ついに次週、最終回を迎える『麒麟がくる』。前半戦に〈女軍師〉として活躍した帰蝶が光秀に対して、〈信長討つべし〉を示唆する重大な台詞を発した。
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ライターI(以下I):斎藤道三(演・本木雅弘)の娘として生を受け、美濃の隣国尾張の織田信長に嫁いだ帰蝶さん(演・川口春奈)は、その生涯がよくわかっていない人物です。信長の正室という立場なわけですから、もっと記録が残されていてもよさそうなものですが。
編集者A(以下A):本当ですよね。これまで本能寺の変が描かれた大河ドラマでは、本能寺で信長とともに斃れるというシーンが多かったですね。信長との関係は決して悪くなかったのではないかと思います。というのも、長良川の合戦で道三が討ち死にした後、道三の末子を織田家で引き取っていますから。
I:斎藤利治ですね。『麒麟がくる』の劇中では一切登場しませんが、信長配下として小谷城攻めや長嶋一向一揆の戦いなど多くの合戦に従軍しているんですよね。
A:はい。その後、信長が家督を譲った信忠の家臣に「異動」していますから、かなり期待されていたのではないでしょうか。本能寺の変では、信忠とともに討ち死にしたとされています。
I:道三末子を大切にしていた信長が帰蝶さんを蔑ろにするわけがないということですね。その帰蝶さん、第40話で美濃に隠棲するという話をしていたので、もう登場しないかと思っていました。だから今回はうれしい再登場でした。眼の病を京の名医に診てもらうという設定でしたね。
A:京の名医といえば、劇中ではこれまでずっと望月東庵先生(演・堺正章)という設定でしたが、その東庵先生から〈名医の曲直瀬(まなせ)〉〈わしの知り合いの曲直瀬〉というちょっとびっくりな台詞が飛び出しました。曲直瀬といえば、実在の名医曲直瀬道三のことでしょう。東庵先生のモデルともいわれる人物です。当欄では、「東庵先生を実在の曲直瀬道三としてキャスティングしておけばよかったのに」という話を幾度かしてきましたが、まさか東庵先生の口から曲直瀬のことが触れられるとは。
I:びっくりでしたね。
A:はい。でも、隠れた名シーンだなってちょっと思いました(笑)。
【帰蝶を道三に見たてて相談する光秀。次ページに続きます】