憔悴する誰袖を演じる福原遥さん。(C)NHK

ライターI(以下I):大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(以下『べらぼう』でも描かれている吉原の妓楼「大文字屋」の花魁誰袖(演・福原遥)は、史実上でも実在の人物です。劇中で幾度も登場する「吉原細見」にもその名がありますが、天明4年(1784)の細見からは、名前が見られなくなります。

編集者A(以下A):細見から名前がなくなったのは、劇中で描かれたように身請けされたからです。誰袖という女郎がいて、花魁までのぼりつめ、身請けされる。誰袖の人生をごくごく簡略に記すとそうなります。その出身地などはわかっていませんが、当時の吉原の女郎のほとんどがそうだったように、貧しい実家を助けるために吉原にきたのだと思います。

I:物語の前半で「振袖新造(見習い女郎)のかおり」として、「蔦重のことが好き!」というキャラクターだったのが印象深いです。さて、その誰袖を演じた福原遥さんの取材会が行なわれました。初めての時代劇で難しい役。花魁を演じるにあたって準備したことについて語ってくれました。

作品をいろいろと見させていただいたり、お稽古で、花魁特有の胸を使う、軸をずらさないようにしながら、柔らかくしなやかに見せることを心掛けたりしながら日常を過ごしました。軸というのがすごく難しくて、自分が思っている動きが、実際に演じてその映像を見てみると、ぜんぜんしなやかな動きができていなかったので、本当に苦戦しながら、先生に教えていただきながら、収録中もぎりぎりまで練習しました。花魁道中もそうですし、たくさん練習して演じさせていただきました。

I:実際の映像を見ると、本当に自然にかわいらしい花魁を演じられていて、こうした努力があったことを知ると、より一層、誰袖が愛おしくなりますね。

所作の先生から、少し首をかしげるとか、胸を前に出すなど、ちょっとした所作から色っぽさを出すことができるといったことを教えていただきました。セリフのテンポ感、間の開け方など、ゆったり話したら色っぽさが出るかなとか、いろいろ教えてもらいながら演じました。こんな素敵な誰袖を演じさせていただいて、ほんとうにうれしかったですし、一生の思い出だなと思いながら収録させていただいた。時代劇はやってみたかったジャンルのひとつです。いろいろわからないことも多く、毎日、みなさんに教えていただき、学ばせていただきました。またこういう役ができるよう力をつけていきたいです。

I:誰袖の人物像への思いにも触れてくれました。

誰袖は天真爛漫で、まっすぐ突き進んで、笑顔を絶やさず、弱みを見せず生きていました。天真爛漫だけれど、今までたくさん苦労してきたので、賢く、いろいろ考えながら、計算しながら生きているその姿も本当にたくましいなと思いながら演じていましたね。意知さん(演・宮沢氷魚)にアプローチして、でもかえってこなくて、それでもアタックしていく姿がかっこいいなと思いました。責だけは果たしておくんなんし、というセリフもかっこよかったです。意知からの手紙を読むシーンは思い入れがあります。意知さんが身請けしてくれるといっていたけれど、本当にしてくれるのか、会えていなかったし本当に不安だったと思うけど、こんなにも意知さんは誰袖のことを考えてくれていたんだなということが伝わってすごくうれしかったです。

A:福原さんは、誰袖という役をほんとうに愛している様子がうかがえますね。「印象に残っているセリフと場面について」という質問への回答を聞いて、そんなことを思いました。福原さんの回答をどうぞ。

「んふ」というのが、誰袖らしさが全面に出るセリフだなと思っていて。ちょっと小悪魔的だったり、ピュア、無邪気だったりする部分があのセリフだけで出るんですよね。「んふ」の言い方は、こうやってみようかなといろいろ工夫していました。印象に残っている場面は、膝枕のシーン。初めて意知さんの思いがわかって、愛情みたいなものが伝わってきて、すごく幸せなシーンでした。

A:「んふ」というのは、誰袖の天真爛漫なキャラクターを象徴的にあらわす台詞です。この「んふ」を挙げてくれるのは、さすがですね。そして、膝枕のシーンは、第25回になります。

I:そして、福原さんは主人公の横浜流星さんのことについても語ってくれました。

横浜さんは絶対疲れていらっしゃるのに、たくさん話しかけてくださって、私が本当にすごく緊張してがちがちになっていて、いろいろとご迷惑をかけてしまうことも多かったんですけど、緊張をほぐしてくださったり、大丈夫だからと励ましてくださったりして、本当に蔦重と誰袖の関係のように接してくださいました。

I:さすが座長の横浜流星さんですね。

意知(演・宮沢氷魚)との幸せな時間。(C)NHK

●編集者A:書籍編集者。『べらぼう』をより楽しく視聴するためにドラマの内容から時代背景などまで網羅した『初めての大河ドラマ~べらぼう~蔦重栄華乃夢噺 歴史おもしろBOOK』などを編集。同書には、『娼妃地理記』、「辞闘戦新根(ことばたたかいあたらいいのね)」も掲載。「とんだ茶釜」「大木の切り口太いの根」「鯛の味噌吸」のキャラクターも掲載。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好きで、猫の浮世絵や猫神様のお札などを集めている。江戸時代創業の老舗和菓子屋などを巡り歩く。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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