織田信長(演・染谷将太)に嫁いで以来、日毎に存在感を増す帰蝶(演・川口春奈)。病床にあった義父・信秀(演・高橋克典)とのやり取りが話題を集めた。
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ライターI(以下I):前回第12話で義父・信秀(演・高橋克典)と帰蝶のやり取りの場面が話題を集めました。信秀が何か言っているのですが、聞き取れない。それでも帰蝶から信長に〈わしの若いころに瓜ふたつじゃ。良いところも悪いところも〉などと話した上で、〈尾張は任せる〉とその“遺言”を伝えるという展開でした。
編集者A(以下A): 〈女軍師・帰蝶〉誕生の瞬間と感じました。今後ますます織田家の中で活躍していくのではないでしょうか。
I: 女軍師って・・・・・・、それは持ち上げ過ぎではないですか?
A: いえ、そんなことはありません。13話から17話までは疾風怒濤の展開で文字通り目が離せない流れになっています。その中で帰蝶はますます重要な局面で登場しますし、それが全く違和感ない。ある人は気高き女王様然とした雰囲気に息をのむかもしれません。ある人は緊迫したやり取りに心打たれるかもしれない。あるいはその凛とした表情に心を鷲掴みされる人が続出するかもしれません。いずれにしても後々語り継がれるような名場面が何度となく登場してくると思います。
I:マムシの娘の真骨頂発揮というわけですね。それなら〈女軍師〉の称号もありかも。かわいらしい川口春奈さんとのギャップも受けるかもしれません。
A: 信長は実母の土田御前(演・壇れい)に冷たくされたことでコンプレックスを抱えていたといわれていますが、帰蝶など女性たちとの関係でコンプレックスが解消されていくという設定なのではと感じます。
I:『麒麟がくる』では、鉄砲がキーアイテムとして登場します。第9話では信長に鉄砲を教わる帰蝶の場面がありました。実は帰蝶を演じる川口春奈さんと鉄砲には不思議な縁があるともいわれていますが・・・・・・・・。
A: 川口春奈さんといえば、長崎県の五島列島の福江島(五島市)の出身ですが、福江島には、日本に鉄砲をもたらした人物の関連史跡がのこされていることが知られています。
I: 明国の商人・王直のことですか?
A: はい。種子島に鉄砲がもたらされた時に、ポルトガル船に同乗して先導していたといわれる人物です。当時の日本人は、鉄砲の構造を見てすぐさま自分たちで製造できるだけの知見と技術力がありましたが、弾は自前では作ることができませんでした。原料となる硝石がなかったからです。王直は硝石の交易にも関与していたともいわれる商人ですが、一時、福江に居を構えていたことがあり、明人堂や六角井戸などの史跡が残されています。
I:鉄砲がキーアイテムとして頻繁に登場する大河ドラマに王直ゆかりの福江島出身の川口春奈さんが主要キャストとして出演していることは、何かの縁を感じますね。五島市といえば、五島うどんやかんころ餅などが有名です。川口さんが今度帰省したタイミングでYouTubeで王直ゆかりの史跡と併せて紹介してほしいですね。
A: 今はなかなか難しいかもしれませんが、ゆくゆくは期待したいです。
信長の「で、あるか」は道三との会見で飛び出した
I: さて、『麒麟がくる』の信長と帰蝶が視聴者に好評をもって受け入れられているようですが、1973年の『国盗り物語』はどんな感じで描かれていたのでしょうか。
A: 松坂慶子演じる帰蝶が高橋英樹演じる信長に膝枕をするシーンが印象的です。『麒麟がくる』の膝枕シーンと比較するような番組も制作してほしいですね。
I: 今後、『麒麟がくる』でも道三と信長の聖徳寺での会見が展開されると思います。 『国盗り物語』の時は、『信長公記』通りの描かれ方だったと思います。平幹二郎さん演じる斎藤道三を紹介すると、信長が「で、あるか」とひきとったという有名なエピソードですね。「で、あるか」という信長の有名な言い回しは、この道三との会見が初出なんですね。 この言い回しは反町隆史さんが信長を演じた『利家とまつ』(2002年)でも多用していました。
A: 懐かしいですね、反町信長。でも、『麒麟がくる』ではそのセリフ、出てきますかね? それよりも私は〈女軍師・帰蝶〉がどのような役回りで登場するのかに注目したいと思います。
I: どんな設定で、それを川口春奈さんがどう演じるのか、なんだかワクワクしますね。
●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』も好評発売中。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり