取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ただの乗り物なのに、不思議と人の心を魅了する自動車とオートバイ。ここでは自動車やオートバイを溺愛することでオーナーさんの歩んだ、彩りある軌跡をご紹介します。
今回、お話をうかがったのは東京都西多摩郡にお住まいの公務員、堀口茂幸さん(58歳)です。大学を卒業後、大手自動車ディーラーに就職するも、1年で退職。親類の紹介を受けて、今の職場に再就職します。25歳で知りあった奥様と5年の交際期間を経て結婚。2人のお子さんに恵まれ、現在に至ります。
「運転している自分の姿」を想像し、楽しんでいた少年時代
東京都内にあってキャンプ場や温泉の多い、緑が豊かな西多摩郡で産声をあげた茂幸さん。物心がついた時には既にミニカーで遊んでいたという、クルマが大好きな幼少時代を過ごしました。
小中学校を卒業し高校生となっても、茂幸さんのクルマへの興味は薄れません。ディーラーからクルマのカタログをもらっては「クルマを購入した自分」を思い浮かべて、楽しんでいました。そんな折に訪れたスーパーカーブームですが、意外にも茂幸さんは熱中することなく「働くようになっても、とても購入できるクルマじゃない」と、冷めた見方をしていたそうです。
大学へと入学後、教習所に通って普通自動車免許を取得。幼少期からの興味もあって、欲しいクルマは山ほどあった茂幸さん。色々と考えた末、トヨタの初代『セリカ2000GT(リフトバック)』の購入を検討しますが、あまりの価格の高さに断念。最終的に、手の届く価格にあったトヨタの初代『カリーナ1600ST』を購入します。
「カリーナも本当は『1600GT』が欲しかったのですが、学生の身には高価すぎて手が出ませんでした。初めて買ったクルマですから、比較できたのは教習車のトヨタ『クラウン』だけですが、とても軽快で、自分の運転が上手くなったかのような錯覚をおこしましたね。今にして思えばグレードがGTじゃなく非力なSTだったからこそ、初心者だった私でも楽しく運転できたのでしょう」
念願だった「自分のクルマ」を手に入れた茂幸さん。教員職に就く事を目的として勉学に励む一方で、時間があればカリーナで奥多摩湖周辺の道を走行し、運転の楽しさを味わいます。
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