父親、兄、同級生。さまざまな理由から、男性全般が嫌いになっていった
中学生に入った時には、お兄さんとの関係は冷戦状態に。さらに、男性全般を嫌いになる原因のようなことが中学生の頃に起こったと言います。
「元々兄のような野蛮な男の人は苦手でした。兄は中学からバスケ部に所属して、毎日遅く帰って来るようになったから接点が全然なくなったんですけど、さまざまなものがとにかく臭かった。お風呂も浴槽の中で体を洗っているのかって思っちゃうほど兄の後だと湯が汚いんです。父はそんなことがなかったから、余計に兄が不潔に見えていましたね。
それに、中学の頃からクラスメイトの男子にいじられるようになってしまって。たまたま隣の席になった男の子がクラスで率先して笑いをとったりするタイプの子で、その子のネタにされ続けたんです。最初にそのノリにこたえていっていたら、どんどんエスカレートしてきて……。いじめじゃないから何かを隠されたりとかはしないんですが、ドリンクを飲んでいる時に笑かされて、その飲み物を吹き出すまで何かをされたり、テストの点をみんなの前で発表されられたり……。兄や同級生とそんなことがあって、学生時代はもちろん、大人になってからもしばらくは誰かを好きになることはありませんでした」
高校卒業後は実家から通える短大へ進学。その頃から祖父の体調が悪くなり、入退院を繰り返すように。祖母を一人ぼっちにしたくなかった思いから、祖父母の家で過ごすことが多くなります。
「母親は主に入院している祖父の世話をしていたので、私は家で祖母の家の用事を手伝っていました。祖母は足が少し悪くて、1人で入院先に行くことができなかったので、祖父の病院には週に2回くらいのペースで私が実家の車で送り迎えをしていました。
実は、祖父が初めて入院した時、私は車の免許がなかったんです。30万ほどかかる自動車学校のお金もなかった。学生ローンを組んででも学校に通おうとしていた時、お金をくれたのは母親でした。母親が自分で働いたお金で出してくれました。それに『助けようとしてくれて、ありがとう』と言ってもらえて。私は祖父母のことが大好きだったから、母親は恩に感じることなんてないのに。その頃には母親も仕事を辞めて、祖父母の世話をメインに生活をしていました。でも、父は休みの日もなにもしない、大学生になっていた兄も週末は遊びに行く始末。男の人って本当に役に立たないと心の底から思っていました。父は自分の両親なのに……。不信感しかありませんでした」
祖父母の世話をメインに毎日を過ごす母親。父親への不信感から家族の会話がなくなっていきますが、祖父母に懐いていためぐみさんにはどうしても言いたくないことが両親にはありました。
【~その2~に続きます。】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。