取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「母から真実を聞いて、若い頃の私は本当に何も見えていなかったんだなって思いました」と語るのは、めぐみさん(仮名・35歳)。彼女は現在、大阪の市外にある特別養護老人ホームで働いています。お話を聞いている間ずっと笑顔を絶やさず、声が少し低くゆっくりと話す姿から、落ち着いた印象を受けました。
兄妹ゲンカを慰めてくれた優しい祖父母。泣かされた後はいつも甘いお菓子を持って出迎えてくれた
めぐみさんは大阪府の郊外出身で、両親と2歳上に兄のいる4人家族。父方の祖父母の家は隣にあり、よく6人で過ごすことが多かったと言います。
「両親は高校の同級生で、2人とも地元の人。今の実家は私が生まれる前に建てたみたいなんですが、祖父が自分の家の隣の土地を買って両親にプレゼントしてくれたと聞きました。父親は一人っ子で、孫も私たちだけ。祖父母は最初から最後までずっと優しくて、何かあると祖父母の家に入り浸っていました」
祖父母の家に入り浸っていた理由として、お兄さんと2人きりになりたくなかったからだとめぐみさんは語ります。
「母親は正社員やパートなど、さまざまな仕事を転々としながらも常に働いていたから、学校から帰ると兄と2人きりになるんです。小学校の時は兄と顔を合わせると毎日ケンカをしていました。何でケンカをしていたのかはそこまで覚えていないんですが、流血するぐらい叩き合ったりもしましたよ。まぁほとんどケガをさせられるのは私でしたね。兄妹ゲンカって、両親がいれば止められて終わるんでしょうけど、2人きりだからどちらかが泣くまで続けてしまう。悔しいから絶対に兄の前で泣きたくなくて、泣きそうになったら祖父母の家に逃げていました。祖母は兄にも優しいから、兄に注意などはしなかったけど、いつも甘いお菓子が用意されていて。いつしか実家に戻らずに、学校から直接祖父母の家に行くようになっていましたね」
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