眼科医・山口康三さんは、目の病気の多くは生活習慣病であり、目を健康にするカギは「血流をよくする」ことにあると言います。そのため、通常の眼科治療とともに、食事や運動、ストレスケアをはじめとする生活習慣を改善することで、より大きな効果を得ることができるのだそうです。

山口さんの著書『緑内障・白内障は血流の改善でよくなる』(徳間書店)の中から、「目の健康」を維持するためのポイントを紹介。今回は、運動不足による目への弊害と無理なくウォーキングを続けるコツを取り上げます。

目の生活習慣病の3大原因

目の血流を悪くする生活習慣のなかで、特に弊害が大きいのは、次の3つです。

・過食(食べすぎ)
・運動不足
・腸内環境の乱れ

運動不足がもたらす害

私たちの体は、筋肉を動かすことによって血液を体のすみずみにまで循環させています。日常、体をあまり動かさなかったり、これといった運動をしていなかったりすると、筋肉の動きが減り、全身の血流が低下します。当然、目の血流も悪くなって、目の病気を引き起こす原因になります。

全身の血流をよくするには運動が一番

生活改善のなかで、「少食」が大切なことはすでにふれましたが、少食と並んで大切なのが、運動の習慣です。運動の一番の目的は、「全身の血流をよくすること」です。
目は、見る機能を維持するために、多くの酸素と栄養を必要とします。特に網膜は毛細血管が集中しており、血流が悪くなると、まっさきにダメージを受けます。したがって、目の病気を改善するには、血液循環をよくすることが非常に重要なのです。
運動は、激しい運動より軽い運動がお勧めです。例えば、ウォーキング、ストレッチ、柔軟体操、ヨガ、ラジオ体操、水泳、腹筋、鉄棒にぶら下がる、足首を回すなど、なんでもかまいません。
誰でも簡単にできて、全身の血行を促す効果が高い運動はウォーキングです。特に脳や目への血流量が増すこともわかっています。血流がよくなると、目の傷んだ組織の修復や、病気で傷ついた組織の回復を促すことができます。

歩けば眼圧が下がる

近年、運動と目の病気に関する研究が、活発に行われるようになりました。2010年に広島大学医学部眼科の木内良明教授が、眼科雑誌に発表した「運動によって眼圧が下がる」という研究があります。
その内容は、「被験者が有酸素運動を3カ月続けると眼圧が下がった。その下がり方は、運動の強度に比例していた。ただし、運動をやめると3週間ほどで眼圧は元のレベルに戻った」というものです。
今後、こうした研究が積み重なっていけば、眼科の医療現場で、運動指導を取り入れる医師が増えるのではないか、と期待しています。

ウォーキングのコツ

私が特にお勧めしている運動は、ウォーキングです。患者さんには、「目の病気を改善するために、1日の合計で1万3000歩を目標に歩いてください」とお話ししています。
1万3000歩と聞くと、「そんなに歩くのはたいへん」と思うかもしれませんが、ふだん、家の中や買い物、通勤などで歩いている分との合計でよいので、意外と簡単に達成できます。
私の長年の臨床経験では、よく歩いている習慣の患者さんほど病気も改善しています。8000歩~1万歩より、1万3000歩ぐらい歩いたほうが断然効果は高いというのが実感です。
現在、日本の成人の平均歩数は、男性6628歩、女性5659歩(厚生労働省の令和5年「国民健康・栄養調査」)となっています。ごく平均的な歩数なら、1万3000歩は、男性で約2倍、女性で2倍強歩くのが目安になります。
ゆっくりペースで歩くと、だいたい30分で3000歩になるので、平均的な歩数なら、余分に1時間程度歩けば1万3000歩を達成できる計算です。
しかし、この歩数はあくまで目標です。無理をせず、ご自分の体調に合わせて歩いてください。

小分けにして歩いてよい

繰り返しますが、1万3000歩は生活のなかでの歩行との合計です。そのプラス分を20~30分ずつ2~3回に分けるなど、小分けにして歩いてかまいません。もちろん一度に歩いてもかまいません。ご自分のやりやすいやり方で歩いてください。
歩数を知るには、歩数計またはスマートフォン、スマートウォッチ(腕時計型端末)を利用すると励みになります。

10分「1000歩」を目安にするとよい

これまでほとんど運動をしてこなかった人や動くのがおっくうという人は、散歩に出るだけでも大仕事でしょう。そのような方は、いきなり1万3000歩を目標に掲げるのではなく、「10分1000歩」を意識することからはじめてみてはいかがでしょうか。
10分歩くと、だいたい1000歩になります。はじめは1日10分歩き、慣れてきたら10分増やすというように、少しずつ時間を増やしていくのです。
10分歩くとすると、片道5分ですみます。5分たったら折り返し、家に着いたら合計1000歩です。これならできそうですね。
歩き慣れていないと、10分で1000歩に達しない人がいるかもしれませんが、気にすることはありません。途中で疲れたら立ち止まったり、ベンチがあれば座ったりして休みながら行いましょう。無理せず心地よく歩くことで血液循環もよくなります。

*  *  *

 

緑内障・白内障は血流の改善でよくなる 黄斑変性・糖尿病網膜症・ドライアイにも効果
著/山口康三
徳間書店 1,760円(税込)

山口康三(やまぐち・こうぞう)
1981年、自治医科大学医学部卒業。横浜市立市民病院、神奈川県立厚木病院、神奈川県立藤野診療所勤務を経て、91年に栃木県下野市に回生眼科を開業。日本眼科学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本綜合医学会副会長。食事や運動、睡眠などで綜合的に対処する「目の綜合医学」を考案・確立。著書に『緑内障・白内障は朝食抜きでよくなる』(マキノ出版)、『[山口式] 自力で白内障・緑内障・黄斑変性を治す本』(主婦の友社)などがある。

 

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