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信長(演・染谷将太)の天下への役進撃がいよいよ始まったばかりというところで放送休止中の『麒麟がくる』(第21回より)。
これからの濃密な10年をどう描くのか期待が高まる。

『麒麟がくる』休止も前代未聞の6週目に突入! 今週も「いくらなんでも忘れてしまう!」とならないように、本能寺の変勃発までの10年間の軌跡を追う――。

* * *

ライターI(以下I):前回は桶狭間の戦いから12年間のトピックスを取り上げて、『麒麟がくる』の後半戦は尺が足りなくなるのではないかという話題を展開しました。

編集者A(以下A):桶狭間から本能寺の変まで22年の歳月が流れているのに対して、『麒麟がくる』の残り話数は23話。本当に尺が足りるのか? ということでした。

I:前回は本能寺の変まで残り10年までの話をしました。今週は本能寺の変までの10年について話をしたいと思います。

A:『麒麟がくる』序盤では、光秀(演・長谷川博己)と細川藤孝(演・眞島秀和)、三淵藤英(演・谷原章介)との絡みが印象的に描かれました。両者が仕える将軍足利義輝(演・向井理)と光秀の間で、〈麒麟〉とは何かというドラマの根幹にかかわるやり取りも交わされています。このあたりは後半戦の鍵にもなろうかと思います。

I:なるほど。その件は後段でやり取りするとして、まずは、本能寺の変(天正10年=1582)までの10年間について語り合いたいと思います。スタートは元亀3年(1572)を設定してみます。

A:将軍足利義昭が全国の大名に号令して画策した〈信長包囲網〉がうまくいっていた時期ですかね。元亀3年の年末には、三方ヶ原の戦いで織田・徳川連合軍が武田信玄に大敗しています。

I:将軍義昭は三方ヶ原勝利の報に欣喜雀躍だったでしょうね。天正元年2月(1573)にいよいよ挙兵します。

A:信長最大の危機でしたが、なんと武田信玄が病を得て西上作戦を急遽取りやめて甲斐に帰る途上、伊那の根羽村で亡くなってしまいます。それが元亀4年4月になります(元亀は4年7月28日に天正に改元)。義昭にしてみれば痛恨の出来事だったでしょう。

I:信玄の死で〈信長包囲網の瓦解〉していくことになります。信長は天正元年に将軍義昭を追放するんですよね。

A:これまで教科書などではこれにて室町幕府が滅亡したとされてきましたが、実はこれ以降も義昭は現職の征夷大将軍であり続けます。後に備前の鞆の浦(広島県福山市)に移ったことから、〈鞆幕府〉と称される御所で活動を続けます。

I:三重大学の藤田達生教授が古くから唱えている問題ですね。

A:はい。『麒麟がくる』で脚本を担当している池端俊策さんは、『太平記』(1991年)で室町幕府の最初を描いたので『麒麟がくる』では室町幕府の最後を描きたい、という趣旨の話をしていました。将軍義輝が頻繁に登場していたのにはそうした背景があります。だとすれば義輝の弟で室町幕府最後の将軍義昭の動向もしっかり描かれるとみています。

I: 鞆での義昭の動向も登場してくるというわけですね。

A:そうなると睨んでいたのですが、先週、後半戦はトピックスが目白押しで〈尺が足りるのか?〉という問題を指摘しました。今は、そこまで描かれるのか不安を覚えています。

I:NHK出版から出ている公式ガイド本『麒麟がくる 後編』に記載されている〈あらすじ〉では第28話で足利義昭が三好一党から襲われる本圀寺の戦い(永禄12年/1569)が描かれる予定になっています。

A:う~ん。第28話で本圀寺とは……。本当に44話で間に合うのでしょうか。天正に入ってからも長篠の戦い(天正2年/1575)があります。光秀は同時期に丹波攻略を開始しますが、『麒麟がくる』では、序盤で光秀と鉄砲がキーアイテムとして登場していますから、長篠の戦いにも絡んでくるのかなあと思っていましたが・・・・・・。

I:〈女軍師・帰蝶〉が絡んでくるのかもしれませんね。信長に鉄砲を教わるシーンはすでに第9話で登場済みですから。

好奇心旺盛な帰蝶が信長から鉄砲の撃ち方を教わる(第9回)。後々の帰蝶の活躍を暗示??

光秀の業績はどこまで描かれるのか?

A:信長といえば、安土城ですが、元亀2年には光秀は坂本城の築城を開始しています。かなり豪壮な城だったことをルイス・フロイスが記していますが、これはトピックスになると思います。安土城は、天正4年築城開始、7年完成ですから、坂本城の方が先駆けだったわけです。

I:坂本城もそうですし、 光秀といえば、丹波攻略が大きな業績になります。どこまで描かれるんですかね?

