思わずあっ!と声が出た!斬新な今川義元最期の瞬間
A:さて、桶狭間ですが、〈狙うは今川義元ただひとり。目印は塗り輿〉という信長はかっこうよかったですね。そして、義元を討ち取った毛利新介役で今井翼が登場しました。
I:1999年の『元禄繚乱』では赤穂浪士の矢頭右衛門七(えもしち)を演じました。吉良義周役の滝沢秀明との絡みが懐かしいです。
A:滝沢秀明が主人公を演じた2005年の『義経』では、那須与一役で出演しましたね。今回の毛利新介役の演出はめちゃくちゃ面白かったです。あんな討ち取り方は〈桶狭間史上〉、もっとも斬新だったと思います。思わず、「あっ!」と叫んでしまいました。今井翼は、おそらく今回だけの出演だと思われますが、次回は主要キャストとして戻ってきてほしいですね。
I:今回は桶狭間をじっくり描いているので見ごたえがありましたが、そのほかにも元康に悪態をつく今川家臣の鵜殿長照(演・佐藤誓)の小役人ぶりや、今川義元が三河守に任ぜられたと聞いた後の元康の態度とか、さらには乱取りをする今川勢、それに対して怒りを発する義元など、細かい描写も盛りだくさんでした。馬を降り、自ら前線で戦う信長の姿も印象的でした。
A:前線で戦う信長の姿は『信長公記』でも記されていますが、信長軍の兵たちはさぞや鼓舞されただろうなと思います。もうひとつ印象的だったのは、元康配下の三河衆の結束です。床を叩くシーンは胸に迫りました。彼らの多くは三河譜代として江戸時代には大名になると思えば感慨深いです。
I: 勝利を得た信長を光秀が出迎えていました。〈勝ったぞ〉〈おめでとうございます〉〈ほめてくれるか〉……〈帰蝶は何をしてもほめる。あれは母親じゃ〉というやり取りが交わされました。母の愛に恵まれなかった信長の心の声ですね。
А:大高城、鳴海城、鷲津砦、丸根砦、善照寺砦、中島砦などが登場し、「死のうは一定」まで飛び出して、信長の母の愛の欠如が強調される。もしかしたら脚本の池端俊策さんは『信長全史』に目を通してくださったのかと思われる展開でした。
I:いやいや、それは気のせいですよ(笑)。
A:まあ、いずれにしても光秀はまた越前に向けて馬上の人になりました。そのシーンがなんだか〈フィールドオブドリームス〉って感じがしたのは私だけでしょうか。
I:なにはともあれ、次週から『麒麟がくる』はしばらくお休みです。ただ、予告編を見る限り、再開が楽しみでしょうがありません。
A:足利義昭(演・滝藤賢一)、近衛前久(演・本郷奏多)など曲者揃いですからね。前久など〈破天荒〉とまで紹介されていました。いよいよ光秀が信長に仕えるようになりますし。本当に待ち遠しいです。
●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』も好評発売中。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり