文/印南敦史

画像はイメージです。

『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』(渡邊 剛 著、坂本昌也 監修、あさ出版)の著者は心臓血管外科医。自身が院長を務める「ニューハート・ワタナベ国際病院」において、心臓に疾患を抱える人々と接しているという。

国内のみならず世界中から患者が訪れるそうだが、つまりはそれほど深刻な症状の方が多いのだろう。事実、「こういう状態になる前に患者さんを救えなかったのか」と感じることも少なくないようである。

動脈硬化(血管が硬くなって血液が流れにくくなる状態)から引き起こされる狭心症や心筋梗塞、大動脈瘤などの心臓疾患は、生活習慣病といわれるように未然に防げる病気でもあります。しかも、事故や災害のような予期せぬトラブルで発症するわけではなく、時間をかけて少しずつ動脈硬化が進行することで発症する病気です。(本書「はじめに」より)

つまり、防ごうと思えば防げる病気でもあるということだ。にもかかわらず現実的には、動脈硬化の進行を放置している人は少なくない。簡単な話で、自分の血管がボロボロになっていることに気づいていないからだ。

だからこそ重要なのは、血液の質である。あまり意識する機会は多くないかもしれないが、決して無視するわけにはいかないのである。

ちなみに本書では、血管をボロボロにする汚い血液を「悪玉血液」、劣化を遅らせるきれいな血液を「善玉血液」と位置づけている。端的にいえば、善玉血液なら、少なくとも劣化のスピードを遅らせることができるのだ。

著者によれば、ボロボロ血管にならないために重要なのは「善玉血液をつくること」であり、その方法として有効なのが食事の改善だという。たしかにそれなら、やろうと思えば次の食事から変えることができる。

食事の改善を勧めるのは、血液が食事によって変わるからなのだそうだ。

要は、悪玉血液にならないような食べ方を覚えて実践すればいいのです。そして、大切なのは、それを習慣化することです。(本書103ページより)

そこで本書ではさまざまなメソッドが紹介されているわけだが、興味深いのは、短期間で悪玉血液を善玉血液に変える手段として「ファスティング」を紹介している点である。

ファスティングとは、一定期間食べ物の摂取を制限する健康法、つまりは「断食」のことだ。

食事の時間を制限する“短時間ファスティング”と、3日〜1週間ほど固形物を食べずに過ごす“長期間ファスティング”があるが、当然ながらチャレンジしやすいのは前者だろう。よく耳にする「プチ断食」や「16時間断食」などがそれにあたる。

ファスティングによる効果として話題になったのが、「オートファジー」です。オートファジーとは、古くなった自分の細胞を分解し、再利用する仕組みです。自分の体の中にあるリサイクル工場だと思ってください。この仕組みが稼働すると新陳代謝が活発になり、老化を遅らせるといわれています。(本書128ページより)

オートファジーは食べない時間を16時間つくると活性化するといわれており、そのため「16時間断食」が注目されたわけだ。

ファスティング中はなにも食べないので、血糖値が上がることもなければ、脂肪がたまることもない。食べ物を消化しない時間をつくることで胃や腸を休ませ、腸内環境を整えることもできる。

つまり善玉血液をつくるには、ファスティングは有効な方法のひとつだということである。ただし、意識しておきたいこともある。

「16時間断食」の有効性が叫ばれると、まるで「16時間でなくてはいけない」ような気分になるかもしれない。

だが実際には16時間ではなく、14時間を目安にしたほうがよいというのだ。なぜなら、14時間のほうが16時間より楽に続けられるから。

たとえば、18時までには早めの夕食を摂って就寝し、次の日の朝8時に朝食を摂るようなイメージです。オートファジーも14時間なら少しずつ活性化するといわれています。(本書129ページより)

重要なポイントは、「継続できるかどうか」。新たな生活習慣を取り入れようとする際にはつい無理をしがちだが、それでは結果的に続かなくなってしまう可能性が高い。

必要以上にがんばりすぎることなく、とにかく続けることが大切なのだ。そうした習慣が結果的に、血管を守ってくれることになるのだから。

『世界一の心臓血管外科医が教える 善玉血液のつくり方』
渡邊 剛 著、坂本昌也 監修
1540円
あさ出版

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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