
ライターI(以下I):さて、信長(演・小栗旬)の妹お市役で宮崎あおいさんが登場しました。宮崎あおいさんは、2008年の大河ドラマ『篤姫』で主人公の篤姫を演じています。
A:『篤姫』に主演したとき、宮崎あおいさんは22歳。歴代女性主人公の演者の最年少記録でした。薩摩藩から徳川将軍家(第13代将軍家定/演・堺雅人)に嫁ぎ、徳川将軍家の最期を見届けた「歴史的人物」を堂々と演じてくれました。
I:はい。ということで、今週は、歴代大河ドラマの女性主人公の作品、歴代大河ドラマのお市について触れていきたいと思います。
A:大河ドラマ65作の中で、女性が主人公の作品は15作。最初の作品は、1967年の『三姉妹』です。大佛次郎原作の幕末・維新もので、主人公は旗本の三姉妹で、岡田茉莉子さん、藤村志保さん、栗原小巻さん。三姉妹を軸に、幕末から維新の動乱を描くという意欲作でした。ところが『三姉妹』は映像がほとんど残っていない(第19回のみ現存)こともあり、あまり話題にはなりませんが、主役の三姉妹を演じたお三方は、その後も大河ドラマに出演しています。
I:岡田茉莉子さんが1975年の『元禄太平記』で大石内蔵助(演・江守徹)の妻りくを演じました。藤村志保さんは、すでに『太閤記』(1965年)でねね役で登場していましたが、『天と地と』(1969年)で藤紫役、『黄金の日日』(1978年)では淀君を演じました。
A:藤村志保さんで印象に残っているのが『太平記』(1991年)で演じた足利尊氏の生母上杉清子役です。観応の擾乱で尊氏・直義兄弟の争いに苦悩する姿がいまも記憶に刻まれています。『八代将軍吉宗』では、吉宗の父徳川光貞の正室の天真院を、『風林火山』(2007年)では今川義元の生母寿桂尼を演じました。栗原小巻さんも『樅ノ木は残った』『新平家物語』などに出演、『黄金の日日』では主要キャストの「美緒」役を演じました。2017年の『おんな城主 直虎』で家康生母の於大役を演じて、健在ぶりをアピールしました。
2度主演を務めた三田佳子さん
I:1979年の『草燃える』では、岩下志麻さんが主役の北条政子を演じています。
A:私は『草燃える』が通しで視聴した初めての大河ドラマだったので、後年、岩下志麻さんにインタビューする機会があった際は、感慨深い思いがしたものです。岩下さんは北条政子以降も、1987年の『独眼竜政宗』では伊達政宗の生母お東の方を、2000年の『葵〜徳川三代〜』では浅井三姉妹の三女「お江与」を演じました。芯の太い、強き女性だったという印象で、がっちりと骨太に脇を固めてくれました。
I:『草燃える』から2年後の1981年には橋田寿賀子さん脚本の『おんな太閤記』が話題を集めました。主演のねね役は佐久間良子さん。秀吉役の西田敏行さんの「おかか」という呼び方が流行語になったそうですね。
A:佐久間良子さんは1972年の『新平家物語』の建礼門院徳子役で大河ドラマデビューを果たしていましたが、『おんな太閤記』以降も『春日局』(1989年)に主人公おふく(後の春日局/演・大原麗子)の生母安役で、『功名が辻』(2006年)では山内一豊の生母法秀尼役でがっちりと脇を固めてくれました。
I:さて、大河ドラマで主役を演じた女性演者ですが、1985年の近現代史大河2作目『春の波濤』で川上貞奴を演じた松坂慶子さんは、草笛光子さんに次ぐ大河ドラマ出演回数の多い女性演者になります。
A:私は総集編でしか見たことがありませんが『国盗り物語』(1973年)の濃姫役を絶賛する人は多いです。後に定番になる「信長に膝枕をする濃姫(帰蝶)」を最初に演じたのも松坂慶子さんです。さらに、『元禄太平記』(1975年)では、浅野内匠頭の正室瑤泉院を、『草燃える』(1979年)では、北条義時の恋人役を2役(茜と小夜菊)演じました。その後も『毛利元就』(1997年)で元就の養母杉の方、『義経』(2005年)で平時子(二位尼)役、『篤姫』(2008年)で幾島(篤姫付きの年寄)役、『花燃ゆ』(2015年)で毛利都美子(毛利敬親の正室)役、『西郷どん』(2018年)で西郷満佐(西郷隆盛生母)役と、作品をがしっと締める役どころを担ってきました。
I:これだけ大河ドラマに登場していながら『国盗り物語』の濃姫役以降、戦国三英傑ものへの出演がなかったんですね。『豊臣兄弟!』にも登場してくれないかなと思ってしまいました。
A:さて、女性演者で2度主演を演じたのが三田佳子さんです。近現代大河の3作目『いのち』で女性医師の高原未希を演じました。舞台は津軽なのですが、このとき観光用に開発されたカスタードケーキ「いのち」は40年後のいまも販売されているロングセラー。大河ドラマファンへのおもたせとしては鉄板商品ですね。
I:三田佳子さんの2度目の主演作は『花の乱』(1994年)の日野富子役です。足利義政(演・十二代目市川團十郎)の正室として有名な女性です。
