文/中村康宏

「炭水化物抜きダイエット」や「高タンパク質ダイエット」が体重コントロールに効果ありと言われています。しかし、近年の医学研究により、体重増加を防いだり、生活習慣病関連疾患を予防するには、炭水化物の量より「質」がより重要であると判明しています[1]。

そこで今回は、気になる「炭水化物」と健康の関係について、最前線の研究をもとにご紹介しましょう。

全麦パンと食パンとでは、同じ炭水化物でもまったく別物です。

 

炭水化物と糖質は別物!?

炭水化物は、糖質(でんぷんや糖類・甘味料・アルコールなど)と食物繊維に分類されます。この違いは、人間の体で分解できる「グルコース」を元に作られる(=糖質)か、分解されない「セルロース」を元に作られる(=食物繊維)かによります。

かつては、難消化性の食物繊維は人体に不要と考えられていましたが、近年の研究により、繊維質はヒトの健康維持に重要な役割を果たすことが明らかになってきました。

その役割としては、

(1)便通や腸内環境の改善
(2)発がん物質等の吸着・排出作用
(3)糖の消化吸収を緩慢にして血糖値の急な上昇を抑える糖尿病予防効果
(4)胆汁酸の再吸収を抑えてコレステロールの産生を減らす脂質異常症の抑制効
(5)水分を吸収してゼリー状になり,胃腸粘膜の保護や空腹感の抑制作用

などが挙げられます[2]。このように、食物繊維を取るかどうかが、将来病気になる可能性を大きく左右すると言っても過言ではないのです。

しかし食物繊維の摂取目標量は, 18歳以上では男性20g/日以上,女性18g/日以上とされているものの、第二次世界大戦以降、穀類・芋類・野菜類・豆類の摂取減少の影響を受けて年々減り続け、目標量を満たさない状況が続いています[3]。

「炭水化物で太る」のメカニズム

ではなぜ「炭水化物抜きダイエット」が流行しているのでしょうか? その謎を紐解くには、インスリンの働きを知る必要があります。

例えば、健康な人のインスリンが働くメカニズムは次のようになります。

(1)食事をすると、食べ物に含まれる糖質がブドウ糖として血液中に取り込まれ、血糖値が上昇する。
(2)血糖を下げるために、すい臓からインスリンが分泌される。
(3)インスリンの作用により、ブドウ糖は肝臓や筋肉、脂肪組織などの細胞に取り込まれるため、食事前の値まで血糖値が下がる。

しかし、健康な人であっても、血糖値が急に上昇すると、それを抑えるためにインスリンが過剰に分泌されてしまいます。すると、インスリンは脂肪合成を高め、脂肪分解を抑制する力をもっているため、組織で脂肪が蓄積されてしまうのです。

つまり、摂取する食べ物が、血糖値の上昇が緩やかな食事(低GI値食品)か、急上昇する食事(高GI値食品)か、が重要なカギとなるのです。

低GI値食品(オレンジ)は高GI値食品(赤)と比べ血糖値の上昇が緩やかであることがわかる。この違いが肥満や糖尿病などの病気に関与していると考えられている。

 

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