藤吉郎登場シーンにも菊丸が絡む。何かの伏線なのか?(第14回より)

「麒麟がくる」再開まであと2週。後半戦の見どころを考えれば考えるほど、やっぱり尺が足りないのでは? という現実が突きつけられる――。

* * *

ライターI(以下I):『麒麟がくる』再開まであと2週になりました。気になるのは、最終回がいつになるのかまだ発表されていないことです。

編集者A(以下A):全44話という総話数は決まっているわけですから、最終回もいつになるか決まっていていいはずなのですが……。

I:当欄では、後半戦の尺が足りなくなるんじゃないかということで、総話数を増やしてほしいと、NHKの大英断を期待する旨、主張してきました。それに向けて調整しているのではないかと受け止めたいです(笑)。

A:新型コロナ禍の中での撮影は大変な作業だと思います。繰り返しになりますが、かつて『太閤記』(1965年)では視聴者の声が殺到したことを受けて、織田信長(当時の演者・高橋幸治)の出番が2か月延びたという故事があります。今回も総話数増を望む視聴者の声が殺到すればと思っているのですが。

I:期待して推移を見守りたいと思います。さて、後半戦に向けての総集編も第二回目を迎えるわけですが、前回、菊丸(演・岡村隆史)が後半戦の大キーマンになると大風呂敷を広げましたが、総集編では、光秀と松平竹千代が出会うシーンに登場のみでした。

A:もっと登場するかと思いましたが、総集編の展開が予想以上にスピーディだったのでしょうがないです。織田信長(演・染谷将太)の初登場場面には光秀を案内した菊丸がいたはずなんですが、画面に出て来なかったですね。

I:その場面に菊丸が登場していたら、本能寺の変に徳川家康が絡んでくる設定になるかもしれないと予想していたのが見事に外れてしまいましたね(笑)。

A:菊丸がやがて服部半蔵になるのではと考える視聴者もいるようですから、今後も菊丸には注目ですね。さて、今回は織田信長と帰蝶(演・川口春奈)に注目したいと思います。

I:ふたりの祝言を信長がすっぽかすという〈事件〉が勃発したのが衝撃的でした。

A:信長が松平竹千代の父広忠(演・浅利陽介)の暗殺に関与していて、祝言をすっぽかしたという展開だったんですよね。菊丸が首のない広忠の亡骸(なきがら)から脇差を取り出して、水野信元、於大兄妹に届けるという設定でした。

I:菊丸の正体は忍びだったというのがわかった衝撃的な場面でした。この広忠暗殺で信長は、父信秀にほめてもらえると思っていたのに、叱責されてしまう。ここで母土田御前(演・壇れい)に対する積もり積もった思いをぶちまけます。心に響くシーンでした。

A: 信長はカインコンプレックスだったという(『信長全史』での影山任佐東工大名誉教授の分析)説を踏襲しているかのようでしたね。

I:その信長を癒す存在が帰蝶。帰蝶は信長を癒すだけでなく〈女軍師〉としても躍動しています。

A:〈女軍師〉として凄かったのは、信長と斎藤道三(演・本木雅弘)の聖徳寺会見の際に伊呂波太夫(演・尾野真千子)にすごんだシーンですかね。ゾクゾクしながらみた人が多かったのではないでしょうか。

〈女軍師・帰蝶〉は後半戦も活躍するのか?

「父上と私の戦じゃ!」そう言って父斎藤道三(演・本木雅弘)と夫織田信長(演・染谷将太)との会見に際し一計を講じた川口春奈演じる帰蝶。(第13話より)

I:私は帰蝶と伊呂波太夫が後半戦のキーマンになると予想していますが、Aさんは、足利義昭(演・滝藤賢一)と近衛前久(演・本郷奏多)に注目しているんですよね? 破天荒関白として知られる近衛前久が『麒麟がくる』では伊呂波太夫と親密な関係という設定なわけですから、〈帰蝶―伊呂波太夫―近衛前久〉という絡みが出てくるのかもしれませんね。

A:〈女軍師・帰蝶〉が後半戦も活躍するというのであれば、そうした場面も出てくるのかもしれません。その〈女軍師〉の場面が今週の総集編でどのくらい採用されるのか注目です。後半戦は足利義昭と信長の関係、光秀と義昭の関係など注目ポイントが多すぎて、考えれば考えるほど全44話で収まるのか心配になりますね。

I:確かに、休止前の第21話の段階では、藤吉郎と信長の出会いすらまだ描かれていないですからね。心配する気持ちもわかります。

A:前半戦の21話が、天文16年(1547)から桶狭間合戦の永禄3年(1560)の13年間を描いています。後半戦はそこから本能寺の変→山崎の戦いのあった天正10年(1582)までの22年間を23話で描くわけですから……。

I: 後半戦の方が、光秀が活躍する場面が増えますし、本能寺の変に向けての光秀の心情変化などもしっかり描いてほしいです。さらに、せっかく松永久秀(演・吉田鋼太郎)が登場しているわけですから、久秀がどのように信長に仕えることになったのか、なぜ裏切ったのか? 最初の裏切りをなぜ信長が許したのか、そして再び久秀が裏切ったのはなぜなのか? しっかり描いてほしいと希望します。

A:確かにその部分を描くことで、光秀の謀反に至る理由が見えてくる可能性もありますよね。私は個人的には、久秀の最期は平蜘蛛の茶釜に火薬を詰めての爆死の展開を期待したいです。吉田鋼太郎さんがその場面をどう演じるのか、考えただけでもわくわくします。

I:『麒麟がくる』は合戦場面などでわりと史実に忠実な印象もありますが、ここは緩急をつけて華々しい最期を見せてほしいですね。さて、後半戦のポイントはやはり、光秀と秀吉(演・佐々木蔵之介)の出世競争だと思います。

A:総集編第1回では、光秀が四書五経を2年ですべて暗記したことを斎藤道三(演・本木雅弘)に語らせているシーンがありました。一方の秀吉は初登場の際には、『徒然草』を手に持ちながら、読めない字があるという設定でした。

I:四書五経に通じた光秀と読めない字がある藤吉郎。このふたりが織田家中で出世を争うわけですから面白いんですよね。

A:それぞれの出世の過程で、両者はそれぞれ派閥を形成していきます。派閥は得てして運命共同体になっていきます。光秀と秀吉両者が派閥の生き残りをかけてしのぎを削っていたとしたら……。

I:ぞくぞくします。これまでの大河ドラマで描かれた本能寺の変とはひと味違う内容になりそうですね。

A:『麒麟がくる』ではどのような展開になっていくのかまだわかっていません。ポイントは、これまで大河ドラマに登場したことがないある有名戦国武将がキャスティングされるか否かにかかっていると推測します。

I:その戦国武将とは? 

A:それについては、次回にじっくり話したいと思います。まずは『麒麟がくる』の総集編に注目です。どのシーンが採用され、どの場面がカットされたか――。そこになんらかのヒントが込められているかもしれませんから。

〈女軍師〉的存在の帰蝶に多額の金を積まれて動く伊呂波大夫(演・尾野真千子)。近衛前久(演・本郷奏太)とも親しく、今後もさらなる暗躍が期待される。

●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』(藤田達生著)も好評発売中。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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