M3にない楽しさを求め、実用車にジムニーとスマートを購入
M3の納車から9年が経過した頃、哲浩さんはインターネットブログで知り合った友人から、「所有するM3を譲ってもいい」との話を持ちかけられます。これまで所有していたM3に乗り続けるため、随所にあった不具合を直し、足回りも調整したばかりだったのですが……。持ちかけられたM3の程度の良さと特別な仕様に惹かれ、乗り替えを決めます。
新しい『M3』は、有名チューニングショップの開発車両という経緯を持っていました。特別なチューニングこそ施されていないものの、エンジンは完璧なオーバーホールとバランス取りが施され、どこまでも吹き上がる気持ちよさを持っていました。
「このモデルの『M3』は、前期エンジンの方が良く回り、後期エンジンの方がパワーがあるといわれています。この『M3』は前期と後期のいいとこ取りをしたような、欲張りなエンジンに仕上がっています。これ以上、手をくわえるところなんてありません。このままグッドコンディションを維持するのが私の役目ですね」
『M3』を普段使いで消耗したくないと感じた哲浩さんは、実用車にスズキの2代目『ジムニー(JA22W型)』を購入します。
「ジムニーを選んだ理由は、我が家の敷地の問題が大きいです。駐車スペースがちょっと特殊な立地にあって、ジムニーか『スマート』くらいしか駐車できないんです」
「場所も天候も選ばずに走るジムニーは、実用車として最高のクルマでした。けれど製造から20年を迎え、さすがに色々と手がかかるようになってきたので、以前から所有してみたかったスマートに乗り替えました」
スマートの購入後、消耗品が交換時期を過ぎていることを感じた哲浩さんは早速、部品を手配します。自力で交換できる場所は交換したものの、最終的にスマートがもう2台、買えるくらいの額がかかっていました。
「スマートはクセというか個性が強く、好きになるか嫌いになるか、どちらかになるクルマだと思います。私の場合は好きになったり、嫌いになったりといった感じでしょうか。操作も思い入れも忙しいクルマでした」
好意と不満を抱きつつも、不思議な魅力を持ったスマートとの日々を楽しんだ哲浩さん。製造から13年目を迎えることもあり、乗り替えを決めます。次の実用車には3代目ジムニー(JB23W型)を選び、現在、納車待ちの状態にあります。
「クルマとの関係は……相棒であり、遊び仲間であり、道具であり、玩具でもある。一言で表すのは難しいですね。でもクルマが好きな人には、この表現と気持ちが伝わるんじゃないでしょうか」
その時、求める楽しさにより、『M3』と実用車を使い分ける哲浩さん。今日も相棒と気持ちを通わせながら、ハンドルを握ります。
取材・文/糸井賢一(いといけんいち)
ゲーム雑誌の編集者からライターに転向し、自動車やゴルフ、自然科学等、多岐に渡るジャンルで活動する。またティーン向けノベルや児童書の執筆も手がける。