コレステロールと聞くと、あまりよくないイメージを抱く人が多いことと思います。善玉コレステロール、悪玉コレステロールという言い方もあります。コレステロール高めで薬を飲んでいる人も多いと思いますが、その薬と長いつきあいにならないためにも、どんな薬なのか知っておきましょう。2回に分けて解説します。

血液ドロドロの自覚症状がないゆえに“コレステロール薬“はよく飲まれる|薬を使わない薬剤師 宇多川久美子のお薬講座【第3回】

卵を毎日食べてもコレステロール値に影響はありません

悪玉コレステロール……まるで悪魔のようなネーミングです。

ところで、「コレステロールの摂取は健康に影響しない」という発表はご存知でしょうか。
2015年、アメリカ政府の食生活諮問委員会が2015年に発表し、日本でも厚生労働省がコレステロールの摂取基準を撤廃しています。それまでは卵を1日2つ以上食べてはいけないとか、コレステロールの摂りすぎだよ! と、注意されていたものです。摂取基準が中止されて4年になりますが、それまでの悪玉時代が長すぎたせいでしょうか、いまもコレステロールの摂りすぎに気をつけている人は少なくありません。

というわけで、はじめに、血液検査で測るコレステロール値は、食事から影響を受けることはほとんどないことを、お知りおきください。

本人は「血液ドロドロ」を自覚できない

コレステロールは身体の細胞膜をはじめ人体の構成材料として重要な物質です。善玉も悪玉も両方、必須。特にLDLコレステロールは悪玉と嫌われていますが、「脂肪の摂取量が多いほど死亡リスクは低下する」と結論した論文が、世界的に権威のある医学雑誌『ランセット』に発表されています。2017年、医学界に広く衝撃を与えた論文です。

それでもコレステロール値に「異常値」が設定されているのは、血液中で酸化したLDLコレステロール=酸化LDLコレステロールが動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞を引き起こすおそれがあるからです。

コレステロール値が高いと、よく「血液がドロドロ」などと言われます。しかし脂質異常症の本人に血液ドロドロの自覚はありません。コレステロール値は血液検査をして初めてわかるものであり、基準値より高くても低くても本人に自覚症状はありません。だからこそ、医師から「あなたの血液、ドロドロです」と言われると驚き、焦り、「お薬飲まないと大変なことになります」と言われると、きちんと飲まなきゃと思うわけです。

自覚症状がないまま致命的な状態に至る症状をサイレントキラーと呼びます。

「脂質異常症はまさにサイレントキラーです。徐々に動脈硬化が進行し、狭心症や脳梗塞に至ります……」

薬剤師として薬局に勤務していたころ、私も患者さんにこんなふうに説明していました。私の印象では、いちばんきちんとお薬を服用されていたのは脂質異常症の患者さんでした。自覚症状がないゆえ、サイレントキラーという脅し文句が効くのだと思います。

脂質異常症の薬は大きく2種類

脂質異常症の薬は、大きく2種類に分けられます。1つは主にLDLコレステロールを減らす薬。もうひとつは主に中性脂肪を減らす薬です。
脂質異常症には次の4つのタイプがあります。

・高LDLコレステロール血症→LDL(いわゆる悪玉)コレステロールが多いタイプ
・高トリグリセライド血症→中性脂肪が多いタイプ
・低HDLコレステロール血症→HDL(いわゆる善玉)コレステロールが少ないタイプ
・高non-HDLコレステロール血症→総コレステロールから善玉コレステロールを引いた値が高いタイプ

上のタイプ別では、高トリグリセリド血症は中性脂肪を減らす薬、それ他にはまず、以下に説明する「スタチン」が使われます。

<LDLコレステロールを減らす主な薬>

・HMG-Co還元酵素阻害薬「スタチン」
肝臓においてコレステロールを生成するのを促す「HMG-Co還元酵素」という酵素を阻害する。
・小腸コレステロールトランスポーター阻害薬「エゼチミブ」
小腸でのコレステロールの吸収を阻害する。
・陰イオン交換樹脂「レジン」
胆汁酸と結合する作用がある。肝臓ではコレステロールが胆汁酸に分解するが、これはその胆汁酸と結合してコレステロールを体外への排出を促す。
・「プロブコール」
胆汁酸に異化したコレステロールの排泄を促進する。

<中性脂肪を減らす主な薬>

・フィブラート系薬
肝臓でのトリグリセライドの合成を阻害。トリグリセライドの合成を阻害するリボたんぱくリパーゼの活性化させる。
・ニコチン酸系薬
脂肪酸が集まった中性脂肪になるのを防ぐ。
・イコサベント酸エチル
血小板の働きを抑制して血液が固まるのを防ぐ。
・多価不飽和酸脂肪酸(EPA製剤、オメガ3脂肪酸エチル)
肝臓でのトリグリセライドの合成を抑制。リボたんぱくの分泌を低下させる。

次回は、世界でもっとも多く処方されている薬品界のスーパーベストセラー「スタチン」について、その人気と問題点を解説します。

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士。一般社団法人国際感食協会理事長。健康オンラインサロン「豆の木クラブ」主宰。薬剤師として医療現場に立つ中で、薬の処方や飲み方に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」をめざす。薬漬けだった自らも健康を取り戻した。現在は、栄養学や運動生理学の知識も生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に薬に頼らない健康法をイベントや講座で多くの人に伝えている。近著に『薬は減らせる!』(青春出版社)。

構成・文/佐藤恵菜

 

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