■自分で判断できないときはセカンドオピニオンを

「検査データをいろいろ見ても、結局よくわからない」からと、納得感のないまま消極的に主治医に「お任せする」患者は結構多いのだという。

自分で判断ができないときは、別の医師にセカンドオピニオン(状況によってはサードオピニオンも)を仰ぐのが正解だと、吉川博士は説く。

「これは、お見合いと一緒。患者さん本人にとって、『この先生なら』という医師が見つかるまで、あちこちの医師を訪ねることは大切なのです。自分の病気について詳しく理解する上でとても役に立ちます。色々な医師の異なった意見を聞くことで、自ら治療法を選択し、決意する気持ちを持てるようにもなります」(本書86pより)

セカンドオピニオンは、主治医に紹介状を書いてもらうことから始まる。それで気分を害する主治医はいないので、遠慮せず率直に頼んでかまわないとのこと。

■やむを得ない場合を除き仕事は辞めない

がんで入院・手術となれば、「勤務先を退職あるいは無期限で休職するしかないのでは?」というのは、がんが不治の病とみなされていた頃の話。

吉川博士は、「入院中でも周りの人たちの手を借りながら、可能な限り仕事をすることが大事」だと説く。職種によっては、在宅勤務が可能であったり、極端な話、入院中にスマホ・PCを駆使して仕事をこなせることもある。2人に1人ががんにかかる時代なのだから、まともな会社であれば、入院前後の期間は、負担がない業務を割り振るなど、サポート体制を整えてくれるのが普通だ。

それでも諸般の事情で退職しなくてはならない場合、病院の医療ソーシャルワーカーに相談するのも手。病院によっては、ハローワークが出張してきて退院後の就労を支援するところもある。手段を尽くして復帰の道を探ることを、吉川博士は勧める。

*  *  *

ちなみに、吉川博士は、「楽しむことも治療」だと説いている。特に食べ物が重要だそうで、好きなものを食べながら抗がん剤を点滴したり放射線治療を受けるのと、そうしないのとでは、治療に臨む気分・姿勢が変わる。そのため、(治療に悪影響を及ぼすものでない限り)楽しく食べることを推奨している。そのほかにも、散歩をして四季折々の景色を楽しむなど、五感に良い刺激を与えるのが、予後にも影響してくるという。医者に任せきりでなく、自ら楽しみながら少しでも良くなる方向を目指すのも、がん克服の良薬にちがいない。

【今日の健康に良い1冊】
『がん宣告「される前に!」「されたら!」まず読む本』

http://www.shufu.co.jp/books/detail/978-4-391-15185-5

(吉川敏一著、本体1,300円+税、主婦と生活社)

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

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