取材・文/糸井賢一(いといけんいち)

ただの乗り物なのに、不思議と人の心を魅了する自動車とオートバイ。ここでは自動車やオートバイを溺愛することでオーナーさんの歩んだ、彩りある軌跡をご紹介します。

由湖さんの愛車は英国生まれのオープンスポーツクラシックカー。
その出会いと物語は【後編】にて語ります

今回、お話をうかがったのは東京都練馬区にお住まいの三﨑由湖さん(50歳)です。女子短期大学を卒業後、大手美容会社に就職。程なくして独り立ちを果たし、フリーで活動します。2016年に解体寸前の古蔵を購入し、カフェへと改装。美容会社とカフェ、それぞれの代表として経営に携わりながら現在に至ります。

父親の言葉を受け、旧車から大排気量輸入車まで、選り好みせずに乗ってみせる

東京都練馬区にて産声をあげた由湖さん。クルマを複数台所有するご家庭の事情から、幼い頃より「クルマは身近なもの」という意識があったそう。

小学生の時に迎えたスーパーカーブームでは、ランボルギーニ『カウンタック』やフェラーリ『デイトナ』、ゼネラルモータース『ファイアーバードトランザム』を「格好いい」と感じていましたが、「乗りたい」や「運転したい」と考えることはなく、美術品や工芸品に対する感覚に近かったそうです。

女子高等学校に入学後、オートバイ好きのお姉様の影響もあり、原動機付き自転車の免許を取得。ヤマハのスクーター『JOG(ジョグ)』を購入します。女子短期大学に入学後、18歳で普通自動車免許を取得したのですが、すぐにはクルマを購入しませんでした。

「実家は商売を営んでいることもあり、いつも5台くらいのクルマがありました。使っていないクルマは自由に使えるので、自分で購入する必要はなかったんです。お気に入りは祖父が所有するスバルの軽自動車『レックス』です。チョークを使っての(エンジン)始動は楽しくて、手間に感じたことはなかったですね」

他、スズキの二代目『ジムニー』やトヨタ『コロナクーペ』、三菱の初代『パジェロ』などを借り、気ままなドライブやお友達との旅行を楽しみます。お父様やお祖父様の購入されるクルマは、すべてMT(マニュアルトランスミッション)だったそうです。

乗ったクルマにはそれぞれ特徴があり、理解しながら乗ることの楽しさを学んだそう

「父のポリシーに『どんなクルマでも運転することができないと、クルマに“乗れた”ことにはならない』というのがありました。だから私も『それなら乗れるようになってやる!』って、旧車でも輸入車でも軽トラでも、乗る機会のあったクルマには全部、乗ってみせました」

短期大学を卒業と同時に、大手美容会社に入社した由湖さん。持ち前の勤勉さと負けん気の強さを発揮し、業務に関わる資格や免許はすべて取得。3年で独立を果たします。その後もひたすら勉強と腕を磨くことに励み、ついには最高水準の技量を持った人のみが所有できる、国際機関『CIDESCO(シデスコ)』のエステティシャン資格を取得します。

【次ページに続きます】

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