文/満尾正
新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。
健康管理には10年前倒しの気持ちが必要!
私はハーバード大学などで研鑽を積んだ後、日本初の抗加齢医療の専門病院を開設しました。
以後、十数年にわたり、のべ4000人ほどの患者さんに接していますが、見た目に関しても、内面についても、人は加齢とともに老いていくことは否めません。
ですが、そのスピードを速めてしまうか遅らせることができるかは、本人の努力次第でずいぶん変わってきます。
では、自分の老いを遅らせることができる人はなにをやっているのでしょうか。逆説的なことを言うようですが、自分の老いとしっかり向き合っています。 目をそらせば、老いはどんどん加速します。
ところが、働き盛りの人たちは、とくに内部の老いから目をそらしがちです。
見た目については「いや、俺も腹が出たおっさんだよ」「私もシワだらけのおばさんね」などと笑うことはできるのに、内部について正面から認めることにはとても臆病です。
そのため、健康診断の数日前からお酒の量を減らしてみたりして、嘘の自分をつくりだしています。それによって、余計にまずい方向へ進んでしまうにもかかわらず……。
大事なのは、まず今の自分の立ち位置を知ることです。
20代はどんな生活をしていても、だいたい元気で朝まで飲めますね。30代になると変化が起きて、深酒すると残るようになります。
40代になると、そもそも朝までなんて飲めなくなります。明らかに体力も落ち、それにつれて免疫力も乱れてきているはずです。
だから、この頃から自分の体をきちんと見つめ、生活スタイルを見直していかないと、50代以降、大変なことになっていきます。私自身、救急医をやめた40歳前後からガクンと体力が落ちた自覚がありました。
もちろん、50歳を超えても「俺は若い」と言うのは自由です。しかし、体はそうではありません。
加齢とともに徐々にではなく、ドカンとくるのが体力の波。だから「今は大丈夫」と高をくくらずに10年前倒しで健康管理するくらいの気持ちが必要です。
満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。