4輪駆動の『R33GT-R』か? 後輪駆動の『ER34』か? 究極の選択!
セレナの購入から4年が経ち、ローンの返済も終了。お子さんも成長して親と出かけるよりも、お友達と遊ぶことを選ぶようになります。セレナを持て余していることもあり、健一さんは「そろそろスカイラインに復帰してもいい頃合い」と、奥様に持ちかけます。
「そう言い出すのを分かっていたのでしょう、あっさりと買い換えを認めてくれました。とはいえ私のわがままで買い換えるのですから失敗はできません。半年かけて中古車店を回り、候補を(9代目)『スカイライン2600GT-R』と、(10代目)『スカイライン2500GTツインカムターボ(通称“ER34”)』の2台に絞り込みました。一度はGT-Rを所有したいという思いはありましたが、ER34のFR(後輪駆動車)という魅力も捨てがたく、選択は悩みに悩みましたね」
最終的に程度の良さで、健一さんはER34を選びます。複数の自動車買い取り店を回り、一番の高値を付けた店にセレナを売却。この日のために貯めておいた小遣いを足し、一括でER34を購入します。
クルマ友だちとのツーリングに、旅行に、そしてサーキット走行にと、ER34との生活を心より楽しむ健一さん。ですが37歳を迎えたある日、突然の災難が襲いかかります。
夜間、出先より帰宅する途中、前を走行するクルマと対向車が接触事故を起こし、行く手をふさぎます。健一さんは2台を避けるべく、とっさに道路脇に飛び出して街路樹に衝突。大きな怪我こそ負いませんでしたが、ER34はフロント回りを破損してしまいます。
運ばれた自動車修理工場にて、あらためて被害の状態を検分すると、バンパー、ヘッドライト、ラジエター等は壊れていたものの、奇跡的にフレームは無事と判明。店主から「修理は可能」と告げられます。
安堵し、胸をなで下ろした健一さんは、この修理を機に、かねてより考えていた「ER34の再塗装案」を実行に移します。
「私がクルマ好きになった原点は『西部警察』です。前々からER34を『マシンRS』風に再塗装したいと考えていました。幸い、ER34が運び込まれた自動車修理工場には、設備の整った塗装ブースがありました。どのみちバンパーやボンネットといった新調するパーツはボディに合わせて塗装するのですから、再塗装の絶好の機会だと思うようにしました」
再塗装の費用を捻出するため、中古でも問題のないパーツは自身で探して調達。幸運なことに自動車修理工場の店主も西部警察のファンでマシンRSを知っていたため、塗装プランの説明もスムーズに行うことができました。
事故から4か月後。イエローだったER34は、綺麗な赤黒(濃紺メタリック)のツートンカラーとなって、健一さんの元へと戻ってきました。気持ちを新たに、ER34と出かける日々が再開します。
「再塗装したER34のおかげで見知らぬ人が話しかけてくれるようになり、多くの人と知り合いになれました。ただ交流するだけでなく、ER34を維持するためのアドバイスをくれたり、時に入手困難なパーツを譲ってくれたりと、本当によくしてくれます。事故そのものは不運でしたが、人との繋がりのいい転機になりました。こうやって振り返ると、クルマは私の人生そのもの。スカイラインはいつまでも憧れであり、大切な宝物ですね」
再塗装から12年を経た今でも、ER34は綺麗な状態を維持されています。これからも言葉ではなく態度と行動で、健一さんは「スカイラインと西部警察が好きだ!」と示し続けるでしょう。
取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ゲーム雑誌の編集者からライターに転向し、自動車やゴルフ、自然科学等、多岐に渡るジャンルで活動する。またティーン向けノベルや児童書の執筆も手がける。