取材・文/田中周治

我が闘病|大島康徳

プロ野球解説者の大島康徳さんの癌が見つかったのは、2016年のことだった。大腸癌ステージ4。肝臓にも転移していた。手術を受けなければ余命は1年。医師にそう宣告された。突然の癌宣告に大島さんはどう向き合ったのか。癌発覚から手術、そして抗癌剤治療を続ける現在までの経緯を振り返ってもらいながら、当時の心境を語ってもらった。家族の存在。野球人であることの幸せ。癌患者が暮らしやすい社会。自分が癌患者になったからこそ初めて気づけたこととは何なのか、3回に渡ってお伝えする。~その1~はコチラ。~その2~はコチラ。

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一番大切なのは、お医者さんとの信頼関係

プロ野球解説者の大島康徳さんは、2016年に大腸癌ステージ4を宣告され、摘出手術を経験した。

今や癌は「国民の2人に1人がかかる病気」だとも言われている。突然の癌宣告が、いつ我が身に訪れても不思議ではない。その時我々は、どう癌治療と向き合うべきか。癌手術の経験者として、大島さんに語ってもらった。

「あくまで経験による私個人の考えですけど、振り返ってみると、一番大切だなと思うのは、お医者さんとの信頼関係ですね。癌にもいろいろな種類や程度があって、それによって手術とか抗癌剤とか放射線とか、いろいろな治療法がある。そしてそれを決めるのは、専門家であるお医者さんです。だからと言って『お医者様は神様です』という感じで、お医者さんの言うことはすべて黙って受け入れるという姿勢ではいけないと思います。自分の身体をあずけるわけですし、もちろんお医者さんをリスペクトはします。でも、何か疑問に感じたり、希望があればこちらからも遠慮なく意見を言う。そういう間柄が理想でしょうね。少なくとも、手術に際しては、とことん自分で納得してから受ける決断を下すべきです。当然、我々には難しい医学の専門用語は理解できませんが、そこをわかりやすく丁寧に説明するのがお医者さんの仕事。その作業を怠ったり、コミュニケーションをとることを面倒くさがったりするお医者さんがだったら、すぐに病院を変えるべきだとも思います」

大島さんの癌が発覚した時、大腸を原発巣とする癌細胞は肝臓へも転移していた。肝臓癌については、現在も抗癌剤治療を続けている。その中で見えてきたものは、癌患者が働くことの難しさや大変さだった。

「癌であることを公表してから、『お大事にしてください』とか『ご静養ください』と言われる機会が増えました。もちろん、こちらを気遣ってくださった言葉であり、そこに悪意なんて微塵もないことは理解しています。ただ、癌患者に対する周囲のみなさんのそういう言葉・気持ちが過ぎると、癌患者の居場所を失わせてしまうことにもつながるのです。癌患者だって、癌が発覚する以前と同じように働ける。日本社会に、そういう理解がもっと広がってほしいですね」

【次ページに続きます】

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