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取材・文/坂口鈴香

老後を自宅で過ごしたいなら|「いつでも連絡してください」というケアマネジャーを求めるのは間違い?【前編】

みんと。さんによる写真ACからの写真

■ケアマネジャーはブラック労働?

こんな声が届いた。

「休みでも対応してくれるのがよいケアマネジャーなのか」
「ケアマネジャーに24時間365日働けというのか」
「そういうケアマネジャーを求める利用者の方が非常識なのでは」

というのも、
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で、両親を遠距離介護する上野さんが「3回目でようやく理想とするケアマネジャーに巡り会えた。これまでのケアマネジャーは電話しても『今日は休みです』といって対応してくれなかったが、今のケアマネジャーは『心配なことがあれば、いつでも連絡してください』と言ってくれる」と発言していたからだ。

上野さんと似たような声はよく聞く。「親の終の棲家をどう選ぶ? 一人娘で独身。アラフィフ女性の長遠距離介護」で登場した中澤さんも「この人は信頼できる」とケアマネジャーを評価する理由として、「マメに連絡をくれる」ことを挙げている。

上野さんも中澤さんも、仕事を持っている。にもかかわらず、親のことを思うあまり「いつでも連絡が取れるようにしてほしい」と無理な要求をする“ブラック利用者”になっていたのだろうか? 利用者はケアマネジャーの働き方も考慮するべきなのか?

これらの疑問について、ケアマネジャーの働き方に詳しい、介護サービス提供事業所の幹部に話を聞いた。

■「家族がいつでも連絡が取れるケアマネジャーを求めるのは当たり前」:介護サービス提供事業所幹部

ありがちな話ですね。介護の必要な方の家族にとっては、「休みの日でも連絡が取れるケアマネジャーがよい」というのは当然のことでしょう。家族が仕事を持っていたり、遠距離介護をしていたりすればなおさらです。その一方でケアマネジャーが無理をしているのもまた事実です。

まず、前提としてケアマネジャーの仕事のやり方は次のような要因で左右されます。

その第1が担当している利用者数と内容、第2はケアマネジャーが所属する居宅支援事業所の規模や成り立ち、ケアマネジャーの人数や雇用形態です。これは、事業所側が何人の利用者を担当させるかどうかということも影響します。

また事業所の経営母体にもよります。個人経営から大手企業、社会福祉法人などによって働き方は変わりますし、情報共有の在り方も変わってきます。情報共有ができていれば、担当のケアマネジャーが休みでも、別のケアマネジャーが対応できる、これが理想でしょう。ところがケアマネジャーが所属する事業所は小規模なところが多く、利用者の情報共有ができているとは言い難い。大手だとシステマチックで、働き方改革に合わせてクールに割り切る傾向はあります。

それから雇用形態、つまり正社員かパートかによって時間外や休日の対応は大きく異なります。パートの場合、利用者1人についていくらと決まっている歩合給制のケアマネジャーも多いです。

■良いケアマネジャーに当たるのはむずかしい

第3が、本人の資質ですね。ケアマネジャーは本人の志と能力に依存する部分が大きいので、よいケアマネジャーに当たるのは正直なところなかなかむずかしいんです。

ケアマネジャーの出自も影響します。あまり類型化したくないのですが、介護福祉士、社会福祉士、看護師などの出身や資格によって得意分野は異なってきます。また介護福祉士でも主な業務経験が施設なのか在宅なのか、在宅でも訪問介護なのか通所介護なのかによっても仕事のやり方は異なります。

ケアマネジャーの性格もさまざまです。思い込みが激しいタイプもいて、良く言えば“熱い”ともとらえられますが、利用者の意向を受け入れずに「こうあるべき」と決めてしまうこともあるので要注意です。

第4に、タイミングもあります。月末や月初は介護保険にかかる事務作業があるので、この時期に面倒な話をされるのはあまり好まれないでしょう。また担当利用者の緊急の退院の対応などがあると余裕はなくなります。

■「今日は休みです」というケアマネジャーは選ぶな

第5に、これは記事で登場した上野さんや中澤さんのように遠距離介護ならではの事情も入ってきます。介護サービスは高齢者との契約なので、さまざまな判断をご本人に委ねることができないときには、キーパーソンとなるお子さんなどの家族が必要になります。そのキーパーソンが遠くにいるとなると、連絡が取りにくくなったり面談ができなくなったりして、ケアマネジャーとしては気を遣うことになります。

ケアプランの作成には本人の希望や心身の状態、サービス利用の状況を把握する必要があるのですが、家族が遠方にいるとその情報を得たり、ケアプランをたてる際にじっくり話して調整したりするのがむずかしくなります。だからケアマネジャーとしては近くに家族がいた方がありがたいというのが本音でしょう。

ただこの問題については、利用者が介護や医療のサービスを使っていれば、そこから情報をもらうこともできます。ですから、利用者がかかわっているルートは多いほど情報も多くなります。

そもそもケアマネジャーは介護サービスの中心にいるとはいえ、実際に利用者をケアするのはヘルパーや施設のスタッフです。だから、もしケアマネジャーの休みの日にご家族から連絡が来ても、必ずしもケアマネジャー自身が動く必要はないのです。ケアマネジャーはコントロールタワーとして、直接利用者にかかわっているヘルパーや施設スタッフに指示を出せばよいのですから。そうすれば、休日や時間外だって対応できるはずですね。

そう考えると、一律に「今日は休みですから対応できません」というケアマネジャーは、担当として選ばない方がいいといえます。

後編に続きます】

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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