●第30作『信長KING OF ZIPANGU』(1992年)のちょっと不思議な濃姫
『信長KING OF ZIPANGU』で菊池桃子(当時24歳)が演じた濃姫は、従来の濃姫像とは少し違っていた。
気弱なようでいて、自分を曲げないところがある濃姫だ。そのため「信長に寄り添う正室」という描き方はされていない。そもそも濃姫がどんな生涯を辿ったかなどはほどんと知られておらず、このドラマでも、史実としてよくわかっていない時期に関しては、信長(演・緒方直人)のもとを離れて堺にいたという設定になっていた。
信長との関係も良好という印象ではなく、信長の側にいたのは、側室のしの(高木美保)だった。本能寺の変の際にも現場に登場することはなかった。
●第45作『功名が辻』(2006年)の濃姫はちょっと現代風?
本能寺の変の際、鉄砲で応戦した信長(舘ひろし)。信長に命じられて、侍女たちを逃した濃姫(演・和久井映見/当時36歳)は信長のもとに戻り、ともに戦うという。
「あの世で会おうとおおせになれども、殿は地獄、わたしは極楽。これでは死に別れにござります」
と笑っていい、庭に降りて、刀で敵と相まみえる。信長が撃たれて蘭丸たちによって室内に運ばれるのを見送った濃姫は、階を上がってくる敵兵たちを斬り倒し、中に入れまいとする。
ふと目を上げると、濃姫を見つめる光秀と目が合う。光秀の目の前で、濃姫に鉄砲の玉が数発、命中。床に崩れ落ちた濃姫を見て、光秀が「帰蝶様!」と叫ぶ。
* * *
A: こうやって振り返ってみると、名台詞が多いですね。やはり本能寺というと力が入るんでしょうね。
I: 新たな信長像、新たな光秀像が描かれる『麒麟がくる』で、どのような本能寺が描かれるのか本当に待ち遠しいです。そのストーリーに帰蝶がどのように絡んで来るのか。一回たりとて見逃せないですね。
●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』も好評発売中。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり