文/鈴木拓也
日本では、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡する。これは、がん以外の病気が治せるようになって、がん以外で病死する人が少なくったことを意味する。同時にがんは、最後には命を奪う不治の病というふうにも受け取れる。
しかし、最近はがんに対する医学的理解・治療法が劇的に進んで、「近いうちには、『生活習慣病のひとつ』程度の存在になるのでは」と予想するのは、ルイ・パストゥール医学研究センター理事長の吉川敏一医学博士だ。
吉川博士は、前職の京都府立医科大学教授時代から、様々ながん治療を実践し、多数のがん患者を救った実績の持ち主。近著の『がん宣告「される前に!」「されたら!」まず読む本』(主婦と生活社)では、がんを「早めに発見できれば、必ずしも従来のように『戦う』病気ではなく、複数の治療法を組み合わせることによってコントロール可能な病気」だと述べている。そう、がんはもはや「とにかく恐ろしいもの」ではなく、医師から告知されてうろたえる必要もないものだという。
ただし、がんを告げられたら、最低限やっておくべきことはあり、それが予後の良し悪しにもつながるとも。それには、どんな事柄があるのか、本書から若干ピックアップしてみよう。
■がん検査の結果が出る日は付き添いを頼む
吉川博士の経験では、「私はがんと言われても絶対大丈夫です」と言っている人ほど、「がん」と言われた瞬間に、茫然自失やパニックになるという。
治療方針など、医師からの重要な説明を上の空で聞いて何も記憶せずとならないために、当日は家族や信頼のおける人の付き添いを頼むよう、吉川博士はアドバイスする。
付き添いは、精神的な支えとなるだけでなく、医師の説明を代わりに書き留める大事な役目も受け持つ。患者は、そうしたメモがあれば、帰宅後に動揺が多少収まってから、それを読んで治療に期待をかけることができる。
■「がん」と告知されても治療を急がない
「がん」は、発生箇所、大きさ、転移の有無などによって治療法は変わる。優れた医師ほど、そうした種々のファクターを検討し、じっくりと方針を立ててから治療に移る。
患者としては、「できるだけ早く手術をして取り除いてほしい」と焦るかもしれないが、そこは我慢してほしいと吉川博士。
「がんは短い期間でできたものではなく、年単位で大きくなってきたものが多いのです。治療法の決定まで多少の時間がかかっても、それだけでがんが大きくなったりしにくいですし、治療成績にはさほど影響を与えません。(中略)
充分な検査をせずに手術をした場合、すでに他に転移していて、改めて手術をしなければならないという結果になったら、一度で済んだかもしれない手術を二度することになります。また、手術をする際には、肺や心臓の機能が手術に耐えられるかどうかの検査も必要になりますし、貧血があれば輸血を行うなど、事前に全身の状態を整えます」(本書58~59pより)
治療の第一歩は、焦らず、医師に全幅の信頼を置いて待つという点に集約できそうだ。
また、本格的な治療に入る前に、たばこやアルコールを控え、肥満体であればそれも解消するなど自助努力でやるべきこともある。努めてそちらのほうに意識を向けるべきだろう。