取材・文/田中周治

角さんは58歳の時、知人に誘われて受けた健康診断で、前立腺がんが見つかった

かつて、読売ジャイアンツの名リリーフ投手として一時代を築いた角盈男さんは、現役引退後、指導者や解説者のほか、タレントとしても活動してきた。病気が発覚したのは2014年、角さんが58歳の時のこと。知人に誘われて受けた健康診断で、前立腺がんが見つかった。

「1泊2日の人間ドックでした。もう少し簡易な検査はたまに受けていたのですが、本格的なのはそのときが初めてですね。そこで再検査が必要と言われて、今度は2泊3日の検査入院をしました。結果が出たとき、確かに“がん”という言葉はショックでしたけど、『ふぅ~ん…がんなんだ』という思いの方が強かった。どこか他人事というか…。痛くも痒くもない…自覚症状が全くありませんでしたからね」

まず角さんが取り組んだのは、病気に対する知識をつけること。自ら書籍などで前立腺がんについて調べたほか、ブログでがんのことを公表したことで、ファンや後援者からも情報が舞い込んだ。

「一般的に前立腺がんは、進行の遅いがんなんだそうです。ただ僕の場合は、年齢的に骨などへ転移する可能性もあったので、お医者さんからもきちんと治しましょう…と。手術か放射線治療の二択だったのですが、痛いのは嫌だし、仕事の関係で通院治療したかったので、放射線を選んだわけです」

角さんは当初、いくつか種類のある放射線治療の中から、当時、日本でまだ4か所でしか行われていなかった重粒子線治療を選んだ。そして「もっと自分に合う治療法はないか?」と調べ続けた結果、最終的にトモセラピー(X線を用いた放射線治療)に行きついた。がんが発覚した際の行動力。新しい治療に対する積極性。角さんの前向きな性格には、目を見張るものがある。

「それは現役時代に身についた考え方でしょうね。リリーフ投手の僕がマウンドに上るのは、ほとんどピンチの場面なわけです。そこで『なんでがんになってしまったのか…』なんて悩んでいる暇はない。対策を考えるしかないんです。目の前のバッターと対峙して、相手の好きなコースや球種は?という情報も含め、すべてを使って牛耳らなければならない。新しい治療に関しても同様です。プロ野球の現役時代に、本当に様々な治療にトライしましたからね。もちろん、行く前から『これは怪しいな…』というものもあったけれど、たとえば千人に一人にしか効果がなくても、それが事実であることに変わりはない。自分に効果があるかどうかは、受けてみるまで分からない。もしかしたら、自分がその千分の一なのかもしれないわけですから。体がよくなる水も飲んだし、NASAで使用しているとかいう原料でできた薬も塗ったし、お祈りもしてもらいました(笑)。ただ結果的に怪我が治ればいい。そういう考え方ですね。トモセラピーだって、最初に名前を聞いたときは『は? セラピーでがんが治るわけねえだろ!』って思いましたよ。でも、良く調べたら機械の名前でした(笑)」

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