ついに出会った、理想を絵に描いたような1台!

23歳の時に購入し7年間、幾度ものトラブルを共に乗り越えたSJ30ですが、ついに別れの時が訪れます。

出先でエンジンが止まり、どうにも再始動ができなくなったSJ30。JAFを呼び、最寄りのスズキ&スバルのディーラーに搬入してもらいます。そこでメカニックより「もう部品がなく、どこのディーラーでも修理のしようがない」との廃車宣言を受け、SJ30はそのまま帰らぬクルマとなりました……。

SJ30の廃車手続きを終えた後、哲也さんは気を取り直して次のクルマの選定を行います。望む条件は軽便でどこにでも行け、ある程度の荷物を載せることができること。その上で気に入ったスタイルを持つクルマを調べ、スズキの4代目『セルボモード』と、やはりスズキの初代『ワゴンR』の2台に候補をしぼります。

はじめてローンで購入したワゴンR。その金利の高さに驚いたそう。以降のクルマはお金を貯めてから一括の支払いで購入しています。

はじめてローンで購入したワゴンR。その金利の高さに驚いたそう。以降のクルマはお金を貯めてから一括の支払いで購入しています。

「セルボモードとワゴンR、どっちも甲乙付けがたいスタイルだったのですが……。最終的にコラムシフトAT(オートマチックトランスミッション)や前席ベンチシートといった、先進的な装備を持ったワゴンRを選びました。ガタガタなジムニーからの乗り換えですから、どんなクルマだって乗り心地良く感じてしまいますけど、それを踏まえた上で、乗り心地良く快適なクルマでした」

急な上り坂が苦手という欠点こそありましたが、取材仕事に趣味の釣りにと、ワゴンRは道を選ばず走り、公私に渡って哲也さんの相方を勤めます。そして3度目の車検の際、哲也さんは気になっていたクルマに乗り換えるため、ワゴンRを下取りに出します。

「2002年に催されたパリモーターショーで、スズキは『コンセプトS』というコンパクトハッチバックを出品しました。翌年の東京モーターショーでは改良された『コンセプトS2』が出品され、実際に見て「いいスタイルだな、このまま市販されたら乗りたいな」って思っていたんです。そしたら(2代目)『スイフト』が、コンセプトS2とほとんど変わらないスタイルで発売されました。ワゴンRのパワーに物足りなさを感じていたこともあって、乗り換えを決めました」

ボディカラー選択の際には「40歳を目の前にして、黄色(チャンピオンイエロー)は落ち着きがなさすぎるかも……」と悩んだそう。

ボディカラー選択の際には「40歳を目の前にして、黄色(チャンピオンイエロー)は落ち着きがなさすぎるかも……」と悩んだそう。

スイフトの全グレード中、高性能な“スイスポ”こと『スイフトスポーツ(形式:ZC31S)』を、哲也さんは迷わず選択します。

「アクセルを踏んだだけ加速する、本当に乗っていて楽しいクルマです。それとスイフトスポーツに乗り始めてから、色々な会社や編集部からクルマに関わるマンガの執筆依頼がありました。それだけ世間から注目されているクルマで、スイフトスポーツを語る私がはしゃいでいたのでしょうね」

昼夜を問わず、積極的に時間を見つけてはスイフトスポーツに乗って出かける哲也さん。程なくして新型のスイフトとスイフトスポーツが発表され、3度目の車検を機に新型への乗り換えを検討します。

「乗っていたスイフトスポーツ(ZC31S)に不満らしい不満は無かったのですが、納車から数日で「これはMT(マニュアルトランスミッション)で乗らなければいけないクルマだ」と感じていたんです。まだまだ乗れる状態なので悩みに悩みましたが……。MTの魅力と下取り価格が良かったことが後押しになり、乗り換えを決めました」

新しいスイフトスポーツでも、ボディカラーにチャンピオンイエローを選択します。

新しいスイフトスポーツでも、ボディカラーにチャンピオンイエローを選択します。

乗り換えた新型スイフトスポーツ(形式:ZC32S)は、ZC31Sと比べて“走る”、“止まる”、“曲がる”と、あらゆる点で進化を果たしていました。またMTがもたらす「ドライバーとクルマとが繋がる感触」は、哲也さんの想像を越えた楽しさを与えてくれ、驚きと感動から「これこれっ!」と叫んでしまったそうです。

「まさに探し求めていた理想の一台でした。ZC31Sと同様に、不満らしい不満はありません。あるとすれば、日本の税制で1600ccという排気量が1ランク高いクラスに入ることですが……。スイフトスポーツと過ごせる幸せの前では、些末なことです」

近年では様々な雑誌やWebメディアにて、マンガを通じて、それぞれのクルマの持つ特徴や楽しさを伝えるといった仕事をされる哲也さん。読者から「マンガを見て購入を決めた」との報告を受けることもあり、その際は「マンガを描いてよかった」と、この上ない嬉しさを感じるそうです。

「こうして過去の愛車を思い返すと、あの時の自分が何を考え、どのような人と付き合い、どういう生活をしていたかも一緒に思い出しますね。クルマは私にとって、生き方のモノサシといったところでしょうか」

取材に趣味に、今日も哲也さんは笑顔を浮かべながらスイフトスポーツのステアリングを握ります。

取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ゲーム雑誌の編集者からライターに転向し、自動車やゴルフ、自然科学等、多岐に渡るジャンルで活動する。またティーン向けノベルや児童書の執筆も手がける。

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