花粉症は薬を飲みつづけていれば治るのか?|薬を使わない薬剤師 宇多川久美子のお薬講座【第19回】抗ヒスタミン薬を飲みつづけても花粉症は治らない

前回、抗ヒスタミン薬の効能についてご説明しましたが、たとえジェネリックで費用を抑えられたとしても、決して飲みつづけていい薬ではありません。なぜなら、いくら抗ヒスタミン薬を飲んでも花粉症は治らないからです。抗ヒスタミン薬は症状を抑えているに過ぎません。つらい症状を薬の力を借りて鎮めることは有効な処置だと思います。しかし薬に頼っていてはいつまでも薬から逃れられません。

アレルギーであるとわかっていれば、なるべく花粉をシャットアウトする工夫をしたり、アレルゲンに負けないよう体づくりをするなど、抜本的な対策を取る必要があります。多少、時間はかかりますが、アレルギー対策としてはまっとうな方法なのです。

私がいちばん問題に思うのは、市販で手軽に買えることから、慢性的に飲みつづけてしまうことです。どんな薬にも必ず耐性というものがあり、飲みつづけることで効き目は徐々に下がってしまうからです。抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬に限った話ではありません。長期間、飲めば飲むほどに効かなくなります。

ただし、アレルギー性鼻炎は悪化させると慢性になるリスクもありますので、つらい鼻炎をがまんする必要はありません。飲み過ぎに留意したうえで、抗ヒスタミン薬をうまく使ってください。

花粉症は免疫機能がきちんと働いている証拠

近年、花粉症を根治できる療法として知られる「減感作療法」。個人差がありますが3〜5年ほど継続することで、体がスギ花粉に対して過剰反応を起こさなくなります。

私の知る限りではありますが、評判は悪くないようです。私も、減感作療法は療法であって薬を使うわけではないので、薬につきものの副作用がない、という点では安全なのではないかと考えています。

この減感作療法の仕組みはシンプルで、だんだんとスギ花粉に体を慣れさせていくことで免疫をつくり、春に大量のスギ花粉に暴露しても“気にならない”ようにするものです。

アレルギー反応とは、体に入ってくる花粉を異物ととらえ、すぐに排除しようとする反応です。鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、涙目、これらはすべて、異物を外へ出そうとする反応です。異物を排除する働き自体はきわめてまっとうであり、人体には必要な機能です。ただその働きが“過剰”だと困るということです。

言い換えれば、花粉のアレルギー反応は、免疫機能がしっかり機能している証拠です。実際、高齢の方で花粉症という人はめずらしいです。若いころは花粉症に悩まされていた人も年齢とともにだんだん治まっていく傾向があります。これは、免疫機能がだんだんと鈍くなっていることを示しています。減感作療法は人工的に免疫機能を鈍感にする方法です。

ですから今、花粉症に悩まされていても、決して悲観すべきことではないのです。私の免疫機能はまだ若いと、考えてみてください。症状自体はつらいものがあるかもしれませんが、気持ち的に少しラクになりませんか?

自律神経のバランスを整える

花粉症はアレルギー反応です。根治するには花粉の免疫をつくる=慣れる=鈍くなるしかありません。しかし、はじめに述べたように、現代は花粉のほかにもハウスダストやら黄砂やら、身のまわりにさまざまなアレルゲンが存在します。

そのひとつひとつに免疫をつくっていくのは大変です。少しでも症状をやわらげるために、自身の健康を保つことがいちばんだと思います。

たとえば寝不足の日は、花粉症の症状が強く出たりしませんか? 疲れがたまっていると症状が出やすくなります。きちんと睡眠をとる、疲れをためない、栄養バランスの取れた食事をする、適度に体を動かすなどなど、当たり前のことばかりですが、こうしたことで自律神経のバランスを整えておくことが、アレルギー症状をやわらげる助けになります。

もちろん、出てしまった症状は抗ヒスタミン薬で緩和したほうがいいでしょう。薬を飲まずにいつまでも鼻をグズグズさせているとQOLが低下するだけでなく、副鼻腔炎を引き起こすなど悪化するリスクがあります。

そして薬で症状が落ち着いたら、「今後もこの薬を飲めば大丈夫」と薬に全幅の信頼を寄せるのではなく、「自律神経のバランスを整える」生活習慣にシフトしましょう。

薬はあくまで、その場しのぎの対症法にすぎません。たとえ「抗ヒスタミン薬を1年ずっと飲んでいるけれど何も副作用はない」としても、10年後、20年後はわかりません。10年間飲みつづけた場合のデータもありません。薬の効能を過信せず、薬に頼らない生活習慣へ、できることから実行していきましょう。

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士。一般社団法人国際感食協会理事長。健康オンラインサロン「豆の木クラブ」主宰。薬剤師として医療現場に立つ中で、薬の処方や飲み方に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」をめざす。薬漬けだった自らも健康を取り戻した。現在は、栄養学や運動生理学の知識も生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に薬に頼らない健康法をイベントや講座で多くの人に伝えている。近著に『血圧を下げるのに降圧剤はいらない: 薬を使わない薬剤師が教える』(河出書房新社)。

構成・文/佐藤恵菜

 

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