我が国の独身世帯は年々増加し、全世帯に占める割合は2020年の35.7%から2040年には39.3%とおよそ4割を占めるようになるといわれています(国立社会保障・人口問題研究所2018年推計より)。
今までリタイア後の自分をきちんと考えてこなかった方も、歳を重ねていくうちに気付いたら老後に対して漠然とした不安を抱えているという方も少なくないのではないでしょうか? 不安を軽減するためには健康維持とお金の準備がとても大事ですね。今回は独身で老後を迎える場合に必要な資金について考えてみましょう。
目次
老後に必要な資金
老後資金シミュレーション
50代貯蓄額の平均は?
老後資金の準備
まとめ
老後に必要な資金
人生100年時代と言われるように、老後資金は長生きを前提にして考える必要があります。老後の必要資金は、下記のように算出することができます。
(年間支出-年間収入)×老後生活年数
このように老後の必要資金は、自分が「何歳まで生きるか」によって決まってくるのです。例えば100歳までの生活を前提にすれば、65歳で定年を迎えリタイア後には35年間あります。では、35年分の資金はどれくらい用意すればよいのでしょうか。 一人暮らしの場合について考えてみましょう。
独身の一人暮らしの場合
老後の生活を支えるのは、国からの公的年金です。自分が受け取れる年金を試算したことはありますか? 原則として会社勤めの場合は厚生年金に該当しますが、厚生労働省の資料によると、厚生年金の平均年金月額は全体で144,268円となっています(資料1参照)。
この数字は男女合わせた全体の平均額で、性別で見ると、女性は103,159円、男性は164,770円と男女で約6万円の差があります。これは、一般的には男性の方が女性よりも会社勤めしている期間が長く、平均年収も高いということの現れです。この差を考えると、特に独身女性の場合は、老後の資金を早めに準備しておく必要がありますね。
<資料1>「厚生年金・国民年金の平均年金月額」
なお、フリーランスなど自営業者の場合は国民年金になります。国民年金の平均年金月額は男女ともに5万円台であり、厚生年金にくらべて受給額がかなり少ないです。男女問わず老後のための資金対策は、早いうちから計画的に始めた方が良いということがわかります。まずはご自身の年金受給額を把握していくことをお勧めします。「ねんきんネット」(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)をご活用ください。
老後資金シミュレーション
自分自身の将来の年金受給額を事前に把握できたら、次に支出面を見ていきましょう。老後の生活費の概算を想定することにより、老後に必要となる資金をシミュレーションすることができます。参考までに一人暮らしの独身世帯の老後生活費の実態を男女別に見てみましょう。
老後の生活費
2020年の総務省「家計調査」の報告によると、65歳以上の高齢単身無職世帯の平均的な消費支出は月額138,542円となっています。これを男女別に見ると、独身女性は139,417円、独身男性は136,923円とやや女性の方が男性を上回っています。支出の内訳を見てみましょう。
<資料2>の支出項目の中で「食料」は男性の方が女性を上回っていますが、「交際費」は女性の方が上回っています。高齢になっても、友人や周りの方とのお付き合いを楽しむのは女性の方が多い傾向にあるようです。
<資料2>「65歳以上単身無職世帯の消費支出の内訳」
以上はあくまでも平均的な数値です。これらを参考に自分自身の現在の月間支出を項目ごとに洗い出してみることをお勧めします。現在の支出状況をもとに老後はどう変わるのかを想定することによって、老後生活費の全体像が把握できます。
また、これらの数字に加えて、持ち家がある方は、自宅の修繕費や介護施設に入るための費用などの特別支出についても想定して将来必要となる資金を考慮しておきます。修繕についての見積もりや、万が一介護施設に入る際に必要となる一時金や月々のサービス利用料を事前に調査しておくとよいでしょう。
持ち家がなく賃貸の場合
なお、現在持ち家がなく、賃貸暮らしをしていて今後も賃貸暮らしを続ける場合には、上記の数字に加えて家賃の支出を想定しておくことが必要です。 老後に住み替えを検討するのであれば、どこでどれくらいの広さの家に住みたいかといった自分の希望に合うような物件の家賃相場を調べておきましょう。
50代貯蓄額の平均は?
老後の必要資金に対してどのくらいの貯蓄ができるかがポイントになりますが、例えば単身50歳代の金融資産保有額をみると924万円となっています。(資料3参照)この数字は理想的な貯蓄額と言えるのでしょうか?
<資料3>金融資産保有額(単身世帯)
先ほどの<資料1>、<資料2>のデータを元に会社勤めの独身女性を例に見ていきましょう。
・65歳以降の月間平均支出:約14万円
・月間平均年金収入:約10万円
・年間収支:約50万円のマイナス
→100歳までの35年間でおよそ1,750万円の資金が必要。
会社からの退職金が見込まれる場合には、その見込額を1,750万円から引いた額が理想的な貯蓄額になります。仮に退職金が1,000万円見込まれるのであれば、1,750万円のうち750万円の貯蓄があれば良いということになりますね。ただし、前述のように持ち家の方は修繕費など、賃貸暮らしの方は家賃などを考慮してご自身に必要となるリタイア時点の貯蓄額を試算してみましょう。
老後資金の準備
現在の貯蓄額と見込まれる退職金を足してみても、必要となる老後資金に届かない場合は、65歳に向けて積み立てを頑張る必要があります。40歳代であればあと20年前後、50歳代であれば10年前後の時間がありますから、計画的に準備をすることが可能です。
年金以外にできること
老後の収入は国民年金や厚生年金が柱となりますが、公的年金以外でも自助努力によって資金を準備していくことが大切です。40歳代であればまだまだ時間はたっぷりあるので、リスクを理解した上で資産運用を取り入れて「時間」と「利回り」の力を利用して、お金にも働いてもらいましょう。
個人型確定拠出年金のiDeCoやNISAやつみたてNISAなどの税金優遇制度もフルに活用しながら、効率よく積み立てましょう。資産運用は「よくわからなくて怖いからやらない」とは言っていられない時代。自分の将来は自分で守るという意識を持つ姿勢が大切です。
まとめ
「長生き人生」を豊かに楽しむためには、生活の「道具」としてのお金を十分に確保する必要があります。まずは自分自身の状況を理解し、将来の必要資金を把握したうえでなるべく早めに準備を始めることが肝心です。現状の分析や自分に合った資産運用を考えるときにはお金の専門家に相談しましょう。中立的な立場から考えてくれる独立系ファイナンシャルプランナーがお勧めです。
●構成・編集/内藤知夏(京都メディアライン HP:https://kyotomedialine.com FB:https://www.facebook.com/kyotomedialine/)
●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)
株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
株式会社SMILELIFE project(https://www.smilelife-project.com)