取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ただの乗り物なのに、不思議と人の心を魅了する自動車とオートバイ。ここでは自動車やオートバイを溺愛することで歩んだ、彩りある軌跡をご紹介します。
かねてより焦がれていた『マシンRS』のベースモデル、日産の6代目『スカイライン2000RSターボ(通称“DR30”)』を探し、購入した鹿野健一さん(50歳)。しかし結婚を前に売却。次のクルマを購入せず、家庭を支えるため仕事に専念します。
程度極上の『2000GTS-X』でスカイラインに復帰!
DR30の売却から2年ほど、クルマのない生活を送った健一さん。奥様との新しい生活も落ち着き、心に余裕が生まれたことから、「再びクルマを所有したい」という思いが膨らみます。
「妻に相談したら、あっさりと購入の許可が出ました。元々、私が自分で決めたけじめにこだわっていただけなので、当然といえば当然ですよね」
奥様の許可もあり、「乗るならやっぱりスカイライン。できればもう一度、DR30を!」と、スカイラインを専門に扱う中古車店に赴きます。DR30は無かったものの、7代目スカイラインの最終年型で走行距離の少ない、程度極上の『2000GTS-Xツインカムターボ』、通称“HR31”が展示されており、健一さんの目を奪います。
「DR30に未練はありましたが、やっぱり家庭のため、新しくて壊れにくいHR31を選びました。ところが購入してすぐに、妻の妊娠が判明したんです。買ったばかりのHR31を売ろうとも考えましたが、妻より『買ったものは、しかたがない』との言葉をもらえたので、所有し続けることができました。もし購入前に妊娠が分かっていたら、買っていなかったと思います」
DR30と比べて、しっかりしたフレーム。音に反応に小気味の良いセラミックタービンと、乗れば乗るほど健一さんはHR31の魅力に気付かされ、DR30への未練が払拭されます。
健一さんが30歳を迎え、HR31の購入から5年が経過した頃。お子さんも大きくなり、くわえて親御さんを送り迎えする機会が増えたため、2ドアがもたらす乗り降りの不便さや、車内の狭さを感じるようになります。
「経年劣化でHR31が不調になったこともあり、ファミリーカーへと乗り換えることにしました。日産のディーラーでセールスに相談したところ、(3代目)『プレーリーリバティ』と、(2代目)『セレナ』を勧められました。この頃はまだ車高の高いクルマに抵抗があったので、セレナではなくプレーリーリバティを選びました」
HR31を下取りに出し、新車で購入したプレーリーリバティ。AT(オートマチック・トランスミッション)搭載車で、グレードは専用のエアロが施された『ハイウェイスター』。サンルーフも装備する、いわゆるフルオプション車でした。ところが日常で乗り始めると、フワフワとしたサスペンションに違和感を覚え、ATの変速タイミングも感覚と合わず、なんともいえない気持ち悪さに付きまとわれます。
自身で選んだ事もあり、色々と出てくる不満を「しょうがない」と我慢し続ける健一さんですが、一年半ほどでついに不満が爆発! 他のクルマを求めて、ディーラーに駆け込みました。
「セールスに再びセレナを勧められ、『これもフワフワしているんじゃないか?』と、疑いながら試乗しました。ところが足回りがすごくしっかりしていて、想像よりもずっと快適な乗り心地だったんです。先入観や偏見で判断しちゃいけませんね。妻に買い換えの相談をしたら、当然のごとく『まだ(プレーリーリバティを)買ったばかりじゃない!』って反対されました。そこで引かず『頼む、もう耐えられないんだ!』と拝み倒し、なんとか認めてもらいましたね」
プレーリーリバティを下取りに出し、セレナへの乗り換えに成功した健一さん。車内は車中泊を行うのに十分な広さがあることから、お子さんたちと一緒に色々な場所へ出かけてオートキャンプを楽しむなど、思い出作りに大活躍します。
【次ページに続きます】