……。師匠は掃除をしてても落語は上手くならない。新作を作りたいなら映画を観たり小説を読めといってくれた。ありがたかったですね。感謝です」

昭和61年に二つ目に昇進し、春風亭昇太を名乗る。平成4年、7人抜きで真打に。同12年には、独演会「古典とわたし」で文化庁芸術祭大賞受賞。師匠が新作落語の名手ということもあり、新作に積極的に取り組んでいるが、古典・新作と分けているつもりはない。

「落語家は演者が演出家も兼ねているので、古典でも新作でも僕の個性、スタイルで演っています」

古典と新作の壁を超えて、老若男女を問わずに圧倒的な支持を得ている春風亭昇太さん。新年は元日~10日:池袋演芸場 初席 第一部、元日~10日:新宿末廣亭 初席 第一部、1月11日~20日:浅草演芸ホール 二之席 昼の部に出演予定。

古典と新作の壁を超えて、老若男女を問わずに圧倒的な支持を得ている春風亭昇太さん。新年は元日~10日:池袋演芸場 初席 第一部、元日~10日:新宿末廣亭 初席 第一部、1月11日~20日:浅草演芸ホール 二之席 昼の部に出演予定。

DVD『春風亭昇太 十八番シリーズ─動─』は古典、新作を問わずに爆笑落語を創つくり続ける昇太さんの神髄を完全収録。「時そば」など。(ソニー・ミュージックダイレクト http://www.sonymusicshop.jp/)

DVD『春風亭昇太 十八番シリーズ─動─』は古典、新作を問わずに爆笑落語を創つくり続ける昇太さんの神髄を完全収録。「時そば」など。(ソニー・ミュージックダイレクト http://www.sonymusicshop.jp/

CD『春風亭昇太1〜4』の中から、写真は『春風亭昇太3』。伝統的な古典落語に新しい解釈を加え、昇太さんの世界を展開。「愛宕山」など(ソニー・ミュージックダイレクト http://www.sonymusicshop.jp/)。

CD『春風亭昇太1〜4』の中から、写真は『春風亭昇太3』。伝統的な古典落語に新しい解釈を加え、昇太さんの世界を展開。「愛宕山」など(ソニー・ミュージックダイレクト http://www.sonymusicshop.jp/)。

落語芸術協会会員によるデキシーバンド「にゅうおいらんず」の一員。平成8年の結成で、現メンバー7人は前列中央から時計回りに、発起人の三遊亭小遊三さん(ボーカルとトランペット)、春風亭柳橋さん(ギター、バンジョー)、ミーカチントさん(ソプラノサックス)、桂伸乃介さん(キーボード)、高橋徹さん(ドラムス)、ベン片岡さん(ベース)、そして春風亭昇太さん(トロンボーン)。

落語芸術協会会員によるデキシーバンド「にゅうおいらんず」の一員。平成8年の結成で、現メンバー7人は前列中央から時計回りに、発起人の三遊亭小遊三さん(ボーカルとトランペット)、春風亭柳橋さん(ギター、バンジョー)、ミーカチントさん(ソプラノサックス)、桂伸乃介さん(キーボード)、高橋徹さん(ドラムス)、ベン片岡さん(ベース)、そして春風亭昇太さん(トロンボーン)。

料理はプラモデルと同じ

高座を始めとして、芝居、テレビのドラマやバラエティ番組と、昇太さんの仕事は多岐にわたる。休日は月に1〜2回だが、時間を見つけては厨房に立つ。料理が趣味で、朝の味噌汁は削った鰹節と昆布で出汁を取る。魚釣りを楽しむので、魚を捌くのもお手の物。鰺の干物も手作りだ。

「昔ながらのしょっぱい梅干しが食べたくて、梅干し作りにも挑戦。手作り梅干しセットを利用すれば簡単です。料理は好きなプラモデルと同じで、設計図通りに作ればいい。僕は人見知りなのでひとりで外食するくらいなら、自分で作るほうが数倍楽しい」

