取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「10年離れた後にもう一度家族で暮らすようになり、両親との距離感が掴めなくなっていました。私だけでなく、両親もそうだったんじゃないかな」と語るのは、華弥子さん(仮名・38歳)。彼女は現在、大阪市内で5歳の子供を育てながら、時短勤務を行う兼業主婦です。少し早口ながらハキハキと話す姿は好印象を与え、手足の長いスラッとした容姿は年齢よりも若く見えます。
2度の流産を経て生まれた弟。母親は弟にベッタリだった
華弥子さんは大阪府出身で、両親と8歳下に弟のいる4人家族。両親ともにフルタイムで働いており、小さい頃の面倒を見てくれたのは近所に住む母方の祖母だったと言います。
「父と母は別の会社でしたが、朝からスーツをビシッと着て、一緒に出かけていく姿を覚えているんです。それが夏休みだったのか、日常だったのかは思い出せないんですが、朝から家には祖母がいて、朝ごはんの準備をしてくれていたことが薄っすらと記憶に残っています」
華弥子さんと弟は8歳違い。ある理由があり、母親は弟を溺愛していたそう。
「実は私と弟の間に母親は2度妊娠したらしいのですが、どちらも流産してしまったと聞いています。弟が生まれるまで母は気持ちの浮き沈みが激しく、体調も崩したこともあったと祖母が言っていました。
そんなこともあって、母親が最も優先するのはいつも弟。弟のほうも母がずっと働きに出ていて寂しかったのか、家で一緒にいる時は常にベタベタしていましたね。私はそんな姿にヤキモチを焼いていたわけでもなく、それが日常といった感じで慣れていました。父親も仕事人間で小さい頃はそこまで一緒にいてくれなくて、私はずっと祖母と一緒にいてもらっていました。祖母は厳しいところもあったけど、私のことを常に気にしてくれていましたから」
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