痒い水虫に、かゆみ止め入りの市販薬の使い方〜その2|薬を使わない薬剤師 宇多川久美子のお薬講座【第30回】

夏になるとぶり返しがちな水虫。今年こそ治したい! 前回、水虫向け市販薬の特性をご説明しましたが、市販の水虫薬はスイッチOTCが多く、キチンと使えば効果が期待できます。

症状に合わせて薬のタイプを使い分ける

ドラッグストアの水虫薬の棚には、軟膏、クリーム、液体、パウダー、ゲルなどのさまざまな形状の製品が並んでいます。薬をより効果的にするためには水虫の症状に合わせたタイプ選びも大事です。せっかく塗っても、タイプと症状が合わないと効果が半減してしまいます。

<患部の状態と薬のタイプ分け>

・足の指と指の間のグジュグジュした水虫、水疱のできた水虫など→軟膏、クリーム、パウダータイプを。軟膏と比べ、クリームやパウダーには刺激性があるので、患部が裂けていたり、ただれていたりする場合は軟膏がベストチョイス。
・乾燥してカサカサしている水虫、角質が厚くなっている水虫→液体やスプレー。素早く広い範囲に塗布できるタイプ。

<形状タイプの特性>

・軟膏:基剤はワセリン。ベタベタするので、しばらくは乾かない。そのベタベタによって薬効成分が患部に長くとどまるため、もっとも効果的。
・クリーム:軟膏よりスーッと伸びて塗りやすい。皮膚になじみやすく浸透しやすくするために、軟膏に乳化剤などを加えている。刺激性のある成分が使われることもあり、軟膏と比べると若干、刺激性あり。
・ジェル:クリームよりさらに伸びやすく、また患部にとどまるので“使用感”あり。刺激性はクリーム同様に、軟膏と比べると若干強い。
・液体:患部にまんべんなく、素早く浸透させることができる。刺激があるので、患部が裂けている箇所には沁みる。スプレータイプと同様、患部に触らず塗布できる。
・スプレー:広範囲に塗るのに適する。患部に触りたくない人におすすめ。

大事なことは塗りつづけること

現在、市販されている水虫薬は効き目が高く、しばらくきちんと塗っていれば症状が改善することが多いと思います。

ただ、水虫の場合、ここからが肝心です。薬剤師としては「治ったと思っても1〜2か月は塗ってください」という指導をしたいところです。

水虫薬の使い方として、水虫ができているのは右足の中指だけでも、「右足の指にまんべんなく塗る」「両足に塗る」といった指示をする医師や薬剤師もいます。白癬菌が皮膚の奥深く、広範囲に潜んでいる可能性があるからです。また水虫歴や生活習慣にもよりますが、白癬菌は、右足に症状が出れば左足にも感染している可能性が考えられるからです。

そのため水虫薬は広範囲に長く塗るのが基本です。痒みが治まってもか月ぐらいは使いつづけたほうが、より効果が高まります。治ったと思っても、夏になるとぶり返す人は特に、ここでやめずにもうひと踏ん張り塗りつづけるといいでしょう。

ところで前述した「ラミシールプラス」や「ブテナロック」はよく効くのですが、ドラッグストアでは2000円前後とそれなりに高価です。1本使って症状が治まったとしたら、続けて2本、3本と買うのは、ちょっとためらいが生じるかもしれない価格帯ですね。しかし、繰り返しますが痒みが消えた段階で、もうひと押し、塗りつづけるのがベターな選択です。

値段が気になる場合、ドラッグストアには1000円前後の価格帯の水虫薬も売っています。効き目はテルビナフィン塩酸塩やブテナフィン塩酸塩を使った薬より下回るかもしれませんが、これらの主成分も抗真菌剤であり、かゆみ止め成分が入っています。この価格なら迷うことなく2本、3本と買えて、長期間、広範囲にわたって塗りつづけることができ、結果的に白癬菌をしっかり退治できるかもしれません。このように市販薬を選ぶ際は、価格と効果を見比べて選んでください。

カサカサ水虫、角質ポロポロにも注意

水虫だと気づかずに放置される症状のひとつに、踵の角化症があります。踵がカサカサしてひび割れている、角質がポロポロ剥がれるような状態です。特に痒みがないので放置されがちです。しかし、前回ご説明したように白癬菌のえさは角質のケラチンですから、これも往々にして白癬菌による水虫であることがあります。痒みがなくても、その角質ポロポロが白癬菌をまき散らしていることになります。他者にうつれば、それは痒い水虫になるおそれも十分あります。踵に限らず、足の裏がカサカサ、角質ポロポロしている方も同様です。

ちなみに、冬場になると踵がカサカサになる、ひび割れるという方が、特に女性によく見られます。この場合は水虫かどうかわかりませんので、とりあえず尿素配合クリームなどを塗って様子を見てみましょう。それで改善し、夏場になって再発しないならそれは水虫ではありません。もっとも水虫か単なる角化症か、自分では判断できないものも多いので、少し長引くなと思ったら、皮膚科で診てもらいましょう。

角質ポロポロの水虫の場合も、足の裏全体に水虫薬を塗布するようにしてください。相当量になり、1本あっという間に使い切ってしまうかもしれませんね。

爪水虫には市販薬なし

もうひとつ注意が必要な症状は、爪の中に白癬菌が入り込んでしまった爪水虫です。爪の中には薬が塗布できませんよね。抗真菌剤の内服薬が必要ですが、これにはまだ市販薬がなく、皮膚科で処方してもらう必要があります。白癬菌が爪の奥深くに浸透しているので、爪が生え変わるまで数か月、飲みつづけることになるでしょう。これも痒くないから、痛みがないからと、自己判断で服用を中断すると、いつまで経っても治りません。

爪水虫も、原因は同じ水虫と同じ白癬菌ですから人にうつります。夫から妻にうつる、というのはよく聞く話です。同じ床の上を歩き、同じバスマットを使っていればいつかは……となりますよね。家族にうつさないためにも、きちんと治しておきたいものです。

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)

薬剤師、栄養学博士。一般社団法人国際感食協会理事長。健康オンラインサロン「豆の木クラブ」主宰。薬剤師として医療現場に立つ中で、薬の処方や飲み方に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」をめざす。薬漬けだった自らも健康を取り戻した。現在は、栄養学や運動生理学の知識も生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に薬に頼らない健康法をイベントや講座で多くの人に伝えている。近著に『血圧を下げるのに降圧剤はいらない: 薬を使わない薬剤師が教える』(河出書房新社)。

 

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