「鰹節パックは一度に使い切れないので、独り者には自分で削るほうが経済的。鰹節削り器は男心をくすぐる道具です」と昇太さん。鰹節は静岡県焼津から届いた最高級品、本枯節だ。

「鰹節パックは一度に使い切れないので、独り者には自分で削るほうが経済的。鰹節削り器は男心をくすぐる道具です」と昇太さん。鰹節は静岡県焼津から届いた最高級品、本枯節だ。

自宅には数え切れないほどの缶詰があるという、無類の缶詰マニア。写真はそのほんの一部。「地方ではスーパーに行くのが好きで、必ず現地の缶詰を買ってくる。初めて見るものなら3缶。ひと缶 は保存用、もうひと缶は自分用、残りのひと缶は友人用です」と昇太さん。

自宅には数え切れないほどの缶詰があるという、無類の缶詰マニア。写真はそのほんの一部。「地方ではスーパーに行くのが好きで、必ず現地の缶詰を買ってくる。初めて見るものなら3缶。ひと缶は保存用、もうひと缶は自分用、残りのひと缶は友人用です」と昇太さん。

仕事も趣味も生活も楽しみながら、機嫌よく生きたい

料理に限らず、趣味も多彩だ。そのひとつが中世城郭巡り。きっかけは中学1年の夏休みまで遡る。

「僕の臍の緒が入った桐箱を発見し、蓋に書かれた出生場所“静岡県清水市二の丸町”に目がいった。調べてみたら、かつてそこに江尻城というお城があったことがわかり、僕はふたりしかいない“古城研究会”というクラブを立ち上げ、近隣の城跡に立って妄想三昧の時間を過ごしていたんです」

地元の中世城郭がきっかけだから、天守閣より城壁や石垣に興味がわく。日本には3万~4万のお城があり、ひとつの県に千くらいはある計算だという。

芸能界きっての城好きとして知られる。地方の仕事は時間に余裕をもって入り、その土地にある城を巡る。写真は鳥取県・米子城の本丸石垣の前で。

芸能界きっての城好きとして知られる。地方の仕事は時間に余裕をもって入り、その土地にある城を巡る。写真は鳥取県・米子城の本丸石垣の前で。

著書『城あるきのススメ』(小学館 電話:03・5281・3555)は、仰天大笑いの城歩きのエピソードを綴る。歌舞伎俳優・坂東三津五郎さん(故人)との「勝手に城!」対談も収録。

著書『城あるきのススメ』(小学館 電話:03・5281・3555)は、仰天大笑いの城歩きのエピソードを綴る。歌舞伎俳優・坂東三津五郎さん(故人)との「勝手に城!」対談も収録。

そんな昇太さんの生活信条は、“機嫌よく生きる”こと。独身貴族がネタになっている通り、5LDKの家にひとり暮らしだが、その住まいは昇太さんをご機嫌にする“モノ”でいっぱい。たとえば、それが昭和のレトログッズだ。朝食のテーブルも、大師匠(六代目春風亭柳橋)の家の書院戸を再利用したものである。

昭和の時代が蘇よみがえるレトログッズ蒐集家として有名。自宅には鏡台や扇風機、ダイヤル式ラジオ、電気ストーブや石油ストーブなどを収納する部屋がある。また旧車好きで、車庫には懐かしいマツダ・キャロルなどが鎮座。

昭和の時代が蘇るレトログッズ蒐集家として有名。自宅には鏡台や扇風機、ダイヤル式ラジオ、電気ストーブや石油ストーブなどを収納する部屋がある。また旧車好きで、車庫には懐かしいマツダ・キャロルなどが鎮座。

レトログッズ蒐集は昭和という時代の、少年だった頃の心を忘れたくないからだという。

取材・文/出井邦子 撮影/馬場隆

※この記事は『サライ』本誌2019年1月号掲載の「定番・朝めし自慢」を転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。

 

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