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光秀(演・長谷川博己)、秀吉(藤吉郎/演・佐々木蔵之介)という優秀な家臣の働きで天下を目指すことになる信長(演・染谷将太)。

日曜夜の話題を『半沢直樹』が席巻する中、11週間の休止を経て『麒麟がくる』が8月30日に放送再開される。歴史の舞台に光秀が登場するスリリングな展開になることが予想されるが、果たして日曜夜の話題を『半沢直樹』から奪回できるのか!?

* * *

ライターI(以下I):いよいよ来週『麒麟がくる』が再開されます。前代未聞の11週の休止期間を経ての再開です。

編集者A(以下A):待ちにまったという人が圧倒的でしょうが、関係者は視聴者が戻ってくるか気が気でないでしょう。

I:そんな中、8月14日には後半戦の新キャストの一部として、正親町(おおぎまち)天皇、今井宗久、摂津晴門(せっつ・はるかど)、覚恕法親王(かくじょほっしんのう)、筒井順慶、二条晴良、朝倉景鏡(かげあきら)、お市、浅井長政、足利義栄の配役が発表されましたね。

A:はい。ネットニュースで知りました。戦国の荒波に翻弄された室町幕府第14代将軍・足利義栄が登場するとは感慨深いです。彼は義輝、義昭の従兄弟にあたる人物なんですけどね。

I:この後、義輝・義昭の血脈は公式には残りませんでしたが、義栄の弟の流れが阿波徳島藩で〈平島公方家〉として続きます。

A:八幡太郎義家以来の源氏の名門足利家(足利家の家祖・義国は義家の四男)ではありますが、平島公方家は徳島藩で冷遇されたようです。そんなに登場場面は多くないとは思いますが、足利義栄のシーンを見た後に、足利将軍家唯一の生き残り家系だった平島公方家の行く末にも思いを馳せてほしいですね。

I:少し脱線してしまいました。来週からいよいよ後半戦が始まります。前半戦はその大半を美濃編に割かれたわけですが、同じような構成の『国盗り物語』(1973年)では桶狭間の戦いは第20話でした。

A:『国盗り物語』は全51話ですから、全44話予定の『麒麟がくる』とは単純に比較はできないですが、『国盗り物語』では、第26話で〈上洛〉の回が描かれました。越前攻めが第29話、叡山焼き討ちが34話、小谷落城が38話でした。

I:『麒麟がくる』の最終回が予定されている44話は『国盗り物語』では〈村重謀叛〉。荒木村重の謀叛の回でした。

A:天正6年ですから本能寺の変4年前ですね。村重嫡男の村次には光秀の娘が嫁いでいますから、『麒麟がくる』でもトピックになるんでしょうね。

I:Aさん、なんか、今回はテンションが低いですね?

A:いや、冒頭で新キャストについて触れましたが、しばらく〈京都伏魔殿〉編と命名されたシリーズが展開されるようです。二条晴良や摂津晴門、正親町天皇などがキャスティングされているのは本来喜ばしいことなのですが、京都の公家は魑魅魍魎の世界ですし、そこに中途半端に足を踏み入れると、なんだかよくわからなくなるのが心配です。もちろんこれまでも京都の難しい情勢を伊平次に語らせるなど、〈そう来たか!〉という演出があったので、そこは期待したいのですが、その一方で、これはもう44話では収まりきらないのではという不安に襲われているのですよ。

I:Aさんが不安になることはないのではないですか?

A:いえ、今年は名作大河『太平記』(1991年)を手がけた池端俊策さんが脚本を書かれるということ、明智光秀が初めて主人公となり、これまでの信長目線からの本能寺の変ではなくて光秀目線の本能寺が描かれるということで、例年以上に期待をして作品と向き合ってきました。作品のファンとしては、光秀が本能寺の変に至るまでの心情変化やその背景はしっかり描いてほしいと思っています。最後の最後にがっかりしたくはないので、やはり44話では足りないのではないかと今週も指摘したいと思います。

光秀が信長の無限の可能性に確信を感じたあたりで放送休止になっている『麒麟がくる』。

光秀と秀吉の関係はどこまで描かれるのか?

I:なるほど。それは多くの視聴者が同じような思いでいるのではないでしょうか。さて、前回、ポイントはある戦国武将がキャスティングされるか否かにかかっているという話をしていました。

A:今年の元日にNHK BS1で『本能寺の変サミット』という番組が放映されました。本能寺の変の動機についてのあらゆる説について、7人の専門家が検証するという構成でした。その中でもっとも多くの専門家が首肯したのが「本能寺の変 四国説」でした。

I:四国の長宗我部元親をめぐる問題ですね。当初信長は元親に〈四国は切り取り次第〉というお墨付きを与えていました。光秀は元親の取次役を務めていましたが、信長は急に梯子を外して秀吉派の三好康長に資する裁定を行ない、四国攻めを決めたという話ですよね。

А:簡単にいうとそうなります。面子を潰された光秀が織田軍の四国攻め予定日に信長を討ったという流れです。もちろんその前段もあって、光秀が苦労して攻略した丹波からの国替えの話があり、対毛利政策でも光秀の融和策が反故にされ、秀吉の強硬策が採用されるなど、たまりにたまった不満が四国問題で沸点に達したというのが広義の四国説といわれています。

I:Aさんは、『麒麟がくる』でも四国問題が採用されると予想しているのですか?

А:だって、BSとはいえ、お正月のNHKの番組で四国問題が肯定的に取り上げられたわけですから、そうなるのではと予想していました。

I:でもBSの番組と大河がNHK内で連携しているとも思えないですが……。

A:それで、長宗我部元親がキャスティングされるか否かにかかっていると考えたわけです。今回発表された新キャストには入っていませんでしたが。

I:なるほど。

A:光秀は本能寺の変後には足利義昭を京都に復帰させ、娘婿の細川忠興を管領に任ずる構想を持っていたともいわれています。信長を討った後の戦略も、北陸に展開していた柴田勝家軍が当面の敵と認識して対策を講じていました。

I:そうした準備をすべて覆したのが、秀吉の中国大返しだったわけですね。それだけ秀吉の動きは予想外で、光秀にとっては誤算だったというわけですね。

A:番組再開にあたっての番宣でも「のちの宿敵 豊臣秀吉」とテロップされていますが、最初から〈宿敵〉だったわけではありません。初めは織田家中で出世を競い合う〈好敵手〉だった。その関係を〈敵〉にしてしまったのが信長で、そのオペレーションが信長自身の命運を左右することになったわけです。後半戦、秀吉と光秀の関係がどう描かれるのか、 制作陣の決断力が問われる個所ですから注視していきたいと思います。

I:側室に生ませた男子がいることを帰蝶に告げる場面でも悪びれた様子がありませんでした。他人の気持ちを慮(おもんばか)ることができない信長に律儀でまじめな光秀が我慢できなくなったんですかね。

A:そんなところかもしれません。加えて、『麒麟がくる』では、光秀と浅からぬ関係であることが描かれる細川藤孝、忠興父子が本能寺の変の後に味方になってもらえなかった。そうした光秀の悲劇も描いてほしいですね。いずれにしても日曜夜の話題を『半沢直樹』から奪回するくらいのパワーを見せてくれると期待しています。

後半、信長のもとで光秀の強大なライバルに成長していく藤吉郎。

●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』(藤田達生著)も好評発売中。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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