文/印南敦史

がんは他人事ではない。予防のための6つの本音|『がん外科医の本音』
『がん外科医の本音』(中山祐次郎 著、SB新書)の著者は、医者になって13年、大腸がんの専門医として働いてきたという人物。これまで2000件以上の手術に参加し、手術以外にも抗がん剤や緩和ケアなど、多数の患者の診察にあたってきた。

また大腸がんの研究も行なっており、がんの専門家として、世界中の最新の研究データから情報を集めている。つまり、それらをまとめ、わかりやすいことばに翻訳したのが本書だということだ。

 がんにかかる人は多く、生涯でがんにかかる確率は、男性で62%、女性で47%です。今これを書いている私か、読んでいるあなたのどちらかはがんにかかるのです。かかる前に、知っておくべきことがあります。がんはある程度、予防できる病気です。明日からできるがん予防の情報を、本書ではわかりやすく紹介しています。(本書「はじめに」より引用)

がんになったから、すべてが終わりというわけではなく、闘い方があるのだと著者は主張する。そこで本書では、病院選びからがん治療医とのつきあい方、また、がんとはそもそもどういうもので、なぜ抗がん剤の副作用は起こるのかなど、外来や病室では伝えきれないことを記したのだという。

第4章「がん予防の本音」の中から、「がんを予防するための6つの方法」を抜き出してみることにしよう。

◾生活習慣で本当にがん予防できるのか

「がんは予防できるのか?」というシンプルな疑問に対し、著者は「完全に予防することはできないが、がんにかかる危険性を半分くらいに下げることはできる」と答えている。

そして、ここで明らかにしているのは、科学的にわかっている、がんを予防するための6つの方法。すべてを完璧にできないにしても、できるものから少しずつ導入するという方法で取り入れてみればいいそうだ。

1.禁煙すること
2.お酒は飲みすぎない
3.食生活に気をつける(塩分、野菜と果物、冷ましてから)
4.運動の習慣をつける
5.太りすぎない、痩せすぎない
6.肝炎ウィルスなどの感染をチェック
(本書121ページより引用)

まずは禁煙について。これについては異論の入り込む余地もないだろうが、タバコを吸う人は、吸わない人とくらべて1.5倍がんになるリスクが高まる。ちなみに著者は、タバコをやめられない人には禁煙外来に通院することを勧めている。

3カ月かけて禁煙し、5回通院すると2人に1人が禁煙に成功するのだという。費用も1万3000円~2万円だというので、タバコを一日一箱吸う人の1カ月~1カ月半でかかるお金と同じだということになる。

お酒に関しては、やはり適量にすることが大切。毎日飲む人の量の目安はエタノールで23グラムが上限で、換算すると次のようになるそうだ。

日本酒は一合(180㎖)まで
ビールは大瓶1本(633㎖)まで
焼酎・泡盛は3分の2合まで
ウイスキー・ブランデーはダブル1杯まで
ワインはグラスで2杯まで
(本書126ページより引用)

次に食べ物だが、がんを予防する上で気をつけるべきは、シンプルな3点の研究結果。

3-1、塩分は一日男性8グラムまで、女性は7グラムまで(どちらも18歳以上)
3-2、フルーツと野菜を十分に食べる
3-3、熱すぎる食べ物や飲み物は冷ます
(本書128ページより引用)

「このくらいがよい」という線引きが難しい運動に関しては、無理して休日に新しく始めるよりも、日常に取り入れて習慣化するほうが長続きするだろうと著者。たとえば、バスの停留所をひとつ手前で降りて歩くと決めたりすればいいわけだ。

そして同じく、体型も重要なポイント。太りすぎも痩せすぎも、がんによる死亡のリスクが高いからだ。そこで著者はここで、自身のBMI(ボディマス指数)を計算することを勧めている。計算式は簡単で、次のとおり。

BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}
(本書128ページより引用)

身長の単位がメートルになっているが、つまり身長が176㎝で80kgだとしたら、BMIは80÷(1.76×1.76)=25.8となるわけだ。ちなみに男性も女性もBMI21~27であれば、がんやその他の理由による脂肪は少ないのだという。

ただし当然ながら絶対ではなく、大切なのは「太りすぎ。痩せすぎはがんを含めた死亡のリスクが高い」という点だ。

そして最後に、肝炎ウィルスなどの感染をチェックすること。がんの原因になるウィルスなどに感染していないかをチェックし、感染していたら治療をすることも大切だということだ。

* * *

以上、要点をざっとさらってみたが、詳細に関してはぜひ本書をご確認いただきたい。あくまでも中立な立場から客観的な解説がなされているので、きっと役に立つはずだからだ。

著者も言うようにがんは他人事ではないからこそ、参考にしてみてはいかがだろうか?

『がん外科医の本音』

中山祐次郎著
SB新書
定価:本体850円+税
発行年2019年6月
がん外科医の本音

文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。

 

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