■タンパク質の源は肉のみにあらず
タンパク質といえばお肉、と考えがちですが、それだけではありません。肉さえ食べればよいというのではなく、他の栄養素とのバランスを考えながら、バランスよく上手に摂取しなければなりません。
【魚・鶏肉】
米国の心臓病学会は、タンパク源としてナッツや鶏肉、魚を推奨しています。牛肉や豚肉、皮付き鶏肉、ひき肉はタンパク質も含みますが、同時にたくさんの飽和脂肪酸(不健康な脂質)(詳細は脂肪の摂り方)を含むため、飽和脂肪酸の摂取は1日100kcal程度にした方が良いと推奨しています。
これは牛肩ロース100g、豚ロース肉180gに相当し、牛肉や豚肉ではすぐに推奨量をオーバーしてしまいますが、鶏胸肉なら4.3kg、マグロなら5.3kgに相当します。さらにこれらは低炭水化物食品(ほぼ0g)としても知られており、推奨される理由がわかります。
【ナッツ類】
ナッツは小粒の中に多くのカロリーを蓄え、脂肪分も多く、ダイエットしている人にとっては避けた方が良いと思われがちです。しかしナッツはタンパク質と良質な脂質(詳細は脂肪の摂り方)と食物繊維を多く含んでおり、体重増加を起こさず、体重減少に寄与することが知られています(Mozaffarian D, N Engl J Med. 2011)。
また定期的にナッツを食べている人は心臓病になりにくいという結果も出ています(Mente A, Arch Intern Med. 2009)
【ヨーグルト】
乳製品は身近なタンパク源ではありますが、注意が必要です。乳製品やカルシウムの摂取は体重減少に関与しない、または体重増加したという報告があります(Snijder MB, Obesity 2008)。しかし一方で、ヨーグルトの摂取は体重減少に関与したといいます。これは効果的な腸内細菌が体重減少に関与したためと考えられています(Mozaffarian D, N Engl J Med. 2011)
■高タンパク食で気をつけるべきこと
吸収されたタンパク質の処理は腎臓と肝臓で行われるため、肝機能や腎機能に問題がある場合は高タンパク食は推奨されません。もちろん問題のない人であっても、高タンパク食をされる場合は定期的な血液検査をお勧めします。
また、タンパク質の処理には上限があります。通常の推奨量は0.8g/kgですが、2g/kgのタンパク質摂取までは長期的にも安全であると報告されています(Cuenca-Sánchez M, Adv Nutr. 2015)
例えば、体重が60kgの方であれば1日120gまで、つまり480カロリーまでタンパク質から摂取していいことになります。これを超えたタンパク質は体内で脂肪に変換され蓄積されるので注意が必要です。
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以上、今回は「タンパク質」の役割と、その効果的な摂り方についてご紹介しました。高タンパク食が体重減少や心臓病や糖尿病といった病気の予防に役立つ一方、注意すべき点があることもお伝えしました。
「タンパク質=肉」と短絡的に考えたり、間違った知識で高タンパク食を実践しても、期待する効果は得られないことに注意してください。その上で、ぜひ他の栄養素とのバランスを考慮した、健康的なタンパク質の摂取を実践してくださいね。
文/中村康宏
関西医科大学卒業。虎の門病院で勤務後New York University、St. John’s Universityへ留学。同公衆衛生修士課程(MPH:予防医学専攻)にて修学。同時にNORC New Yorkにて家庭医療、St. John’s Universityにて予防医学研究に従事。