学校で習った簡単な単語のはずなのに、実際に英語話者が使っている意味はなんだかちょっと違うみたい。そんな小さなズレに気づいたときこそ、語感のアンテナを磨くチャンスです。
今回取り上げるのは、私たちにもなじみ深いカタカナ語の「クーラー」。英語ではどのように表現するのでしょうか?

目次
クーラー? エアコン?
英語で「エアコン」「クーラー」を表す言葉
世界の伝統的な冷却法
日本の伝統的な冷却法
最後に
クーラー? エアコン?
日本語の「冷房機」を意味する言葉として、「クーラー」という言葉が思い浮かぶかもしれません。
けれども英語で“cooler” と言うと、主に「冷却器」や「クーラーボックス」などを指します。私たちが日常的に使う家庭用クーラーという意味では、ほとんど通じません。むしろ、ピクニックなどで使う保冷バッグなどを思い浮かべることが多いでしょう。

今回は、「クーラー」や「エアコン」が、英語でなんと言うのかご紹介します。
英語で「エアコン」「クーラー」を表す言葉
ここでは3つ紹介していきましょう。
1. “AC”(エーシー)
「“air conditioner”(エア・コンディショナー)」の略で、日常会話ではこの言い方が一般的です。カジュアルな場面でよく耳にします。
【例文】
“Turn on the AC. It’s so hot!”
(エアコンつけて。暑すぎるよ!)
2. “air con”(エアコン)
こちらも“air conditioner”の略ですが、特にイギリスやオーストラリアなどで使われることが多い印象です。やや口語的な響きがあります。
【例文】
“Do you have air con in your flat?”
(あなたの部屋にはエアコンあるの?)
3. “air conditioner”(エア・コンディショナー)
きちんとした表現です。機械そのものや、製品としてのエアコンを指すときに使われます。
【例文】
“The air conditioner is broken.”
(エアコンが壊れているんです。)
世界の伝統的な冷却法
クーラーが普及するずっと前から、世界各地で人々が暑さをしのぐための知恵が育まれてきました。自然の力をうまく取り入れた工夫の数々は、実用的でありながら、美しさや文化的な豊かさを感じさせてくれます。
たとえば、イランなどに見られる「バードギール(風の塔)」。高くそびえる塔の上部で風をとらえて、地下の水路と組み合わせ、涼しい風を室内に取り入れるという仕組みです。砂漠地帯でも、室温を10度以上も下げることができるそうです。

また、エジプトには「マシュラビーヤ」と呼ばれる木製の美しい透かし彫りの窓があります。繊細な細工が施され、日差しや外からの視線を遮りながらも、風を取り込んでくれます。
地中海沿岸の地域では、建物の壁が石灰でできており、太陽光を反射して内側の温度が上がるのを抑える効果があります。かつてギリシャを旅したとき、真っ白な家々と青く澄んだ海とのコントラストが印象的でした。街並みの美しさとともに、自然と調和した暮らしの知恵が息づいているのを感じました。
日本の伝統的な冷却法
では、日本ではどのように暑さをしのいできたのでしょうか。
古くから、日本の夏には「打ち水」の習慣がありました。家の前や道ばたに水をまくことで、空気を冷やし、ほこりを抑える効果もあります。
京都の町を歩いていると、今でも時おりその風景に出会うことがあります。英語では、「打ち水」のことを“sprinkling water” や “sprinkling of water” などと表現できます。
また、「すだれ」や「よしず」といった日除けもありますね。竹や葦で作られた伝統的な覆いは、直射日光をやわらげ、風を通す役割を果たします。英語では、“a traditional Japanese screen, often made of bamboo or reeds”などと説明することができます。
「うちわ」“a traditional hand-held fan” や「扇子」“a traditional Japanese folding fan” も、夏の暮らしには欠かせない涼の道具です。着物姿で扇子でゆったりと風を送る姿を見かけると、日本の夏の風情をしみじみと感じます。

最後に
近年の夏は、エアコンなしでは命の危険すら感じるほど、厳しい暑さが続くようになりました。無理をせず、冷房を上手に取り入れることは、何よりも大切です。
涼しさや 鐘をはなるる かねの声
与謝蕪村
出典:『近世俳句俳文集』(日本古典文学全集 第42巻)1972年刊行、小学館
この句は、夜明けの涼やかなひとときを詠んだものとされています。明け方、鐘の音がしだいに遠ざかりながら静かに空へと広がっていく。澄んだ朝の空気に響く音色から、夏のひとときの涼しさが伝わってきます。
朝や夕暮れ、風が少しやわらぐ頃に、エアコンのスイッチを切って、自然の風に身をゆだねてみるのも、また心地いいものかもしれません。
次回もお楽しみに。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
