取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)
今回お話を伺ったのは、大阪府内で旦那さまと二人暮らしをしている智子さん(仮名・42歳)。大阪府生まれで両親と2歳下に妹のいる4人家族。家族と一緒にいることで自分のことをどんどん嫌いになるような学生時代だったと当時を振り返ります。
「母親は褒めてくれることもあったけど、『これがあんたの限界でしょう』と余計な一言を付け加えるような人で、それでも褒めてほしいと頑張ると『諦めが悪い』とけなされていました。そんな私に無関心な父親、同じように言われていたはずなのに両親とうまくいっている妹。家族の中で私だけ孤立している感じがずっとしていて、気づいたら全員嫌いだった。そして、そんな気持ちを持つ自分のことも大嫌いでした」
大人になっても取り繕っていた“いい家族”の外面
就職で家を出た智子さんは職場で出会った男性と26歳のときに結婚。家族への挨拶、結婚式も普通に行ったとのこと。旦那さまには親への気持ちなどを一切伝えてなかったこともあり、結婚の挨拶中にも行われた智子さんをけなす行為にも笑顔で返していたと言います。
「『小さい頃から陰気な子で結婚なんてできると思わなかったから良かった』と母親は初っ端に言いました。そこで同僚だった夫に母は私の仕事のことなどを想像でけなしてきて、それを夫が否定するというターンが何度かありました。私はイライラを抑えて笑顔でいるのに必死で、何があったのかはあんまり覚えていません。夫も緊張していたみたいで内容のことはあんまり覚えていなかったようです。後で聞いた話なんですけど、『仲の良い親子という感じだった』という印象だったみたい。演じきれていたんだなって思いました」
旦那さまは智子さんの5歳上。結婚してすぐに子どもについて話し合ったそうですが、まだ2人でいたいという言葉で先送りにし続けたそう。しかしちゃんと向き合ったときには子どもは欲しくないという心境に至り、その思いを旦那さまは受け入れてくれます。
「夫婦というものにはそんなに悪いイメージはなかったんですけど、親子というのを考えると気持ちが重くなるんです。私に似たらバカな子が生まれてしまうとか、子どもも私と同じように母親の私のことを嫌いになるんだろうなって。しばらく考えてはしんどくなってやめてしまうということを繰り返して、子どもが本当に欲しいのかわからなくなりました。
夫にはその思いを正直に伝えて、一緒に親のことが嫌いだって言いました。そしたら『2人で仲良く生きていこう』って。初めて誰かから受け入れてもらえた気がしました」
【過去のわだかまりを「くだらない」と言った。次ページに続きます】