そもそもワクチンとは何か?
世界中で新型コロナウイルスが猛威をふるっています。その中で「ワクチンはいつできるのか?」ということも話題になっています。すでに国内外、数社が新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンを開発中です。しかし、完成するのは「最短で6か月」と報道されています。
ここでワクチンとは何か、基本をおさらいしておきましょう。
人間の体は日々、ウイルスや細菌といった病原体にさらされています。病原体に感染することでさまざまな症状が発症し、最悪の場合、死に至るわけです。あらかじめその病原体のワクチンを接種すると、体の中に病原体への抗体ができます。ワクチンは体にとって異物だからです。そして、次に外から本物の病原体が入って来た時に、その抗体が病原体をやっつけるわけです。
ワクチンには「生ワクチン」「不活性ワクチン」「トキソイド」の3種類があります。
「生ワクチン」は、病原体は生きていますが、病原体のウイルスや細菌が持っている病原性を弱めたものです。病原性を弱くしたウイルスや細菌が身体の中で徐々に増えるので、接種後1~3週間に自然にかかったのと同じような軽い症状が出ることがあります。「不活化ワクチン」に比べて接種後、体内での増殖力が強いため、接種回数は少ないという特徴があります。
「不活化ワクチン」は病原性を無くした細菌やウイルスの一部を使ってつくられたワクチンです。接種しても、その病気になることはありませんが、1回の接種では免疫が充分にはできません。ワクチンによって決められた回数の接種が必要です。
「トキソイド」は、細菌の産生する毒素(トキシン)を取り出し、免疫をつくる働きは維持しながらその毒性をなくしたものです。不活化ワクチンとして分類されることもあります。
SARS、MERSもコロナウイルスの仲間
では、コロナウイルスについてみていきましょう。国立感染症センターの説明によると、人が日常的に感染する4種類のコロナウイルスがあり、「風邪の10~15%(流行期35%)はこれら4種のコロナウイルスを原因とする。冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子供は6歳までに感染を経験する。多くの感染者は軽症だが、高熱を引き起こすこともある」というものです。2002〜2003年シーズンに流行ったSARS、2012年にサウジアラビアで発見されたMERSも、コロナウイルスの仲間です。
今回は今まで報告されていた6種類とは異なる型のコロナウイルスが発見されたということです。今回の新型コロナCOVID-19のワクチンですが、先述したとおり、製薬会社では「早くて半年」で開発できると言っています。ただウイルスの特性からして、インフルエンザウイルスもそうであるように半年後には微妙に型が変化している可能性もあります。
予防策はインフルエンザと変わらない
例年ならインフルエンザの話題は終わり、花粉症の話題が取り上げられている時期ですが、今年は新型コロナウイルスで予断を許さない状況が続いています。ただインフルエンザでも、新型コロナでも、自分の身を守るために行うことは、そう変わらないと思います。
手洗い、うがい、エチケットとしてのマスク。今年はアルコール消毒剤やベンザルコニウムの入った洗剤で念入りに手を洗う人が増えました。そのことでインフルエンザの患者数が激減したとも言われています。しかし、注意していただきたいことがあります。手も喉も、殺菌力の強いもので洗浄すると常在菌をいっしょに殺菌してしまうということです。
私たちの体を外界から守るものはまず皮膚ですが、その皮膚にバリアを張ってくれているのは数多くの常在菌です。殺菌剤を使いすぎて常在菌が弱ることで不調を来すこともありますので、お気をつけください。
いちばんの予防策は、自身の免疫力を高く保つことです。そのためにはごく基本的なことになりますが、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠。適度な運動(ウォーキングで十分)、暴飲暴食しないなど。生活習慣を整えて疲れを溜めないことが、免疫力を高める基礎になります。
宇多川久美子(うだがわ・くみこ)
薬剤師、栄養学博士。一般社団法人国際感食協会理事長。健康オンラインサロン「豆の木クラブ」主宰。薬剤師として医療現場に立つ中で、薬の処方や飲み方に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」をめざす。薬漬けだった自らも健康を取り戻した。現在は、栄養学や運動生理学の知識も生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に薬に頼らない健康法をイベントや講座で多くの人に伝えている。近著に『血圧を下げるのに降圧剤はいらない: 薬を使わない薬剤師が教える』(河出書房新社)。