A:光秀は丹波攻略に並々ならぬ決意で臨んでいます。光秀主人公のドラマでここを端折れば、後段、近江・丹波から石見・出雲への「国替え指令」の衝撃は理解できなくなる恐れもありますよね。

I:そうですよね。さらに序盤戦で何度も登場して爪痕を残している松永久秀(演・吉田鋼太郎)が信長に反逆して〈爆死〉するのは天正5年(1577)です。久秀攻めには光秀も細川藤孝も参加しています。

A:序盤のなんだか楽しそうな〈戦国青春群像劇〉からの流れになるのですが、視聴者は大きな関心を寄せていると思われます。現段階ではまだ松永久秀が信長配下にもなっていませんが(笑)。さらに天正3年に光秀は〈惟任(これとう)〉の姓と〈日向守〉の官途を信長から与えられています。

I:藤吉郎秀吉の〈羽柴〉〈筑前守〉と対になるんですね。織田家中の出世をふたりで争っているわけです。『麒麟がくる』では、藤吉郎(演・佐々木蔵之介)登場時に『徒然草』片手に文字を学習していました。そのときすでに『四書五経』に通じていた光秀との教養格差が強調された場面でしたが、その藤吉郎が織田家中でグングン出世する。浪人生活を経て信長に仕え、これまた出世する光秀ですが、いつの間にか秀吉が最大のライバルになっていたということですね。

A:天正6年には光秀息女玉子(後の細川ガラシャ)が細川藤孝子息・忠興に嫁いでいます。序盤戦の絡み、本能寺前後の絡みを考えると、この婚姻はきちんと描かれるのではないでしょうか。同じ年には荒木村重も信長に謀反を起こします。

I:トピックス盛りだくさんですね。光秀関連でいっても丹波を攻略して絶頂の時を迎えるのが天正8年。天正9年には京都での馬揃えを監督しています。

A:馬揃えは『江 姫たちの戦国』(2009年)でしっかりと描かれていました。美術スタッフの方々の真骨頂発揮の場面でした。今回は描かれるんでしょうか? 安土城も再現されるのか。気がかりでしょうがありません。

光秀 絶頂からの転落

I:徳川家康関連でいえば、天正7年に家康嫡男・信康が切腹します。

A:この事件は従来、信長の命で切腹したことになっていますが、近年さまざまな説が出ているようです。『麒麟がくる』でどう描かれるのか、描かれないのか注目していきたいです。

I:描かれるなら菊丸(演・岡村隆史)が絡んでくるかもしれませんね。

A:なるほど。菊丸が絡んでくると見立てるわけですね……。『太平記』では大地康男さん演じる尊氏側近の一色右馬介(オリジナルキャラ)が後半で足利直冬に斬られます。幼いころに面倒を見ていたにもかかわらずです。なんか菊丸の影に一色右馬介の姿が浮かんで見えました。

I:また、そんな根拠もない妄想をいう。NHKに怒られますよ。

A:………。

I:その家康を光秀が安土で饗応するのが、天正9年です。幼いころに織田家で出会い、駿河で再会する。共通の知人として菊丸という存在がいる。このふたりの関係は怪しいといえば怪しい。

A:本能寺の変ということですか?それはどうですかね。ただ気になるのは斎藤利三の存在ですかね。斎藤利三は光秀重臣として本能寺の変にも密接にかかわってくるのですが、彼はもともと美濃の稲葉良通(演・村田雄浩)の家臣。引き抜いたわけですが、その経緯が描かれるかどうか。

I:きっと描かれませんね。先週から何度もいう通り尺が足りない(笑)。しかも、まだ武田氏攻めもありますからね。本能寺の変絡みでいうと、近年注目を浴びて、今年元日に放映された「本能寺の変サミット」(NHK BSプレミアム)で大きな支持を受けた「四国説」が『麒麟がくる』で登場するのかどうかという問題もあります。

A:長宗我部元親がキャスティングされるかどうかですね。今のところ全くわかりませんが。

I:光秀が取次役を務めていた長宗我部元親ですね。当初光秀側の意見を採用していた信長が突如、梯子を外して秀吉側の意見を採用したという。この四国政策の変換が、絶頂のときを迎えていた光秀を一気に転落させることになります。

A:現代の会社で同じことをやられたら、ぶちぎれるレベルの話ですね。その間の流れは『明智光秀伝』で藤田達生先生が詳述しています。

I:冒頭で細川藤孝の話題がありました。若いころから光秀と懇意にしていて、娘の嫁ぎ先でもある。本能寺の変の後、光秀は絶対味方になってくれると信じて疑わなかったのではないでしょうか。

A:ところが、その細川家が光秀に味方をしないわけです。これは大きな誤算だったと思います。

I:いったい何があったのですかね?

A:これは単なる憶測で、史料的背景はないですが、細川藤孝は秀吉に通じていたのではないかなあと。光秀からすれば「いつの間に秀吉と!」 という展開だったのではと思います。

I: 細川藤孝が秀吉に通じていたかどうかはわかりませんが、人たらしの秀吉がどのように立ち回ったのか『麒麟がくる』でも描かれるかもしれませんね。関白・近衛前久(演・本郷奏多)との絡みが出てくることを期待したいですね。

A:脚本に加えて演出力が試されるシーンになりそうです。

I:そのためには現状予定の44話ではやはり足りないような気がしませんか?  先週の記事へ寄せられた読者の声も同様の意見が多かったです。NHKの大英断に期待ですね。

まだ信長に出会ってもいない藤吉郎こと後の秀吉(左/演・佐々木蔵之介)は、今後、光秀最大のライバルに成長する。菊丸(中/演・岡本隆史)やお駒(右/演・門脇麦)といった架空のキャラクターが史実にどう絡んでくるかも楽しみだ。(第14回より)

●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』(藤田達生著)も好評発売中。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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