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取材・文/糸井賢一(いといけんいち)

ただの乗り物なのに、不思議と人の心を魅了する自動車とオートバイ。ここでは自動車やオートバイを溺愛することで歩んだ、彩りある軌跡をご紹介します。

自動車修理工場のスタッフと共に故障箇所を確認する鳴海さん。クラシックカーとの生活は故障やトラブル、修理との生活でもありました。

自動車修理工場のスタッフと共に故障箇所を確認する鳴海さん。クラシックカーとの生活は故障やトラブル、修理との生活でもありました。

スタイルに性能に理想的なクルマ、三菱『FTO』との日々を楽しむ高平鳴海さん(53歳)。気が付けば購入から10年が経過し、FTOに避けようのないヤレ(経年による疲労)が訪れます。

【前編】はこちら

輸入車に乗りたくてC4を購入。もっとコルベットとアメリカ車の魅力を知りたい!

購入から10年が経過したFTO。経年に見合ったボディの色あせやスクラッチ傷によるくすみが目立つようになり、気になっていました。そんな中、コインパーキングで軽い接触事故に遭遇。ボディの板金修理と一緒に再塗装を検討しますが、じきに訪れる足回りやブッシュといった消耗パーツの交換にかかる費用を考慮し、乗り換えを決めます。

「一度、輸入車を所有したいって思いが、FTOを手放すことの後押しをしてくれたよ。当時、住んでいた家の近くに中古輸入車の販売も手がける自動車修理工場があって、冷やかしでのぞいてみたら、黒いC4(シボレーの4代目『コルベット』)のコンバーチブルがあったんだ。『なにこれっ!?』ってくらいエンジンが大きくて、試乗させてもらったら驚くほど運転もしづらい。FTOに乗る前だったら絶対に買わなかったけど、40歳っていう年齢のせいかな? C4の面倒そうなところも好きになれそうな気がしたんだ。他にもフィアットの『バルケッタ』やポルシェも候補に入っていたけど、最初に出会ったのも縁だからね。このC4を買うことに決めたよ」

戦闘機のようだったFTOのコクピットと比べ、C4のコクピットはまるで宇宙船のようと感じたそう。

戦闘機のようだったFTOのコクピットと比べ、C4のコクピットはまるで宇宙船のようと感じたそう。

5700ccという大きな排気量が生み出す暴力的なパワーとトルク、アメリカ車のイメージを覆すスポーツ性能の高さに驚かされ、いつしか鳴海さんはコルベットの放つ「余裕」に魅せられます。

C4は楽しさを教えてくれる一方で、古い輸入車を維持することの難しさを突きつけました。細かいトラブルはあったものの、概ね良好だったC4のコンディション。しかし購入から3か月ほど経ったある日、突如、セルが回らず、エンジンがかからなくなります。自動車修理工場のスタッフを呼んで診断を受けるも原因は不明。入庫して修理することになったのですが、数か月を経ても状況が改善されなかったため店主より買い戻しの打診を受けます。他に自動車修理工場のアテがなかった鳴海さんはこれを了承し、C4との生活は終わりを告げます。

コルベットの魅力を満足に味わうことができず、不完全燃焼な形で取り上げられてしまった鳴海さん。そこでより魅力が濃いと感じたC3(3代目コルベット)の購入に動き出します。

「C3の購入は、一世一代の大決断だったよ。C3だけならすぐに買えたけど、まず駐車スペース付きの家を買うことにしたからね。それまで住んでいたマンションは駐車場が共同で、他の部屋の住民から「C4の排気音がうるさい」ってクレームがあったんだ。もっと排気音が大きいC3なんて、とてもじゃないけど駐車できない。あと駐車場から大通りにでるまでの道も狭い上に入り組んでいて、いつも対向車に気を使っていたんだ。だから近隣の家々との距離が適度にあって、大きな通りにすぐ出られる物件探しから始めたよ」

程なくして条件にあう新築物件が見つかりますが、それまで住んでいたマンションよりはるかに郊外にあり、都内までの移動時間も倍以上かかるようになります。しかし鳴海さんは「いずれペットを飼う時のことを考えると、良い環境じゃないか」と、ネガティブ面をプラスにとらえて物件を購入。C3を迎える準備を整えます。

買い直しを機に、C3を世界に1台だけの仕様にカスタマイズ!

C4に乗っている時に知り合った友人の口コミとインターネットの評判より、横浜にある中古アメリカ車専門店を知った鳴海さん。さっそく連絡を取り、ショップに赴きます。

「そのショップの店長が商売上手でさ。様子を見に行くだけのつもりだったのに『ちょうど80年式の、いいレストアベース車が入庫しました。こんな程度の良いC3はなかなか出ませんよ』って、うまくその気にさせられてね。それにやっぱり欲しいクルマを目の前に出されたら、もうダメだよ。その場で購入を決めちゃった」

契約終了後、さっそくレストア作業に入るC3。「もうじきC3オーナーになれる!」と、心を踊らせる鳴海さんですが、実際にレストアが終了して納車されたのは、契約から半年経てからのことでした。

イエローのボディカラーが鮮やかなC3。サライ世代ならば、コルベットと聞くとこのモデルを思い浮かべる人が多いのでは?

イエローのボディカラーが鮮やかなC3。サライ世代ならば、コルベットと聞くとこのモデルを思い浮かべる人が多いのでは?

「C3は、C4はおろかFTOと比べてもやっぱり遅いよ。それは年式的にしょうがないこと、そもそも性能を求めてC3を買ったわけじゃない。それでもC3ではじめてサーキットを走った時は楽しくて、いい思い出になった。納車後にコルベット全般やC3のオーナークラブに入り、月一回はツーリングに参加したね。人生で一番、クルマに乗っていた時期じゃないかな。あとトラブルが起こってショップに持ち込むのも月一回だったね」

トラブルや乗れない期間を含めて、C3との生活を楽しむ鳴海さん。ところがとんでもない形で別れが訪れます。C3を保管していたカーポートに、大型のトラックが飛び込んだのです! 家こそ無事だったもののカーポートは破壊され、C3も“く”の字に曲がって直しようのない有様でした。

【次ページに続きます】

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