取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ただの乗り物なのに、不思議と人の心を魅了する自動車とオートバイ。ここでは自動車やオートバイを溺愛することでオーナーさんの歩んだ、彩りある軌跡をご紹介します。
今回、お話をうかがったのは、神奈川県にお住まいの会社員、鹿野健一さん(50歳)です。23歳の時、とある芸能人のファンクラブイベントで奥様と出会い、翌年に結婚。授かった2人のお子さんも無事に成人され、現在に至っています。
テレビドラマが切っ掛けで、クルマ好きになった少年時代
神奈川県川崎市で産声をあげた健一さん。
70年代半ばに起こり、多くの子供たちを虜にしたスーパーカーブーム。けれど健一さんの興味をクルマに向けたのは、スーパーカーブームと同時期に放映が始まったテレビドラマ『大都会』にて、派手なカーアクションを繰り広げた国産車でした。『大都会』シリーズの放映終了後、同じく石原プロモーションが制作し、大ヒット作となった『西部警察』。健一さんの熱意もまた『西部警察』に引き継がれ、登場する国産車に心を奪われる少年時代を過ごしました。
18歳を迎えて自動車の運転免許を取得した健一さんは、
「何件もの中古車店を回ったのですが、ジャパンは見つかりませんでした。とある中古車店の店主に『探してくれ』って頼んだ際、裏手にあった解体所に案内されたんです。高く積まれたクルマの中に数台、ジャパンがありました。当時は登録から6年を越えて手放されたクルマは軒並み処分される時代で、程度の良いジャパンの入手は困難だと教わりました」
健一さんはジャパンをあきらめ、あらためて『マシンRS』のベースモデルとなった、6代目スカイラインを探します。程なくして顔見知りの中古車店から「(6代目)スカイラインが入った」との連絡を受け、心を躍らせながら駆け付けます。
「本当はマシンRSと同じグレードの『2000RSターボ(通称“DR30”)』が欲しかったのですが、見つからなくて。見せてもらった『2000GTターボ(通称“HR30”)』はとても程度が良く、運転席に座ったら一瞬で西部警察の俳優気分になりました。舞い上がり、その場で契約しちゃいましたよ」
納車後、時間があればHR30で出かける日々を送る健一さん。しかし購入から2年後。交差点で停車中に、後ろからトラックが追突。健一さんはむち打ちを負い、HR30は後ろ半分が潰されてしまいます。その後、HR30が持ち込まれた自動車修理工場より「被害が大きすぎて修理はできない」と、廃車を告げられました……。
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