A:この作品で特筆すべきは、若いころの義政と富子を演じていたのが七代目市川新之助さん(当時/現・十三代目市川團十郎)と松たか子さんということ。この若夫婦の可憐さといったら衝撃的で、今となったら「お宝映像」といってもいいかもしれません。
大河、朝ドラ、紅白司会を務めたふたり
I:そして三田佳子さんは、1989年、1990年に2度にわたって紅白歌合戦の紅組司会も務めています。大河ドラマの主役を演じた女性演者が、紅白歌合戦の司会を務めたり、朝の連続テレビ小説(以下・朝ドラ)の主役を務めたりするのは、三田さんの紅白司会を嚆矢とします。
A:2002年の『利家とまつ』で主役のまつを演じた松嶋菜々子さんは、1996年の朝ドラ『ひまわり』に主演、弁護士を目指す女性を演じていました。朝ドラ主演と大河ドラマ主演を果たした初めての女性演者となりました。2023年の『どうする家康』では家康生母の於大の方役で久しぶりに大河ドラマに出演されましたね。
I:2006年の『功名が辻』で山内一豊(演・上川隆也)の妻千代を演じた仲間由紀恵さんは3度目の大河ドラマ出演で主役を演じることになりました。2005年から2009年にかけて4度紅白歌合戦の司会を務めましたが、以降、大河ドラマ出演がないのはさびしい限りです。
幕末大河で最高視聴率の『篤姫』
A:2008年に『篤姫』で主役を演じた宮崎あおいさんは、すでに2006年の朝ドラ『純情きらり』で主役のジャズピアニストを目指す女性を演じていました。『篤姫』は、視聴率を獲得しづらい幕末ものの中で、平均視聴率が最高の24.5%という金字塔を達成しています。
I:大河ドラマと朝ドラで主役を演じたふたりめの女性演者になるのですね。
A:そして、2011年、50作目の大河ドラマ『江 姫たちの戦国』で主役の江を演じたのが上野樹里さんです。上野さんにとって初めての大河ドラマでの主演となりました。叔父の織田信長(演・豊川悦司)とのやり取り、特に、本能寺の変の際に、自害しようとする信長の前に、お江の幻影が登場した場面などは話題になりました。
I:2013年の『八重の桜』で主役の新島八重を演じたのが綾瀬はるかさん。同年から2025年までの間に四たび紅白歌合戦の司会を務めています。直近の2025年の紅白では今田美桜さん、有吉弘行さんとともに司会を務めたばかりです。
A:綾瀬はるかさんで特筆されるのは、会津若松市で開催される「会津まつり」恒例の「会津藩公行列」に『八重の桜』放映翌年の2014年からコロナ禍で中止、縮小開催だった2020年、2021年を除いて毎年参加していることです。自らが演じた新島八重ゆかりの会津若松市とのご縁を大切に育む取り組みに感動ですね。
I:綾瀬さんは昨年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』では九郎助稲荷を演じています。2015年に長州藩で松下村塾を開いていた吉田松陰の妹文役で主役を演じた井上真央さんは、2011年の朝ドラ『おひさま』で主役の須藤陽子を演じ、さらに同じ2011年には紅白の司会を務めていたため、史上初めて、大河ドラマ、朝ドラ、紅白司会という「NHK三大番組」を制覇するという偉業を成し遂げました。
A:2017年の『おんな城主 直虎』で主役を演じたのは柴咲コウさん。史料も少ない人物ということで、なかなかに難しい役どころでしたが、見事に一年間演じ切りました。
I:2024年の『光る君へ』で主役の紫式部(まひろ)を演じたのが吉高由里子さんです。2014年の朝ドラ『花子とアン』で主人公の花子を演じ、同年の紅白で司会を務めたことで、井上真央さん以来、ふたりめとなる、大河ドラマ主演、朝ドラ主演、紅白司会という偉業を成し遂げたことになります。
A:キリっとした演技が今も印象に残っています。大河ドラマはそれ以来ですかね。1981年の『おんな太閤記』以降の大河ドラマでお市役を演じた主な演者を挙げてみましょう。
『おんな太閤記』(1981年) 夏目雅子
『徳川家康』(1983年) 真野あずさ
『信長 KING OF ZIPANGU』(1992年) 鷲尾いさ子
『秀吉』(1996年) 頼近美津子
『功名が辻』(2006年) 大地真央
『江 姫たちの戦国』(2011年) 鈴木保奈美
『軍師官兵衛』(2014年) 内田恭子
『どうする家康』(2023) 北川景子
その時々で旬な演者がキャスティングされ、テレビ局のアナウンサー出身の方も複数登場しています。
A:信長の妹ということで、錚々たる方々が演じているのですね。今年は、宮崎あおいさんが新たなお市を見せてくれそうです。
※宮崎あおいの「崎」は正しくは「たつさき」。
●編集者A:書籍編集者。かつて編集した『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり











