夏は結膜炎が増えるシーズンです。目やにが出る、白目が赤くなる、目が痒い、まぶたが腫れるなどの症状が出たら結膜炎かもしれません。結膜とは白目や、まぶたの裏側を覆っている薄い膜ですが、その部分に起きる炎症を総じて結膜炎といいます。市販薬で治るのでしょうか?

夏の紫外線の強さも結膜炎の原因

結膜炎の原因は大きくウイルスや細菌による感染性と、花粉やハウスダスト、埃などのアレルギーによる非感染性の2つに分かれます。

夏に結膜炎が増える理由は紫外線の強さもあります。たとえば海や山へ出かけ、長時間、強い紫外線を浴びれば、肌が焼けるのと同じように結膜にもダメージがあります。一種のやけどであり、炎症の原因になります。こちらも非感染性ですね。

よほど重症化しないかぎり、結膜炎はしばらく目を安静にしていることで快復します。感染性の結膜炎も、基本的には自分自身の免疫の力で快復していくものです。ただし、なかなか治らない、痒くてたまらないという場合は眼科を受診し、早めに対処したほうがいいでしょう。

感染性には抗生剤とかゆみ止め

眼科で処方される薬は、感染性か非感染性かで違います。

感染性の結膜炎の場合、ウイルス性では複数のウイルスが結膜炎の原因になりますが、夏かぜの原因になるアデノウイルスが代表的です。プールで感染してくることも多いのでプール熱とも呼ばれ、目に感染して結膜炎を引き起こすもの、「はやりめ」と呼ばれる流行性角結膜炎 を起こすものもあります。細菌性では黄色ブドウ球菌、肺炎菌など多数の細菌が原因になります。

ウイルスでも細菌でも、感染性の結膜炎に処方される薬は、かゆみ止めと抗生剤の点眼薬です。あれ? と思われた方もいらっしゃるでしょう。抗生剤は細菌には有効ですが、ウイルスには効きませんから。ただ、二次感染を予防する意味で抗生剤が処方されるのです。よく処方される「クラビット」(一般名:レボフロキサシン水和物)は強めの抗生剤で、結膜炎以外に、さまざまな感染症に用いられる薬です。

市販薬にも結膜炎用の目薬があります。

有効成分としてサルファ剤(スルファメトキサゾール)という抗菌剤が入っています。この抗菌剤と、眼科で処方される抗生剤の違いは、殺菌力の強さの違いと言っていいでしょう。抗生剤のほうがより強力です。

また、炎症やかゆみを抑えるグリチルリチン酸二カリウムや、クロルフェニラミンマレイン酸塩なども配合されているので、かゆみを抑えるのにも市販薬はある程度、有効でしょう。

次に、花粉やハウスダスト、埃などによって生じる非感染性の結膜炎の場合。眼科で処方されるのは「パタノール」(一般名:オロパタジン塩酸塩)や、「アレジオン」(一般名:エピナスチン塩酸塩)などの抗アレルギー剤です。また、重症化している場合はステロイド入りの点眼薬が出されます。ステロイド入りの点眼薬は市販薬にはありません。

市販の目薬なら非クール系

「 結膜炎ぐらい、市販の目薬でどうにかなりませんか」という質問を受けます。

昨今、ドラッグストアの目薬の棚は充実しています。結膜炎を悪化させるのは、目を掻いてしまうことですので、かゆみ止めの入った目薬で痒みを抑えるほうがいいと思います。

春先、花粉の季節になると、かゆみを抑える有効成分としてクロモグリク酸ナトリウム、クロルフェニラミンマレイン酸塩、グリチルリチン酸二カリウムなどの入った少し高めの目薬がズラーッと並びますが、こうした目薬でもいいでしょう。

ただし注意が必要なのは、スーッとした成分が入った目薬です。l-メントールが代表的です。スーッとする成分は結膜に刺激を与え、炎症を悪化させかねません。ふだん眠気が飛ぶようなクール系を愛用している方は特にご注意ください。

ドライアイの方も結膜炎になりやすい傾向があります。角膜や結膜が乾燥していると、ちょっとした刺激で炎症を起こしやすくなるからです。ドライアイの予防のために市販の目薬を使っていらっしゃる方も多いと思います。 市販の目薬は防腐剤が入ったものが多いので、 ソフトコンタクトを着けている方はお気をつけください。

炎症は乾いたところ、体力、抵抗力の落ちたところに発症しやすいものです。夏本番に向けて、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を確保し、基礎体力を落とさないよう心がけたいものです。紫外線予防にサングラスや帽子を取り入れて楽しんでみるのもいいのではないでしょうか。また、細菌性の急性結膜炎の場合は家族にもうつりやすいので、同じタオルの使用などは避けてください。

なお、先に述べたとおり、結膜炎は目を安静に保つことで、ふつうは1週間程度で快復していきます。もし快復しないとしたら、体力が落ちているサインと見ることができます。あるいは別の原因が隠れている可能性もあるので、やはり眼科を受診したほうがいいでしょう。

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)
薬剤師、栄養学博士。一般社団法人国際感食協会理事長。健康オンラインサロン「豆の木クラブ」主宰。薬剤師として医療現場に立つ中で、薬の処方や飲み方に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」をめざす。薬漬けだった自らも健康を取り戻した。現在は、栄養学や運動生理学の知識も生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に薬に頼らない健康法をイベントや講座で多くの人に伝えている。近著に『血圧を下げるのに降圧剤はいらない: 薬を使わない薬剤師が教える』(河出書房新社)。

 

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