日本の飼い猫の平均寿命は15歳にまで伸び、長寿化に伴って「がん」の罹患率が増えている。
病死の死因のトップもがんであり、3匹に1匹はこれがもとで死亡しているという。

猫のがんに関して、インターネットで飛び交う情報は玉石混交。
「“何が正しく、何が間違っているのか”が大変わかりにくくなっています」というのは、『猫の「がん」 ~正しく知って、向き合う』(ねこねっこ刊)を上梓した小林哲也獣医師だ。

臨床獣医腫瘍学の第一人者である小林獣医師は、がんの予防は難しいが、早期発見・治療が有効だとする。逆に言えば、かなり進行してからでは、獣医ができることは限られてしまうとも。
では、愛猫ががんに罹ってしまったら、飼い主として何を知り、何をなすべきか。本書をもとにいくつか紹介しよう。

がんに共通するサインは体重減少

猫のがんで一番多いのは乳がん。次にリンパ腫で、肥満細胞腫、扁平上皮がん、線維肉腫と続く。
乳がんは、乳腺に発生し、罹るのはメスが圧倒的に多い。最初はごく小さなしこりであったのが、次第に大きくなる。悪性のしこり(腫瘍)が2cmを超えると生存期間が短くなり、3cmを超えればリンパ節への転移の可能性が大きくなり、根治が難しくなる。

そのため、小さなしこりを見つけたときに、「気のせいかも」「ただのイボかも」と、様子を見るのは禁物。小林獣医師は、動物病院でのすみやかな受診をすすめている。

乳がんは、不妊手術で発生率が低下するため、これが有効な予防策となる。月齢6か月以前の手術では91%の発生低下が見込め、7~12か月ではそれが86%になり、それ以降ではほとんど予防効果はなくなる(24か月を過ぎれば効果はゼロ)。

また、これは乳がんに限らないが、どのがんにも共通するサインは「体重減少」だという。加齢やほかの病気の可能性もあるが、食事は減らしていないのに痩せてきたら、まずは診察を。

年々進歩する検査・診断方法

がんが疑われる猫は、動物病院でどのような診療がなされるのだろうか?
まずは、病状を確定するための検査が行われる。基本的には生体検査(生検)となり、これは細胞診検査と病理組織検査の2種類ある。

細胞診検査とは、細い注射針をしこりに刺し、細胞を採取する検査。これを顕微鏡で観察して、悪性腫瘍かどうかを調べる。病理組織検査では、太い針やメスを用いてより多くの細胞を採取する。こちらは猫の負担は大きく、麻酔もするが、細胞診検査で診断がつかないとか、より詳細な情報を求めるときに必要となる。

このほか、がんの進行・広がりを知るための画像検査がある。画像検査は、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、CT検査やMRI検査があり、それぞれ一長一短あるので、組み合わせて診断に活用する。

検査と診断の方法は、年々進歩を遂げているそうで、こうした機器によって、より精確な診断が可能となっているという。

治療法の3本柱

がんと診断されても根治が可能であれば、その治療法として外科療法、化学療法、放射線療法の3本柱がある。

局所的なものであれば、手術によって腫瘍を取り除く外科療法が第一の選択になる。
他方、化学療法とは、抗がん作用のある薬剤を使った療法で、リンパ腫のような全身性のがんに用いられる。人間のがんに使う抗がん剤と違い、吐き気や脱毛のような副作用はないそうだ。

猫に起こる副作用は骨髄抑制や胃腸毒性がほとんどです。一方、薬の副作用と思われた症状が、じつはがんの進行によるものだったということも頻繁にあります。副作用を極端に恐れるより、薬によって得られるメリットも前向きに考えてみましょう。(本書より)

上の引用にある「骨髄抑制」とは、骨髄の血液細胞を作る機能が一時的に低下するというもの。好中球(白血球の一種)が減るため、細菌の侵入を許し、熱が出ることがまれにあるという。「胃腸毒性」は、食欲不振や嘔吐・下痢といった症状をもたらす。ただ、最近はこれに対応した制吐薬が開発され、嘔吐は防げるようになっている。

3つめの放射線療法は、がん組織に放射線を照射し、がん細胞のDNAを傷つけて根絶させる。手術が難しい脳や鼻の中にも対応できる点に特徴がある。ただ、放射線装置は高額で、設置している動物病院は限られる。そのため、かかりつけの動物病院の紹介で、先端医療を導入している医療施設に通うことになる。

ところで、がん組織を撲滅する根治治療が困難な場合、「緩和治療」という選択肢もある。こちらは、痛みの緩和、栄養サポート、苦しさの緩和を主軸に、がんとの共存をはかるというもの。終末期医療と混同されやすいが、緩和治療は終末期だけに行うものではない。具体的には、鎮痛剤や食欲回復薬の投与、痛み・出血を取り除くための手術などがある。

* * *

猫のがん治療も日進月歩で、「最新」の治療法が次々と登場している。しかし、歴史の浅い治療法はデータの蓄積が少なく、「最良」とは限らないと小林獣医師は説く。どういった治療法がいいか、まずはかかりつけ医との相談から。そして本書は、猫のがん治療を俯瞰するには、またとない好著。シニア愛猫の健康が気になる方は、読んでおくとよいだろう。

【今日の愛猫の健康に良い1冊】
『猫の「がん」 ~正しく知って、向き合う~』

小林哲也著
ねこねっこ

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

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