取材・文/坂口鈴香
「親の終の棲家をどう選ぶ? 壊れていく母、追い詰められる父」【その1】、【その2】で登場した大島さんの母親は、介護サービスを拒否していたが、唯一利用できていたのが「半日型デイサービス」だった。
「デイサービス」という言葉はよく耳にすると思うが、利用者はどんな風に過ごしているのだろう。また半日型デイサービスとはどういうものなのだろうか。今回は、このデイサービスについて解説したい。
◆デイサービスとは
デイサービス(通所介護)とは、デイサービス施設に日帰りで行って、入浴、食事、レクリエーション、機能訓練などを受ける介護サービスのことだ。施設の車で自宅まで送迎してくれる。要支援1~2、要介護1~5の人のほか、40歳以上64歳以下の特定疾病の人が利用できる。施設には介護職員のほか、利用者が10人以上いるデイサービスの場合は看護師が配置されている。
デイサービスのメリット
家に閉じこもりきりになることなく、家族以外の人とコミュニケーションを取れる、孤独が解消され生活にメリハリが出る、心身の機能を維持・回復できるといったメリットがある。デイサービスは、できるだけ自宅で生活を続けることができるようサポートする役割を果たしていると言えるだろう。
また介護している家族にとっては、その時間に介護から解放されて自分の時間が持てる、介護の負担が軽減されるというメリットも見逃せない。「一人暮らしの親が心配」という場合にも、デイサービスを利用してもらえば安心だろう。
デイサービスを利用するには
要介護認定を受けていることが条件だ。要介護の場合はケアマネジャーに、要支援の場合は地域包括支援センターに相談し、ケアプランに組み込んでもらう。そしてサービス提供事業者と契約し、利用を開始することになる。利用料金は介護保険により1割~3割の自己負担額で利用できるが、介護度、利用頻度・時間、施設によって変わってくる。要支援の場合は介護予防通所介護というサービスを受けることになるが、内容はデイサービスとほぼ変わらない。利用料金は月額制となっている。
デイケアとの違い
よく似ているので混同されがちな介護サービスに、「デイケア(通所リハビリテーション)」がある。こちらは、主治医の指示によって病院や介護老人保健施設などに通って、個別リハビリを受ける。医師が常駐しており、利用料金はデイサービスよりは高額になる。
◆デイサービスではどんなことをする?
標準的なデイサービスにおける一日のおおまかなスケジュールは、こんな感じだ。
9:30 お茶を飲んで一服。体温、血圧、脈拍測定、体調確認
10:00 順番に入浴~体操、機能訓練、レクリエーション
12:00 昼食、口腔ケア
13:00 休憩
14:00 体操やレクリエーション
15:00 おやつ
16:00 自由時間
17:00 帰宅
レクリエーションと一口にいっても、デイサービスによってやることはさまざまだ。歌や脳トレ、ゲーム、塗り絵、手芸などの趣味活動が代表的だ。買い物や季節ごとに外出するイベントを実施しているところもある。またデイサービス独自の通貨をつくってカジノを運営したり、学校形式で授業を行ったりなどと特色ある運営をして、認知症の症状が改善されるなどの効果を出している例もある。
「幼稚園のようにお遊戯なんてしたくない」と嫌がる人は少なくない。特に男性にはそういう傾向が強いようだが、実際に行ってみると「友達ができた」「毎週、楽しみにするようになった」という人は多い。「スタッフが一生懸命に運営してくれているのが伝わってくるので楽しい」という人もいる。先述したように、デイサービスごとに内容を工夫しているし、規模もさまざまなので、見学して本人に合ったデイサービスを選べば、楽しんで利用できる可能性は高い。
◆機能訓練型デイサービスとは
最近、増えているのが半日型の「機能訓練型デイサービス」「リハビリ特化型デイサービス」。文字通り機能訓練を中心に行う半日型のデイサービスだ。「レクリエーションはしたくない」と言っていた利用者が、「機能訓練をするデイサービスなら」と通う例も多い。
午前のみ、午後のみの3時間程度利用し、食事や入浴はついていない。理学療法士や作業療法士などの機能訓練指導員が、利用者に合ったプログラムを作成し、実施する。休憩をはさみながら、マシントレーニング(マシンリハビリ)や、機能訓練指導員による個別訓練やマッサージなどの施術が提供される。
整骨院やスポーツジムが運営している施設も多い。ただ運営事業者によって、マシンやリハビリ器具の種類、個別訓練の内容や質が異なっており、「もっとしっかりリハビリをしたいのに、お茶を飲みながらおしゃべりする時間が長い」などといった不満も聞く。利用する際は、運営事業者を確認するとともに、見学してリハビリ内容が利用者に合っているかどうかをチェックしよう。
機能訓練型デイサービスのメリット
・レクリエーションをしたくない、リハビリに集中したいという人には良い
・短時間なので、利用料金が抑えられる
機能訓練型デイサービスのデメリット
・食事や入浴がついていない(例外もある)
・介護度が重い人(要介護4、5くらい)には向いていない
・リハビリ内容や質にばらつきがある
・家族にとっては、介護負担の軽減の恩恵をあまり受けられない
* * *
近年、機能訓練型デイサービスが増加しており、デイケア(通所リハビリテーション)との違いが見えにくくなっている。デイケアは医師の指示に基づいた個別リハビリを受けること、医師が常駐していることが機能訓練型デイサービスとの大きな違いだ。機能訓練型デイサービスはあくまでもデイサービスであり、リハビリの内容や質が施設によってかなりばらつきがあることを念頭に置き、見学をしたうえでデイサービス施設を選んでほしい。
取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。